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第3便 ベトナム編
第2章 ムイ・ネー

第3話 砂漠の恐怖

ムイ・ネーの漁港。砂浜に小さな船が多数停泊している。
 今日はいつもより遅く8:30に起きた。。。と思ったら、実は寝ている間に腕時計を操作していたらしく、この8:30というのはあくまで日本時間。つまり、またいつものように6:30に目が覚めたわけだ。今朝から結構出費が嵩んだ。泊まっている宿で朝食をとろうとしたらメニューはあるのだが、どれも材料がないから他で食べてくれという。確かに今は私以外2組の旅行者しか宿泊していないようだったが、それはないだろうという感じだ。(ちなみに昨日思っていたこの宿のHong Diという名前はどうやら間違いらしく、正しくはXuan Uyenという宿らしい)しかたがないので、隣接するIndochina Dreamという見かけは私が泊まっている宿よりワンランク以上高い感じの宿の食堂で朝食をとることにした。これがPhoなのに15,000ドン、Pepsiが10,000ドンでさらに3,000ドンのサービスチャージまでとる。今まで行った食堂などでは決して目にすることのなかった丁寧に印刷されたレシートまで受け取ったのだが、本当に朝から入らぬ出費だと思った。

まるで砂漠のようなSand Dune。足に砂が絡まり、なかなか前へ進めない。
 昨晩のファン・ティエットからのバイクがあまりにも楽しかったので、今日はレンタルバイクをすることにした。宿泊している宿で$5で借りて、ムイ・ネー村にあるという砂丘、Sand Duneへ向かった。ガソリンがFullではなかったのはちょっと気になったが。ムイ・ネー村はカンボジアのシェム・リアップなんかより全然田舎だ。こういうところに来ると、今まで行った中で一番田舎町だと思われるシェム/リアップでさえ、ぜんぜん都会なんだなと思う。(むしろシェム・リアップは観光地化で急速に発展しているのだろうが)何度か道を間違えつつ、なんとかSand Duneへ到着した。バイクで15分くらいだろうか。柔らかい砂の傾斜を段ボールに座って滑り降りる、旅行者向けの砂滑り(?)の商売をしている子供たちにつきまとわれながら、私は本当に砂漠のような小高い丘を登った。この登りが非常にきつい。それほど高い丘とは思えないのだが、砂で滑って思うように前へ進めない。そんな中やっとのことで頂上へ登ってみて驚いた。ここはまさに砂漠だ。さっきのような調子だと、すぐ目の前にある小高い山の頂上まで歩いて行くのに30分はかかるだろう。これがもし本当にサハラ砂漠とかだったら・・・、私はその非現実に少々恐怖心を覚えた。

名もない集落の子供。カメラを向けると笑顔をくれた。
 丘の上で写真を2、3枚撮った。すると、なんと電池切れだ。なんということだ。同じ型の電池を使用しているストロボは宿に置いてきてしまっている。なすすべ無く、一旦宿へ戻った。ストロボの電池をカメラへ入れ替えて準備万端、再度ムイ・ネー村へ向かった。先ほどの子供たちにまたまとわりつかれるのも面倒なので、その先にあるというWhite Sand Duneへ直接向かった。ところが、工事中の道路を抜けて行くと、いつの間にかちょっとした集落のようなところへ迷い込んでしまった。要するに迷子だ。と、まあ異国の一人旅で見知らぬ地で迷子になると普通は相当パニックになるのだろうが、この場所がまた雰囲気が良い。私はついついバイクを近くに停めて、カメラを持ってこの集落の子供たちの写真を撮った。不思議とこの集落には今は大人たちがいないようだ。先ほどの道路工事に出ているのかもしれない。結局White Sand Duneは見つけられなかったのだが、この集落のおかげで大満足だ。

ミニチュア版グランド・キャニオンのような地形。なぜこんな地形ができたのか。
 その後、私はSand Dune方面へ引き返し、食堂が並ぶ要は観光エリアよりも少し手前でバイクを停め、一人で砂漠エリアへと入って行った。遠くに見える観光エリアには多くの旅行者がいた。私は写真に観光客を入れたくない質なので、ちょうどよかった。思う存分砂漠の写真を撮った後、バイクの停めてある場所に戻る途中、ちょっとした木陰から奥を覗き込んだ。すると、そこにはミニチュア版グランド・キャニオンのような地形が広がっていたのだ。「歩き方」に載っているBeef Hillとは少々異なるようだ。すぐさまそっちの方へ降りて行く。観光客は一人もいない。私の足跡以外に、ジープが通った跡が一本あるだけだ。私は2000年に友人たちとの卒業旅行でグランド・キャニオンへ行っているが、それをそのまま小さくしたような地形だ。これがガイドブックに載っているキャニオンか?結局結論が出ないまま数枚の写真を撮ってその場を後にした。その後漁港の方へ向かったが、道が分からず港まではたどり着かなかった。宿へ引き返すと、バイクのガソリンがほとんどEmptyに近づいていた。朝からいろいろ廻って少々疲れたので、ビーチでスティーヴン・キングの『ゴールデン・ボーイ』を読みながら日光浴をすることにした。太陽はちょうど真上にあった。

つづく

2006/06/11(Sun)掲載