MORI Hiroshi's Floating Factory Model Railroad Workshop
A&B Report 2013年4月号


Bontenzaka Garden welcomed spring after long winter.

/☆Go Back☆/
 4月になりましたが、当地ではまだときどき雪が降ります。欠伸軽便鉄道梵天坂線(Akubi Lightweight Railway Bontenzaka Short Line)にとって、3回めの春を迎えようとしています。今回の冬は、気温こそそれほど低くなりませんでしたが(せいぜい氷点下15℃程度でした)、雪が比較的多く、常に庭園は真っ白でした。ようやく地面が見え始めたのは3月の中旬です。そうなると、ついつい庭でなにかしたくなってしまいます。というわけで、まだ地面が凍っているうちから、土木工事が始まりました。このレポートにはありませんが、母屋の玄関に大きな庇を作りました。そして、そのあと、3月末からトンネル工事になったのです。今回のレポートのメインは、このトンネル工事になります。このほか、(こちらもレポートにはありませんが)線路の枕木の塗装をしたりして、新線工事のための準備も進めています。
 1月と2月は、ほとんど小さなライブスチームで遊んでいました。暖かい工作室での作業ですが、火をつけて走らせるときは、屋外に出なければなりません。雪の中で、何度か走らせました。これも、毎年の傾向です。春になると、5インチゲージの運行が多くなりますので、小さい機関車は、逆に下火になるのです。小さいサイズでは、アスターのシェイを組んだことがメインだったでしょうか。
 さて、これから夏、そして秋にかけては、本当に素晴らしい季節です。とにかく、真夏でも「暑い」という日はありません。爽やかで、気持ちの良い、楽しい庭園鉄道のシーズンになるでしょう。

 このA&Bレポートでは、記録的な意味で主なニュースのみを取り上げています。より詳細な情報は、毎日アップされている欠伸軽便のブログ(Construction in Waterloo)をご覧下さい。

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雪景色

 寒くて外では長時間は遊べないのですが、ただ眺めているだけでも綺麗です。本当は、月夜が一番ファンタスティックですが、写真に撮れないのが残念です。上の写真でわかるとおり、完全なパウダ・スノーです。足跡もぼんやりとしか残りません。朝はクリームみたいに滑らかな表面ですが、樹の枝から落ちてくる雪のために凸凹になります。

 また、冬は空気が澄んでいるのか、日差しがとても強く、いろいろなものが輝いています。遠くの樹氷も綺麗ですし、お昼頃には毎日、ダイヤモンドダストに包まれます(これも撮影できませんが)。当地の冬は、とにかく低温、雪は少なく、夜に降り、日中は晴天、積雪はせいぜい30cm、という特徴があります。


平常運行

 前回のレポートにあるとおり、線路はロータリィ除雪車の活躍で、常に通行が可能な状態に保たれています。この冬は、積雪が10cm以上という日は、4日でしたので、4回除雪が必要でした。それ以外は、粉雪が舞う程度なので、除雪の必要はなく、日射のため日中には線路が見えるようになります。また、常に氷点下のため水がないので、機関車も靴も、汚れることはありません。土も凍っていて、コンクリートのようです。泥濘はありません。ほぼ毎日、列車が走りましたが、とにかく低温なので、運転している人間が長くいられないのです。せいぜい2周もしたら、暖かい室内に退避となります。

 雪の庭園を走るレールバス *MOVIE in YouTube*


 こちらは、4月になってからの風景です。ロータリィ除雪車とシャーシを共用しているため、冬はお休みだったレールカーが登場しました。春になると、線路の補修などの作業で忙しくなります。


ボールドウィンB1タンク

 昨年の12月に初走行したボールドウィンです。1月と3月にも走りました。今のところまったくノートラブルです。その後、プラスのネジを六角ネジに換えたりしています。

 上の写真では、1月に製作したタンク車を連結しています。常用トレーラの無蓋車を挟んで、タンク車からホースを機関車までつなげ、補助の水タンクとして使います。機関車のリアタンクに3リットル、このタンク車に10リットルの水が入ります。やはり、ボールドウィンは、森林の風景が似合います。夏になったら、もっと活躍することでしょう。

 ボールドウィンの走行(少し斜め後ろから) *MOVIE in YouTube*


小さい機関車たち
 欠伸軽便では、冬は小さなライブスチームのシーズンですが、実は、低温下ではこの種の機関車には大変不利な条件になります。なかには、満足に走れない機関車もあります。もちろん、人間にとっても大変過酷です。氷点下10℃くらいのところへ出ていって、10分ほどコースを走らせたら、すぐに撤収する、といった感じです。工作室は室温が20℃あるので、短い時間ならば、低温もさほど気になりません。さて、走らなかった機関車もありますが、ざっとご紹介しましょう。


 最初と2番めの写真は、マニアが自作したものだと思います。まず、Cタンクの方は、キャブ付近にV型2気筒のオシレーチングエンジンを搭載したギアードロコです。走った形跡がありませんでしたが、なんと2つのエンジンの配管が逆になっていて、2気筒がそれぞれ逆回転をするように間違って製作されていました。これを直して、なんとか走るようになりました。もう一方は、バトルオブブリテン風ですが、エンジンはMamodです。これも、ぎりぎり走りましたが、快調とはいえません。2台とも32mmゲージで、アルコール焚き、どちらもポットボイラです。

 3枚めの写真は、石炭焚きの機関車で、シャーシはRoundhouse製、ボイラは自作品のようです。不具合が多く、少しずつ直しているのですが、まだ走行には至っていません(石炭焚きは、スチームアップが大変で、寒いシーズンには向きません)。それから、4枚めは、Mamodにサドルタンクやダミィのシリンダを被せた改造機で、7/8インチスケールの機関車。名前はGoferです。大変巧妙にできています。外から見えているクロスヘッドもダミィです。アルコール焚きで、なかなか快調に走りました。人形が大きくて、見栄えがします。

 Goferの走行シーン *MOVIE in YouTube*


 1枚めの写真は、Archangel製のOゲージのCタンク。シリンダは1気筒で、スリップエキセン式。アルコール焚きです。2枚めのオレンジは、Mamodの改造車。ほぼそのままに見えますが、ボディは全自作。煙室のサイドに給油機もあります。ピストンは、MSS製かもしれません。

 3枚めは、カブトガニ号と名づけましたが、ジャンクで入手した古そうな自作品と思われる機関車です。バルブギアとバーナがなかったので、それらは作って走るようにしました。7/8インチスケールの工業用機関車といったところです。4枚めは、ライブスチームではありません。Simplexという名の機関車で、装甲車です。動力部を修理して電池で走るようにしました。

 Simplexの走行シーン *MOVIE in YouTube*


 1枚めの写真は、マニアが自作したものでしょうか。オシレーチングエンジンで、バルブロッドはダミィ。かなり大柄な機関車です。45mmゲージのガス焚き。2枚めの緑のタンクはMamodの改造車で、Vale of Rheidol鉄道のサイドタンク風です。バランスの良い工作です。これはアルコール焚きになっています。

 3枚めは、16mmスケールのハンスレットで、プロのモデラが作ったものと思われます。これも外側のシリンダはダミィで、内部に1気筒のエンジンを持っています。アルコール焚きの32mmゲージ。最後の機関車は、Accucraftが今年の3月に発売した7/8インチスケールのEmmaです。45mmゲージのガス焚き。とにかくサイズが大きく、だいたい3.5インチゲージのTichと同じです。スチーブンソン式のバルブギアを備えています。30分ほど給水せずに走りました。Accucraftは、今年は7/8インチスケールの機関車を何台か発売するようです。ちょっとしたブームみたいです(日本では、7/8インチスケールどころか、16mmスケールでさえ模型雑誌に取り上げられないでしょう)。

 Emmaの走行シーン *MOVIE in YouTube*


シェイを組む

 以前に購入してあったAsterのシェイを組み立てました。以前のシェイをモデルチェンジしたものです。一番大きな違いは、ガス焚きになっていることです。台湾の阿里山のシェイのスケールモデルで、後ろの水タンクの背が高くなって、保存されている実機に近づいた感じです。また、軸動ポンプを備えていて、首を振る台車にそれがあるため、フレキシブルホースの給水管が連結されています。この機構のせいで、急カーブが曲がれない、という欠点がありますが、これは、いずれ改造したいと考えています。

 1枚めが、3気筒のエンジンを組んでいるところ、2枚めが、台車を組み上げ、シャーシ上にはボイラやタンクを載せたところです。

 いろいろありましたが、完成して走行試験に臨みました。低温のため、ガスバーナが本調子ではありませんが、タンクをお湯で温めて、どうにか走るようになりました。暖かくなったら、またトライしてみたいと思います。

 シェイの走行シーン *MOVIE in YouTube*


小さなチャレンジ

 暖かい工作室で過ごす時間が長く、あれもこれもと、次から次へといじっておりましたが、それらの中で2つほど紹介します。まず、上の写真は、16mmスケールのハンスレットの仕掛品を走らせるプロジェクト。ガスバーナを初めて自作しました。それが1枚めの写真です。もっとも、ジェットノズルの0.2mmといった細い穴をあける技術がないので、この部分はAccucraftの予備パーツを加工して使いました。

 2枚めが、スチームテストをしているところ。3枚めが走行試験です。室内では調子が良いのですが、やはり低温の屋外では快走というわけにはいきませんでした。ただ、数々のノウハウを得ることができました。次に活かしましょう。


 これは、以前にご紹介したことのあるトラムで、電子音を奏で、人形が磁石で動く仕掛けのある置物です。これを走るように大改造しました。もともとは、台の上に固定されていて、その台の中に、電子基板やスピーカがありました。これらをすべて床下に取り付け、さらに、走行用の車輪を装備し、音楽と照明と走行用の電池も載せたわけです。写真のように、ぎゅうぎゅう詰めです。だいたい3.5インチゲージだったのですが、45mmゲージで走るようにしましたので、かなりナローになりました。

 ミュージックトラムの走行シーン *MOVIE in YouTube*


ジャイロ関係

 これも以前にご紹介したことがあるLehmannのジャイロカーですが、今回色違いのもの(1枚めの写真の下にある黄色の方)を入手しました。そして、なんと、内部のメカニズムが壊れていないほぼ完動品です。このブリキのおもちゃは、2枚めの写真にあるとおり、100年まえにドイツで作られ、アメリカで売られたものです。販売されていた当時の100倍以上の値段になっていると思います。ゼンマイではなく、弾み車です。車輪は前後の2輪で、ジャイロによって前輪がステアリングします。レールの上を走ることはできませんので、ジャイロモノレールではなく、ジャイロカーです。

 ジャイロカーの走行シーン *MOVIE in YouTube*


 以前に井上氏からいただいたロータを使って、少し大きめのジャイロを製作しました。いくつか実験をしたかったためです。

 ジャイロのジンバルが2重になっていて、通常の動きに加えて、もう1軸、僅かに回転するような仕組みにしました。支持部にはすべてボールベアリングを用いましたが、それでも振動が出るので、調整が必要です。なかなか思った結果が得られませんが、現在データを収集中です。


ホイットコム製作開始

 杉浦幼治氏が設計された機関車を作ることになりました。レーザカットされたパーツも杉浦氏経由で購入しました。この機関車は、工業用のホイットコムで実機の1/4スケールです。7.5インチゲージのサイズですが、5インチゲージにもなります。特徴的なのは、スライドするベアリングの汎用パーツを使っていることで、写真にあるとおり、ここがチャームポイントです。

 直径150mmもある大きな車輪は、外注で作ってもらいました。ほとんどボール盤だけの工作で組み立てられそうです。5月末には完成の予定で、毎晩頑張っています。完成したら、28号機になります。ただ、上の写真のシャーシだけで、既に持ち上げられない重量なのです。最終的には、分解して運び、線路上で組み上げる必要があるでしょう。


トンネル工事

 以前から計画していたことですが、山とトンネルを作ることにしました。普通は、山があってトンネルを掘るわけですが、模型のレイアウトと同様で、順番は逆です。線路が既にあるところにトンネルを作り、そこに土を被せて、山にします。

 3月末から工事を始めました。最初はブロックで積み上げるつもりで設計し、トンネルの天井の板をどうしようか、と建築屋さんに相談したのですが、U字溝の大きいものがあるから、それを使ってはどうか、という話になりました。ブロックで作るよりもはるかに丈夫で安全でしょう。このU字溝は、内法で深さが1200mm、幅も1200mm、そして長さが2000mmです。ちなみに、1つが7万円。これを3つ使うことにしました。

 U字溝を逆さまに設置します。そのための基礎工事をまず行いました。1枚めが穴を掘り、型枠を作ったところ。中に鉄筋が見えます。2枚めが、コンクリートの基礎が完成したところです。ここに、U字溝を載せました。U字溝は1つで重さが2tonもありますので、大型のクレーンが必要です。3枚めが設置した直後。線路がカーブしている場所ですから、外側に幅450mmほどの隙間ができます。4枚めは、ここに鉄筋を組んでいるところで、このあと型枠を内と外から当てて、コンクリートを流し込み、この隙間を埋めました。直線だったら工事が簡単でしたが、トンネルの入口側から出口が見えない方が良いと考えて、あえてカーブにしたのです。カーブの半径は6m、トンネルの長さは、完成すると約7mになります。


 トンネルの構造部が完成したあと、土を被せました。土の量は、34立米(立方メートル)。重さで約80tonほど、トラックで17杯分でした。この土は買ったわけですが、1立米が5000円くらいですので、17万円です。U字溝や土の材料費を込みで、総工費が約50万円かかりました。2枚めの写真が、工事終了記念のショット。そして、3枚めが、再び線路をつないだところです。


 さっそく走行してみました。トンネルを初通過するときには、助役が一緒でした。トンネルから出たところで停車して写真を撮りましたが、助役はまだ乗り足りない様子で、降りようとしませんでした。トンネルの中を通過するときは、反響音に包まれて、いかにもそれらしいサウンドになります。作った甲斐がありました。


トンネルポータル

 U字溝の設置は、自分一人ではできません。ここまではプロに依頼して作ってもらいました。ここからさきは自分一人の工事になります。トンネルの出入口、つまりトンネルポータルの製作です。線路が開通してすぐに着工となりました。レンガは、凍結で割れないタイプを使うことにしました。通常のものよりも4倍ほど高いレンガです。500個を購入しました。

 まず、穴を掘って基礎をブロックで作り、その上にレンガをモルタルで積んでいきます。普通のレンガよりも重く、強度も強そうなレンガです。2枚めの写真にあるとおり、モルタルは一輪車のバケットで練りました。一度に練る量は5リットルほどで、レンガを5〜10個程度ずつ積んでいきます。モルタルが固まるまえに重量をかけてはいけないので、1日で積めるのはせいぜい3段までです。

 両側の擁壁と、トンネル両側の柱を積み上げ、いよいよ入口の上を跨ぐアーチの製作になります。ここでは、木製のジグを製作し、これでアーチ部を支えました。また、アーチ部に並ぶレンガには、中央に穴をドリルであけておき、鉄筋を通しました。このほかにも、U字溝とつなぐ鉄筋や、擁壁が前に倒れないように土の中に埋めるアンカと連結する鉄筋を入れました。地震や衝撃荷重に対する補強です。


 上の1枚めの写真が、アーチがジグの上に積み上がった状態です。この上にさらに何段か積みますが、レンガを斜めにカットしなければ収まらない部分もでてきますので、グラインダを使って現場でレンガを切りながら積み上げました。2枚めの写真が完成したところです。もっとも、これはトンネルの片側だけです。反対側の工事がこれから始まります(このレポートには間に合いませんでした)。

 片方だけですが、トンネルポータルが完成しました。走ってみると、予想以上に面白いものです。音も良いし、またトンネルから抜ける時の光景も抜群です。もう一方のトンネルポータルができたら、その次は、山の造成や緑化の作業が待っています。


駅長と助役

 駅長と助役は、寒くても平気です。特に、駅長は、雪の朝の散歩が大好きで、寒いほど元気が出るようです。1枚めの写真は、デッキの手摺りで立ち上がっている助役。よくこのポーズをします(駅長はできません)。2枚めは、リビングで椅子に座っている二人。3枚めは、ホビールームでぬいぐるみを気にしている二人。4枚めは、散歩コースでのショットです。

 雪の庭園で線路に沿って歩く駅長たち *MOVIE in YouTube*
 同じく雪の庭園の駅長たち *MOVIE in YouTube*


 助役の特技は、綺麗なおすわりと、口真似です(動画参照)。また、鉄道に乗ることが大好きで、よく一緒に乗せてもらってコースを一周します。上の写真の1枚めが、そのおすわり、そしてレールカーに乗っているところ。

 駅長の特技は、水遊びとボールを持ってくること。3枚めは、水遊びのあとの満足そうな様子です。駅長も、ときどき鉄道に乗せてもらいますが、そんなに好きというわけでもなさそうです。

 散歩のまえで喜びを歌いあげる二人 *MOVIE in YouTube*
 同じく非常に煩い二人 *MOVIE in YouTube*


夏が楽しみ

 4月になっても雪が降ります。桜が咲くのは5月、新緑は6月まで待たなくてはなりません。でも、庭園鉄道にうってつけのシーズンの到来です。上の写真の鳥は、庭園内で撮影したキジとアカゲラ(キツツキ)です。

 庭園内の鳥の声 *MOVIE in YouTube*

 次回の「A&Bレポート」は7月になります。庭園はすっかり緑で覆われていることでしょう。

/☆Go Back☆/