ノスリButeo japonicus,オオノスリB. hemilasius
ニシオオノスリB. rufinus 形態による識別(1/3)

 ユーラシアノスリB. buteoの亜種vulpinusは中央アジアで繁殖し冬季南から南東アジアへ移動しますので日本にも飛来している可能性があります.実際,秋の渡りのシーズンに 冷水岳で朝鮮半島の方から入ってくるノスリを散見します.ノスリjaponicusはユーラシアノスリbuteoとよく似ていて完全な識別方法は確立されていないとされています(5). また種ノスリの亜種の識別方法も不明ですので,ここでは干拓地で観察した個体はすべてノスリB. j. japonicusとして記述します.ニシオオノスリB. rufinusは鳥類目録に記載されていませんが複数個体観察していますので分析に入れています.
 多くの野鳥ガイドブックにオオノスリは大きく,翼,尾が長く,広くワシに似た形態をしていると書かれています.ノスリ属の中で全長,翼長,尾の長さは一番長い値です(表1). ノスリともよく似ていて屋外で離れてみると識別が難しい野鳥です.文献3にはノスリの暗色型とオオノスリは大きさと形態の違いでしか識別できないと記述されています.以下形態から違いを分析します
 下面
 写真A,Bはノスリ(A),オオノスリ(B)です.翼長を同じにして表示しています.ノスリは翼を水平にして滑空しますが,オオノスリはV型です. 従ってオオノスリの翼長は写真で計測した値よりも長くなります.写真a,Bは同じ個体を同じ縮尺率で表示しています.

翼長を同じにした時の形態の違い

縮尺を同じにした時の形態の違い

 A,Bではノスリとオオノスリの形態の違いはよくわかります.a,Bでは大きさの違いはよくわかりますが,形態の違いは目立ちません.
 人の物体に対する感覚は状況によって変化しますので定量化して比較しないと判断を間違います.上の2枚の写真はその例です. 写真A,Bからノスリは全長に対して翼長があまり長くなく,オオノスリは長いことがわかります.具体的な計測値を表5に示します.
 表5からオオノスリはノスリに比べて全長が翼長に対して5%短く,尾,翼幅,頭部の全長に対しする両種の比率の差はは2%以内です.
 一般に人は二つの物体を並べて同時に比べると5%以上の差があれば違いがわかりますが,それ以下だと違いは分からない人がほとんどです. 従って,下面を単独で見たときノスリ,オオノスリの識別はできないでしょう.鮮明な写真を撮って計測する以外方法はなさそうです.

表5.ノスリ,オオノスリの形態
全長は翼長を100としたときの%
T,W,Hは全長を100としたときの%
和名全長  T    W    H  
Buteo japonicusノスリ44384615
B. hemilasiusオオノスリ39404416

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目次, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 参考文献
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