MORI Hiroshi's Floating Factory Model Railroad Workshop
A&B Report 2010年 4月号


Gyro monorail Experimental model No.9 and No.7

/☆Go Back☆/
 温かくなったり寒くなったり、晴れたり降ったりと、変化の激しい天候が続いていますが、桜も散り、GWも間近。今年も既に1/3が過ぎようとしています。

 例年に比べると、熱心に庭掃除をすることもなく、花の苗を植えることもありません。それよりも梱包作業です。毎日少しずつ模型を箱に入れています。これが本当に神経を使う作業で、細かい部分をつい壊してしまい、その修理をする仕事に切り替わる、なんてこともしばしば。

 さて、2010年になり、2回めのA&Bレポートです。この3カ月を振り返ってみると、前半はジャイロモノレールの7号機を製作していましたし、その仕組みを解説する記事を執筆していました。しかし、後半はほとんどなにも作っていません(もちろん、理由は上記の荷造り作業)。珍しいことです。この状況は、まだしばらく続くことでしょう。数日まえに、最後のオープンディが開催され、もう弁天ヶ丘線も事実上、廃線となりました。名残惜しいかといえば、そういう気持ちもないではありませんが、しかし、次なるプロジェクトが楽しみでしかたない、というのが正直なところです。

 A&Bレポートでは、記録的な意味で主なニュースのみを取り上げています。より詳細な情報は、毎日アップされている欠伸軽便のブログ(Construction in Waterloo)をご覧下さい。それ以前の掲示板は現在は書き込みはできません。しばらくは閲覧のみ可能です。

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『庭園鉄道趣味』と『庭煙鉄道趣味』

 2008年と2009年に発行された『庭園鉄道趣味』『庭煙鉄道趣味』です。今後、庭園鉄道関係の出版は予定していません。この2冊が最後です。


通常業務

 書斎から見下ろした西庭園の写真です。撮った日は1週間しか違いませんが、楓の樹が葉を出したため、見通しが悪くなりました。しかし、新緑は綺麗です。この時期は本当に庭が輝いて見えます(たとえどんな庭でも)。1枚めの写真には、手前に駅長がいますし、木造橋付近にAB20が見えます。クリックしてご覧下さい。


 久しぶりに登場したのは、ホンダの4サイクルエンジンを搭載した7号機Kato 7tonです。ナベトロ2両とショートカブースを引いています。


 12号機AB20の列車です。線路の点検をしながら走ります。この時期は樹の枝の剪定などが主な任務です。切った枝はナベトロに入れて運びます。


小さい機関車たち

 長年探していた2台を昨年ほぼ同時に入手することができました。どちらも中古品です(既に絶版)。このサイズのライブスチームで、最も欲しかった2台なので、2009年は本当に良い年だったといえます。1台めは、CatatonkのShayです。以前にご紹介したのは、同じCatatonkでも大きい方(3シリンダ)のShayでした。こちらは、T型ボイラで2シリンダ、つまり、5インチのピンクShayとほぼ同じタイプです。プロポーションも最高ですし、ディテールも申し分ない素晴らしさです。走りもこれまた一級品でした。Catatonkは、大型Shay、そしてHeislerに続き、3台めになりますが、どれも一級品です。

 もう1台は亀の子、Porterのサドルタンクです。同じタイプの機関車は多いのですが、しかし微妙にプロポーションが違います。これを見たら、もうほかのものでは満足ができなくなります。ずんぐりとした可愛らしいプロポーションは実に秀逸。これは、WrightScale社の製品で、10年くらいまえには広くアメリカで売られていたようですが、今は新品は手に入りません。

 Shayの走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*

 Porterの走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*


 1枚めは、ずっと以前に中古品で入手したアスターのクライマクス。バーナがデリケートですが、走らせると独特の動きと音。2枚めの写真は、ドイツのBeck製のAnnaという機関車。一見、LGBかプレイモビルのようなプラスティックな雰囲気ですが、頑丈な金属製。ライブスチームの入門機としてかつて発売されていたものです。

 クライマクスの走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*

 Annaの走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*   *MOVIE in YouTube*

 3枚めと4枚めの写真は、RoundhouseのDarjeelingと7/8インチスケールに改造したBaldrigですが、こちらは、機関車ではなく、人形に注目して下さい。Garden Railなど、イギリスの雑誌によく登場する有名な人形で、Busy Bodiesの製品です。スケールではないのですが、ナローの機関車にとてもよく似合います。特に、Darjeelingの方は、この機関車のために作られた5人セット。前部にサンドマンが2人、石炭の上にコールマンが1人、キャビンに2人乗っています(写真では1人は見えません)。レジン製で、手作業でペイントされているようです。


ジャイロモノレール

 前回のレポートで開発段階の話を書きました。今回は、その後の展開についてです。まず、9号機は、調整もうまくいき、満足のできる性能を達成できたので、ボディを作ったり、内部の各部をユニット化して、簡単に取り外しができるように改良しました。メンテナンス性を考えてのことです。

 ボディは、いろいろ悩みましたが、スペースシップをイメージしたデザインに決定。ハンズで購入できる透明の半球プラスティック(塩ビ?)を3つ使用しました。ジャイロから上部に突き出したサーボモータの出っ張りをこれで処理しました。ユニット化では、ジャイロ部、スイッチ部、バッテリィ部などをコネクタで切り離せるようにして、頻繁にある分解作業に備えました。

 ボディが完成した状態で走行させた動画が以下にあります。
*MOVIE in YouTube*   *MOVIE in YouTube*

 バランシングのテストをしている動画はこちら。重い方を持ち上げてバランスを取ります。 *MOVIE in YouTube*

 途中でスピードを切り替えるテストをしている動画はこちら。 *MOVIE in YouTube*

 重心位置を高くしてテストをしている動画がこちら。 *MOVIE in YouTube*


 今年の春はなかなか気温が上がらず、9号機の塗装ができたのは4月の中旬でした。色は最初から赤、白、黒の3色と決めていましたが、塗り分けをどうするかで何案も候補を考えた結果、最終的には、一番オーソドックスで大人しいものを採用。キャノピィの周囲が黒いのはジェット機では定番です(太陽光の反射防止のため)。塗料はウレタンを使用しました。このような塗装のときにも、内部が簡単に取り外せると便利です。

 塗装後の走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*


 9号機のボディが(未塗装でしたが)完成したあと、ジャイロモノレールの原理に関する解説を執筆し、機芸出版社の『鉄道模型趣味』に投稿しました。その後、9号機はちょっと「鉄道模型」として読者に受け入れられないイメージかな、との反省から、もう少し鉄道車両らしいジャイロモノレールを作ろうと思い立ちました。ちょうど、試作7号機がシングルジャイロで、フォルム的に一般の電車に近かったので、余った部品を再構成して、もう一度、7号機を組み立てました。もっとも、9号機の成果から得られた技術が、サーボモータやバランシングスイッチなどに活かされていて、シャーシも含めてほとんどの部品は新しく作り直しています。

 顔となる前後の部分は、工事現場で使用される電球カバーです。これは、なにかに使えそうだからと以前にホームセンタで見つけて買っておいたもの(たしか260円くらいでした)。そのときは、上下逆の状態(上が丸くなる形)で使うつもりでしたが、モノレールなので、反対になったわけです。側面と屋根はバルサで適当につなげました。車輪は戸車の部品を使っています。3枚めの写真が内部の様子です。

 製作途中のテストの様子がこちらに。 *MOVIE in YouTube*


 どうしても重心が高くなるため、バッテリィをすべて床下に取り付けました。スペースの関係で、今回はニッカドではなく、ニッケル水素電池を部分的に使っています。3月の初めに温かい日があったので、塗装を行いました。9号機よりも早くこちらを塗ったのは、『鉄道模型趣味』に写真を載せていただけることになったからです。2枚めの写真が塗装後の裏側。中央部にトグルスイッチがあり、前後に貫くバーが障害物に当たると、このスイッチのレバーを動かし、進行方向を反転する仕掛けです。この車両は、シングルジャイロなので、カーブを走ることができません。したがって、直線を往復させて遊べるように、自動逆転装置を組み込んだわけです。

 自動往復運転をしているテストの様子がこちらに。 *MOVIE in YouTube*

 完成後の走行シーンがこちらに。 *MOVIE in YouTube*

 カーブを走行するテストをしているところ(シングルジャイロなので無理があります)。 *MOVIE in YouTube*


 『鉄道模型趣味』の5月号に、投稿した記事が掲載されました(正直に言いまして、講談社ノベルスの1冊めが出たときの2倍くらい嬉しいです)。少し長くなってしまったので、2回に分けて連載となりました(5月号に6ページ、6月号に8ページ)。この記事は、車両の製作方法ではなく、ジャイロモノレールの原理について解説したものです。記事を書いたときには、7号機はまだなく、9号機が走行に成功したばかりでしたので、内容的には9号機のツインジャイロについて少しふれています。

 実際に作る場合には、圧倒的にシングルジャイロが簡単ですから、初めは7号機を参考にしていただく方が良いと思い、4月になって詳しい製作記事を書きました。このとき、昔の『模型とラジオ』のようなスケッチを描いたまでは良かったのですが、どうも歪んでいてみすぼらしくなってしまい、自分でもがっかりしておりました。ところが、ここで急展開。驚くなかれ! なんと! あの平岡幸三氏(ライブスチームで世界的に有名なモデラ)に、この図面を清書(たぶん、大幅に描き直し)していただけることになったのです。『鉄道模型趣味』に自分の記事が載っただけでも嬉しかったのですが、そのうえ、平岡氏に図面を描いていただけるなんて、なんという幸運。よほど、日頃の行いが良かったのでしょう(心当たりがありませんが)。この7号機の製作記事の方も、近々掲載されますので、是非、皆さん、ジャイロモノレールの製作に挑戦して下さい。原理は難しいですが、工作は簡単です。ただ、調整はちょっと根気がいりますけれど……。


平岡幸三氏の機関車

 4月16日に、八王子の平岡幸三氏邸を、井上昭雄氏、星野公男氏とともに訪問しました。平岡氏の機関車をこの目で見てきました。世界中にこの機関車を見たい人がどれくらいいることでしょう。まさに、そういう憧れの作品なのです。持っている『LIVE STEAM』誌で最も古いのは、1977年のものですが、これに既に平岡氏が書かれた記事が載っています(ご本人の写真もありました)。世界中のライブスチーマが絶対に知っているビッグネームです。以前A&Bレポートで、Kozo Hiraokaが弁天ヶ丘線で機関車を運転された写真をアップしたところ、「どうしてKozoが日本にいるのか?」というメールがアメリカから来ました。凄いモデラは全部アメリカ人だと思っていたのでしょうか。

 拝見したのは4台で、Pennsylvania、Shay、Climax、Heislerです。これらの機関車の製作記事は、素晴らしい詳細図、組立て図、工法図とともに雑誌『LIVE STEAM』に連載され、また書籍になり、世界中のモデラが、そのとおりにこれらの機関車を作りました(今でも大勢が作っている途中です)。アメリカで出版された本のうち、日本語に翻訳されたものもあります(PenncylvaniaとShayの本は、機芸出版社から発行されています)。その図を描いたドラフタもありましたし、図面の原画、下書きなども見せていただきました。

 4台の機関車は、最近2年をかけて再塗装されており、新品のような状態でした(火室を覗かなければ、走行した痕は見つけられません)。芸術品なのか工芸品なのか、あるいは工業製品なのか、あまりにも精確で、人間の能力、技、知性の素晴らしさを感じずにはいられません。本当になにもかも息をのむほどの出来映えで、何度も溜め息が出ました。とても、ここにある写真では伝わりません。それどころか、見ることに夢中で写真を撮ることを忘れるほどでした。

 しかし、ただ作るだけならば、これができるモデラはいます(それでも多くはないはずです)。平岡氏の凄さは、やはりそれを図面と文章で丁寧に伝える技術だと思います。日本では少し高いですが、平岡氏の著作を1冊手にされれば、誰でもきっと圧倒され、そして納得されることでしょう。同じことができる才能は、今のところ世界に見当たりません。

 ペンシルバニアは応接間のキャビネットの上に飾られ、ほかの3台は、2階の平岡氏の部屋の片隅で、木箱に収まっていました。平岡氏の家には、そのほかには機関車の模型は1台もありませんでした。そこにあるのは、「洗練」の一語です。


JAMコンベンション

 JAM国際鉄道模型コンベンションに今年も出展することになりました。昨年もブースを出したので、今年はお休みする予定でしたが、ジャイロモノレールを見ていただくために参加することにしました。上の写真は、エントリィのための申し込み書です。幸い、審査の結果、出展が認められました。欠伸軽便鉄道としては、5回めになります。


最後のオープンディ

 記念すべき第10回スペシャル・オープンディが4月24日に開催されました。素晴らしい晴天。日向は適度に温かく、そよ風が清々しい春の一日でした。星野公男団長のもと、関東と関西、そして地元からも参加者があり、約20名が集いました。ほぼいつものメンバですが、新しい方も1名。

 5インチゲージは、今回はすべて電動の機関車でした(ジャイロモノレールの準備もあって、ライブスチームは出動しませんでした)。1枚めの写真で、19号機DB81を運転しているのが和田氏、手前で見ているのは井上氏と佐藤氏(DB81の作者)、椅子に腰掛けているのは杉浦氏。2枚めの写真で、赤い機関車を運転しているのが星野氏。3枚めの写真では、製作者の木内氏が運転中です。


 32mm、45mmゲージの小型車両は、エンドレス線で。皆さんがそれぞれに持ち寄った機関車を走らせました。テーブルは珍しい機関車でいっぱい。


 1枚めの写真は和田氏が走らせていた45mmゲージのHeisler。オシレーチングエンジンの2気筒。ガス焚き。もちろん、フルスクラッチです。カラーリングが素晴らしいですね。2枚めは、井上氏の縦型ボイラ機。快調に走行中。3枚めは、星野氏が走らせていた32mmゲージのゼンマイの機関車。ちょうど、ここで止まったので、5インチの機関車の運転中に写真を撮りました。4枚めは、小池令之氏のプロペラカーで、9mmゲージの車両ですが、45mmと32mmのデュアルゲージの線路(の使わない方側)を走れるのです。弁天ヶ丘線でNゲージが走ったのは、これが初めてです。

 和田氏のHeislerの走行シーンはこちらに。 *MOVIE in YouTube*


 5インチゲージで他社からやってきたのはこの2台。赤いマックカーは木内氏の新作。前回のスペシャル・オープンディのときには、これのオレンジ色が走りましたが、この赤が2号機だそうです(作るのが早い!)。ちなみに、トレーラの後ろにいる青い水タンク車は、杉浦氏が作られた木曽森林の車両(杉浦氏には、完成間近のボールドウィンB1タンクも見せていただき、写真を沢山撮ることができました。感謝!)。それから、2枚めの写真は、大沼氏の湘南電車風機関車。不思議な車両です。下回りを入手して、ボディを自作されたそうです。できたばかりのようでした。


 朝と夕方、2回にわけてジャイロモノレールのデモを行いました(それ以外は、ボディを外し、内部を見ていただきました)。家族以外に走るところを見せるのは初めてのことです(というか、家族に見せたこともなかったかも)。

 9号機は大変好調で、夕方の運転では10分以上走りっぱなしでした。途中で線路のジョイントが外れたため、一旦停止させましたが、そのときもジャイロは回っていてバランスを取ったままです。その後、バックも披露。倒れるまで走らせようと思いましたが、結局最後まで倒れませんでした。このコンディションのままJAMコンベンションに持っていければ最高ですが……。

 ジャイロモノレールのデモンストレーションの動画はこちら。 *MOVIE in YouTube*


 弁天ヶ丘線のオープンディは今回が最後。もうありません(お客様のための小規模な運転なら、まだ何度かあるとは思いますが)。たぶん、来月頃には、ポイントなどを取り外すことになるでしょう(ポイントは高価なので、新線でも流用するつもりです)。写真は、23号機シンプリシティ、19号機DB81、そして3枚めはポイントを切り替えるための送信機です。特にこの右のものは、弁天ヶ丘線のために特別に自作したものですから、新線ではこのまま使えません。今回の使用が最後になりましたので、ハンディタイプと並べて記念撮影を。

 新緑の季節。これから庭園はますます緑が輝かしくなります。暑くなるまでの一時ですが、まだ何枚か写真が撮れるでしょう。


新天地の工事

 新線を建設するための土地では、車庫兼工作室兼ホビィルーム兼寝室としての建物が建設中です。構造は既に完成し、外装と内装の工事をこれからします。もう少しです。次のA&Bレポートの頃には、新天地からのレポートになっているはずです。新線の名称ももう決めましたが、発表は次回にしましょう。

 駅長も既に何度も視察に出かけていますので、この土地にはすっかり慣れた様子。ここでは、庭園内だけで毎日の散歩は充分でしょう。パトロールに意欲を燃やしています。


駅長の業務

 駅長は春が一番毛が多いようです。一見ふさふさに見えますが、実はふっさふっさです。これでも、手足やお腹は、汚れないようにカットしてもらっているのです。20度を越えると、もう暑くて屋外にはいられません。特に黒いから直射日光に弱いのです。夏になるまえに、涼しい新天地に移れることが楽しみです。欠伸軽便鉄道には、もう猛暑は来ません(希望)。

 庭園をパトロール中の駅長の動画はこちら(晴れの日と雨の日)。
*MOVIE in YouTube*   *MOVIE in YouTube*

 それでは、次回のA&Bレポートをお楽しみに……。

/☆Go Back☆/