プレストレスの法則

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加>加藤はバルサキットをコタツの上で組んでいるせいでしょうか、かならず主翼がひねってしまいます。今度、主翼用の組立ジグを買おうと思います。特に、大きな機体になるとテーブルに半分でも載りませんから。森君はちょっと尋常でない工作法ですね。

森>森の工作室にはコタツがありません。コタツは女房のものです。バルサボードとかいう工作用の板が発売されてますね。あれがいいのではないですか。森は、そうですね。7年くらい前に「プレストレスの法則」というのに気がついて、それから、主翼は台に固定しないで作るようになりました。空中工作法です。はは、もっともシビアなスタント機を作りませんから、加藤さんとは要求条件が違いますよ。

加>「プレストレスの法則」というのは、前に聞きました。部品を接着するときに無理があると、それが原因で全体がひずむというものですね。森君のように空中で主翼が作れるというのは目が確かなのです。加藤は目が悪いのでだめです。どうしても工具に頼ってしまいます。

森>空中で作ると言っても、接着するときは台の上に置いてあります。ただ、固定しません。固定してしまうと、ひずみに気がつかなくなるのです。ジグに固定して作ればゆがまないというのは完全な錯覚です。力を入れて固定すると、その力は、固定を外したときに解除され、変形します。昔は、ちょっと力をいれてパーツをはめ込む方が出来上がりが丈夫な気がしたのですが、今は逆にスカスカくらいではめ込みます。余分な力をかけないのが鉄則です。

加>なるほど、ジグには確かに頼ってしまいます。ついつい無理して接着しますね。特に、最近は瞬間接着剤ですから、少しの間、手で押さえてくっつけてしまいます。これがまずいわけですね。

森>そうです。接着剤がその場をくっつけますが、そのときかけていた力は、材料に残るわけです。それが、ストレスですね。この「プレストレスの法則」は、グループの人間関係にも適用できます。グループに新しい人間が入ったとき、ちょっと無理をして、縮んだり伸びたり(つまり、ネコをかぶったり、逆に見栄をはったり)して入ると、その無理はグループ全体のひずみになるのです。

加>うーん。それは面白い。わかりますね。飛行機作りがこういう方向に役立つとは思いませんでした。ところで、はめ込むパーツが少し大きいときは削れば良いですが、小さいときや届かないときは、面倒でも部品を作り直すのが良いわけですね。これは、なかなかできませんね。そうしなくてはならないのでしょうけど。主翼や胴体のプランクで曲面のところも、本当は曲げ癖を十分つけて、力をかけなくても合う状態にして接着すべきですが、これも面倒です。

森>森もそこまでしているわけじゃありません。でも、ジグや台に固定すると、こういうストレスがどんどん溜まります。打ち消すような方向のものがあればよいのですけどね。その点、森の空中工作法は、ひねりをいつも修正しながら、必要なときは反対にひねって接着していきます。プランクも、バルサ板を全部連結して一枚板にして貼るのではなく、一枚一枚貼ります。

加>プランクは全部一枚にして貼った方がきれいに張れませんか?

森>だいたい、森の場合フルプランクが少ないのですけど、そうですね。仕上げはまとめて貼った方がきれいかもしれません。でも、ゆがみやすいと思いますね。人それぞれでしょうか? 森もプランクは台の上でやりますよ。でも、やっぱり固定はしませんね。重い本を載せないと、浮き上がってしまうようでは、いずれひねるわけです。もっとも、クリープといって、その力をずっとかけていると、塑性変形が進行して応力が抜ける(応力緩和)性質がすべての材料にあります。木材は特にクリープが大きい材料なので、まんざら、ジグが役に立たないわけでもありません。話は違いますが、応力緩和は英語で、ストレスリラクゼーションといいますが、ストレス解消とも読めます。意味深でしょう。組織の枠にはまった人間を想像して下さい。

加>特に濡れている時に変形させると乾燥してもその形になります。胴体のプランクに利用しますが、そういったものですね。うーん、しかしやっぱり主翼のジグが欲しいですね。森君が使っている工作台はどこで買いましたか?。

森>これは製図板です。職業柄、こういうお古が回ってくるのです。買ったら高いです。前は、15mmくらいのベニアをホームセンターで買ってきて使っていました。森の精度としては十分でしたが、加藤さんは不満かもしれません。ガラスが一番平面が確かですね。

加>ガラスではピンが刺さりません。とにかく、一度、ジグを購入して使ってみましょう。結果は報告します。今、ムスタングの主翼を作り始めているのでこれに使ってみましょう。



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