●四国というのは死国に通じる。八十八カ所の巡礼というのは、ある意味ではすでにこの世ならぬ領域を巡る、これから来るほんとうの死を迎えるための準備だとも言える。かつては巡礼たちは無料で宿を得、食を得て生涯にわたって巡り続けたという。 徳島、愛媛、高知、香川はそれぞれ発心、修行、菩提、涅槃の道場であるといわれている。古川さんの場合は、発心から菩提を得たところで、その円環からはずれて飛び出してしまった。ハンマー投げのハンマーのように。その遠心力はなんだったのだろう。その情念の大きさに、畏怖の念をさえ感じてしまう。 |
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