2002年12月30日(月)
〜2003年1月6日(月)

7日目(1/5・日):Cドゴール空港での1夜、そして帰国

イタリア旅行記

飛行機はやっとドゴール空港に到着したものの、あちこちから一斉に他の飛行機も降り立ったせいか、停止したまま全く動かなくなってしまいました。
その間、あまりに不安だった私は、たまたま隣に座っていた日本人男性3名、女性1名、計4人組のグループに話しかけることにしました。
「あの・・・初めての1人旅で不安なので、一緒にくっついて行ってもいいでしょうか?」
「もちろん良いですよ。私たちも人数が多い方が安心ですから!」
地獄に仏とはこういうことを言うのでしょう。
その後、この4人組には日本に到着するまで、感謝してもしきれないくらいお世話となることに・・・。
この方たちは、S夫妻とその会社の同僚の皆さんで、偶然にも私と同じく旅行会社Rome-Naviの横山さんの手配でローマ旅行に来た方たちでした。

そうこうしているうちにほぼ1時間が経過し、やっと動き出して空港施設に近づいたかと思うと、せっかちな欧米の乗客たちは立ち上がって出口に向かおうとし始めました。
しかしまだ飛行機は止まったまま。
「空港施設までのバスの順番が来るまで、そのままお待ちください。」とのアナウンスが流れました。
マンマ・ミ〜ア!!
乗客たちは、客室乗務員に質問攻め。その中の1人のご婦人は、どうやら「わたしゃこのままロンドンまで行かなきゃいけないのに、どうしたらいいの?」と騒いでいる模様。
「ロンドンなんて近くていいじゃん。私はこれから12時間以上もかけて日本に戻らにゃいかんのよ。」
と、私の心の声。

結局1時間後にやっとバスが到着、ドゴールに降り立ってから、実に2時間もかかって空港施設内に入ることができたのでした。
その後も気が遠くなるほどの時間を過ごすことになるのですが、この時の2時間が一番つらかった・・・。なんだか2度と抜けられない迷路にはまってしまった気分だったのです。

この時点で夜の8時過ぎ。ローマの空港に到着してから、既に8時間が経っていました。


施設の入口に全日空の職員が1人待っていました。そこに集まったのは、ビジネスクラスに乗るご夫婦と、S夫妻グループ4人、別のグループ4人、女性2人組、そして私。予想通り私が乗るはずの全日空も大幅に遅れており、夜中の1時近くに飛行機が出発する予定とのこと。

あと5時間近く先なのね・・・(メマイ)。

ビジネスクラスのお客さんだけ職員が誘導、残りの私たちは、各自バスに乗ってターミナル1へ行き、そこのカウンターに居る職員の指示に従えと、説明を受けました。
そして、雪が積もる凍えるような寒さの中、ようやく到着したバスに乗って、ターミナル2から1へと移動しました。
(注:ドゴール空港はターミナル2がメイン・ターミナルとなっており、エール・フランス、アリタリア、JALなどが発着。全日空はターミナル1より発着。)

ターミナル1は、2と違ってお店も殆ど無く、うすら寒くてうす暗い。

妙な連帯感が生まれた私たちグループは、揃って全日空のカウンターに行ったのですが、職員は誰もいなかったため、とりあえずチェックインが始まるまで各自時間を潰すことになりました。
S夫妻グループはカフェへ行かれたのですが、私は疲れていたので1人ベンチで休むことにしました。(後にご本人から教えていただいたのですが、Sさんたちはホットドッグ食べながらビールを飲んで時間を潰していたとのこと)

長かった・・・。ひたすら長かった・・・。

なにせ寒いし、不安だし、人が行き来するしで、落ち着いて眠ってなんかいられない。目を閉じているだけ。
また迷宮に迷い込んだ気分。

ひたすら待ち続けたのですが、チェックインが始まる様子が無い。
これはおかしいということになり、グループの1人がたまたま歩いていた全日空の客室乗務員をつかまえて、地上職員を呼んでもらうことにしました。
しばらくすると1人の女性職員が現れて、
「あなた方のことはターミナルの入口で1時間以上もお待ちしていたのですが、その場に現れなかったので座席はキャンセルしました。」

な、な、な、なに〜〜〜〜〜〜!!!
キャンセルしただと〜〜〜〜〜!!!

我々グループは唖然、そして怒り爆発。そしてこの時点から、全日空の信じられない対応に対する我々乗客の戦いが始まったのでした。

尚、ここから先は全日空に対する批判めいた記述が続きます。
営業妨害かと、不快に思う方もいらっしゃるかも知れません。
私のことを怪しいクレーマーと思われるかも知れません。
でもここに書き記すことは事実なのであり、今後、これを読まれている方々の参考にと思って書くことなので、どうかご理解いただきたいと思います。
また、会社名は伏せようかとも思ったのですが、国際線のフライトがある日本の航空会社は2社しかなく、隠しようもないので全て実名をあげています。

グループの中で最年長と思われるの年配の紳士が、静かに且つ毅然と、
「我々はあなた方の指示通りに動いた。あなた方が現れなかったのではないか。どうして探さなかったのか。」
と、代表して主張してくれました。

百歩譲って、千歩譲って、我々が指示を間違えて理解していたとしても、一度全日空の職員には会っているわけで、我々の存在は確認されているわけで、それなのに何故勝手にキャンセルするの?
あきらめてパリに1泊するとでも思ったの?
大枚はたいて他の飛行機に乗るとでも思ったの?
あり得ないでしょう。それはないでしょう。

結局、全日空の職員が「なんとか調整してみます」と言ってどこかに消えて行きました。
その間に、公衆電話でノーコインでも電話がかけられるコレクト・コールサービスをみつけ、自宅に電話し、母親から会社の上司に帰国が遅れて仕事初めに出社できない旨の電話をしてもらうようお願いをしておきました。

さんざん待たされた後、再び同じ女性が現れて、「チケットはなんとかなりそうだから(あたりまえじゃ〜!)ゲートへ案内する。」と言い、一緒に急いでエスカレーターを何機も乗り継いで登場口へ到着。
そこには疲れた顔をした日本人の集団があふれていました。
やっと帰れる・・・とホッとしたのもつかの間、突然日本語でアナウンスが流れました。
「空港の都合により、本日当機は離陸不可能となりました。明日の午前11時頃搭乗となります。お客様がお休みになるホテルをご用意しましたので、移動の準備が整うまで、今しばらくお待ちください。」

お〜・まい・がっど!
まんま・み〜あ!
なむあみだぶつ!

このまま私は永遠に日本に帰れないのでは・・・。
そんなことまで頭をよぎり始めました。

そしてひたすら待ち続けていると、また次のようなアナウンスが・・・
「お客様にお知らせいたします。ホテルのご用意は出来たのですが、そこへ向かうためのバスの手配ができません。」

さぁ大変。これをきっかけに乗客たちの怒り大爆発!!!
ちなみに、この時点で既に夜中の2時過ぎ。

「なんだとぉ!!おまえらバスの手配することもできないのか!」
「仕事があるんだ!どうしてくれるんだ!」
「普通これだけ待たせたら、何か食事くらい出すだろう!」
「こんなに寒いのに毛布も無いのか!」
「飛行機を開放して中で寝させろ!」
「機内食を出せばいいじゃないか!」

職員が居るカウンターの周りは怒号が飛び交い、そりゃもう修羅場。

そもそも雪が原因な訳で、全日空に責任はありません。だから本来責めても仕方無いことなのだとは思ったのですが、職員の対応があまりにも悪すぎたのです。

「他の飛行機会社も同じ状態なので、我々のところにはバスも食事もまわってこないのです。」

これが全日空の答え。しかも完全に開き直った態度で。

実に正直なお答え。それって、「全日空には力がありません。他社より順番は後回しなんです。」ということを認めている訳なのですね・・・。

どうしてもっと真摯な態度で説明ができないのだろうと私は思いました。同じく責任など全く無いローマの空港のアリタリア職員やエール・フランスの職員はとてもとても親切に、根気良く対応してくれていたのに・・・。
私自身も以前に仕事で顧客のクレーム対応をしたことがありますが、話がこじれるのは殆どの場合、最初の対応のまずさによる2次クレームによるもの。今回の乗客の怒りの大半も、まさにこの2次クレームだったのです。

その後も怒号は続き、疲れて横になっていても眠れるもんじゃぁありません。しかも、待合室の座席はいっぱいで、私たちグループは床にしゃがんでいるしかありません。
たまたまカバンに入れていたビスケットを食べた以外、朝から16時間以上何も食べていなかった私には文句を言う力も無く、怒鳴り声をあげている人たちは元気でいいなぁ、などと思いつつ、ぼんやり座っていました。
すると、グループの2人組の女性が私の元気の無い様子に同情してくれたのか、お菓子を差し出してくれたのです。人に分けるほどたくさん持っていたわけでもないのに・・・。
「残りわずかなのに、申し訳ないですから。」と言っても、「いいから、いいから。」と微笑みながら差し出してくれました。
なんて優しいんだろう・・・。
しかも、申し訳なくてローマの空港で買ったお土産のバーチ・チョコレートを開けて、「かわりにこれを食べてください。」と渡そうとしたのですが、「それはお土産用に買ったものでしょ?ちゃんと持って帰らなければ駄目ですよ。」と言って、受け取ってくれませんでした。

旅は道連れ世は情け・・・


ボロボロの状況で、人に優しくされると、本当に嬉しいものです。
そしてまた、S夫妻の旦那様がどこかからか毛布を調達してきて、それを私に渡してくれました。1枚だけしかない毛布を、奥様ではなくこの私に・・・。

あぁ、本当に感謝、感謝、感謝。涙が出るほど感謝。

日本帰国後、Sさんにはネット上で改めて御礼を言うことができたのですが、2人の女性には日本に着いた時にきちんと御礼を言うことが出来ませんでした。
旅慣れていた感じの方々だったので、このサイトをみつけてくれないかしら。

あの時は本当にありがとうございました。

そのうち疲れて座っていられなくなり、床に毛布を敷いてしばらく横になっていました。そうしたところ、やっと機内を開放してくれるとのアナウンスがあり、座席で寝てもいいことになりました。

ところが、我々はチェックインをしていなかったので、座席がありません。そこでまたみんなで交渉に行ったところ、
「あなたたちは一度キャンセルしてますからねぇ・・・。ずっと待ってたんですけどねぇ。仮の座席番号を渡すので、そこに座ってください。」
と、この期に及んでまだ嫌味っぽく言うのです。
もう呆れるばかり。そちらの言い分もあるかも知れないけれど、その言い方は何???
しかも、私だけ仮の座席もとれていないと言う始末。
「えっ???私だけ帰れない可能性もあるの?」と不安に思いつつ、とりあえず1人で、ビジネスクラスの席に行くことになりました。
他の方々はエコノミー席だったので申し訳ないと思いつつも、座席番号が無いのでは仕方がなく、適当に空いている席に座って寝ることにしました。
睡眠薬がわりに乗物酔いの薬を飲んだので、2時間ほど眠れたでしょうか・・・。

「機体の整備をしますので、いったん機外に出てください。」とのアナウンスで目を覚ましました。
この時点で朝の7時頃。まだ身体はフラフラしています。


機外に出ると、やっと食事が用意できたとのこと。でも、クロワッサン1個とジュース1本だけ。
そしてまた待合室で11時過ぎまでただひたすらぼ〜っとして時間を過ごしました。

搭乗する少し前に我々グループの呼び出しがあり、やっとチェックインが完了。私の座席も確保できていて、ほっと一息。
でもまだ職員は我々が悪いみたいなことを言っていた・・・。終わってるね、この人たち。

11時30分の搭乗開始も30分ほど遅れて、やっと機内へ。
あぁこれで本当に帰れるんだろうか・・・なんだかまだ実感がわきません。

隣に座った年配の女性の荷物をしまうのを少し手伝った際に、その方から「大変でしたね。」と話しかけられました。
その女性は某大手旅行会社主催のフランス・ツアーの帰りとのことでした。
グループは20人ほどだったらしいのですが、このゴタゴタで座席が全部確保できず、くじ引きで半分の人がパリに残ることになってしまい、一緒にツアーに参加した妹さんはその居残り組になってしまっのだと、疲れた顔で説明してくれました。しかも、天候が原因なので宿泊代は負担せねばならず、残った人たちが、「不公平だからみんなで宿泊代を折半しろ」と怒り出し、せっかく楽しかった旅行が気まずい雰囲気で終わってしまったとのこと。
なんてお気の毒な・・・。
また、その方の隣に座っていた同じツアーに参加したという若い女性は、風邪をひいて熱が38度もあり、とても気分が悪そうでした。
そんな状態であのうすら寒い空港に居たなんて・・・。

離陸も予定時間から30分ほど遅れ、13時頃、やっと忌々しいドゴール空港の地から、離れることが出来ました。
思わず隣の女性と顔を見合わせて言いました。
「やっと帰れますね。」

成田に着いたのは朝の8時頃だったでしょうか。時間の感覚がなくなっていたので、はっきり覚えていません。
着陸と同時に、アナウンスがありました。
「全日空○○の責任者、○○と申します。この度は皆様に大変なご迷惑をおかけし、職員一同お詫び申し上げます。つきましては皆様に些少ではございますが、お詫び金をお渡しします。」
そして、機外に出ると、全日空の職員がずら〜〜〜っと並んで頭を下げつつお出迎え。体調を壊した人も多かったらしく、車椅子も3台ほど待機していました。
全日空に責任は無いのだから、最初に最低限の対応をしていれば、こんなに大袈裟なことをすることもなかったのに・・・。

私たちは一人ずつお金の入った封筒をもらい、各々ほっとした表情で入国手続きカウンターへと向っていきました。
ちなみにお詫び金の額は伏せておきますが、あわててかけた国際電話のお金などで、殆どチャラになってしまうくらいの額だったということだけ書き残しておきます。

これで長かったドゴール空港での出来事は終わりです。
このトラブル以降、ツアーなど自分では選択できない場合を除いて、私はもう2度と国際線では全日空は選ばないと決めました。
航空会社を選ぶ際、よく機内食の味がどうだとか、客室乗務員の対応がどうだとか、座席のピッチがどうだとか言いますが、そんなことはあまり意味の無いことだと私は知りました。

重要なのは「いざという時」に力があるかどうかということ。

後で聞いたことですが、JAL便は全日空より半日はやく日本に帰っていたそうです。ニューヨークで911の事件があった時、たまたま会社の人たちが日本に帰れなくなって現地で足止めをくらっていたのですが、その時も最初に帰ってきたのはJAL便だったと聞いているので、力関係は明らかです。
もちろん、格安な値段という魅力で航空会社を選ぶこともあるでしょう。でも、残念ながら全日空にはそのメリットもありません。

とは言え、私が全日空を選ばなくなった本当の理由は、力関係云々などということではなく、パリでの職員の対応の悪さが頭から離れないから、ということなのかも知れません。


そんな訳で、この旅以降、私は必ずJAL便を利用しています。

最後にもう一度・・・
あの時、お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。
ドゴール空港では本当に大変な目に合いましたが、皆さんの親切に出会えたことは、本当に良い思いです。

さてさて、成田から自宅に帰った私はどうしたかと言うと、シャワーだけ浴びて、真面目にも午後から出社したのでした。

「17時間30分」という、前代未聞の遅延証明書と共に・・・。

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