カプリ 2日目

翌日は天気が冴えなかった。 青の洞窟を訪れるには適当でない。 まず、ホテルで最終2日間のナポリのホテルを取ることにする。 特に最後の晩がオペラとなるのでサン・カルロ歌劇場からも近い方が良い。 ジョリ・ホテル・アンバサドールが近いが、ちょっと高い。 ボヴィオ広場の近くのエグゼクティヴ・ホテルが18万くらいだったが、18部屋しかない小さなホテルのようだ。 電話をかけると部屋は取れた。 FAXでコンファームしてくれということなので、ブルネラのレセプションに頼んで送ってもらった。

曇天の今日は、町を離れて島を見て回ることにした。 ティベリオ山に登り、ヴィラ・ジョヴィスというローマ皇帝ティベリウスの別荘を訪れる。 軽い上り坂も運動不足の身には辛かったが、半時間ほどでヴィラに到着。 空からは雲がたれ込めるが、海を隔ててソレント半島がすぐ近くに見える。 去年の夏は、あの半島の先端のあたりからこちら側を眺めていたのだった。 ヴィラ・ジョビスを散策していると、ドイツ人やアメリカ人の団体もやってきてかなり混み合ってきた。 山を下りる頃からすこし雨が降り始めては止み、一層不安定な天気となった。 食後にフニコラーレの頂上駅からアナカプリの方を臨むと、霧がすっぽりと山を覆い驟雨を浴びることになった。 

暫くカフェで休み、これからの行程を考えた。 部屋を予約してあるのは今晩までだ。 明日に天気が回復し青の洞窟を観ることが出来ても、午後島を出るのではずいぶんせわしない。 これまでの旅は、一週間の休暇でも次から次へと移動するばかりの日本人の典型的な旅行だったので、今回はもう少しゆっくりしたいという連れ合いの希望も入れて、島で連泊することにした。 今のホテルでも延長は可能だと思ったが、値段が高い。 かといってバリバリのツーリスト・クラスまで落としてしまうと、何のためにここまで来たのかということになる。 ミシュランを取り出し検討を重ねる。 いや見当をつける。 まず、ルーム・チャージは20万リラ以下。 ブルネラは35万だ。 レストランは無くて良い。 眺めがよい(これはミシュランでは評価ポイントとして明記されている)。 アナカプリではなくカプリの町の方がいい。 となると、候補は絞られてきた。 ヴィラ・クルップ、そのイタリアらしく無い名前が気がかりだったが、とにかく現地へ行ってみることにする。 島では最高級のホテル・クィジサーナの横道を入り、アウグスト公園の方へとクルップ通りを辿る。 公園の手前に Villa Kruppと書かれた板があり、道をそれて上に上る道が続いていた。 登り切ったところにヴィラ・クルップが現れた。 飛び込みで明日の晩の部屋をお願いすると、空きがあった。 安心してブルネラの方へ戻る。 クルップ通りもトラガラ通りも人が通れるだけの遊歩道のような道で、大きな荷物がある場合は荷物運び機を利用することになる。

部屋に戻ると、また雨が降り出す。 夕食の前にトラガラ展望台を訪れるが、また霧雨が海風に乗って吹き付けてきた。 夕食は再びホテルのレストランでとり、昨日と同じように海の幸のリングィーネを頼む。 ところが、昨日のような道を外れたような味わいが無い。 普通においしいリングィーネだ。 これは一体どうしたのだろう。 結局、イタめしのすごさは、コントロールされ、安定した品質というより、突如として現れる規格外の部分にあるのだろうか。 昨晩と同様、あまり高くないDOCカプリの白ワインもさわやかで、ガンバのグリルを肴にディナーというより居酒屋メシのような食事になった。

自室に戻るまでも雨は降り続け、部屋の前の庭は雨に濡れた緑の匂いを闇の中に放射していた。








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