日々是好日・身辺雑記 2010年4月
(下にいくほど日付は前になります)

 
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4月某日

モテるぜ。

だいたい「モテた」と「幽霊を見た」は二大自己申告ジャンルなのだが。
(と、常識だけど念のため、断っておく)

なんだかちっちゃい頃から、まわりの男性陣に「可愛がられる」という幸せなキャラクターだった私。
(本人は別に甘えたりこびたりした覚えがなく、ただ子供の本能で遊びまわり、絵を描き、あとはボ〜ッとしていただけなのだが。)
近所にカメを飼っている中学生のお兄さんがいて、冬の終わりに
「のんちゃん(愛称)、今日カメ掘るから見にきな。」
温暖化の前の東京は寒かったんですねぇ、霜柱につらら、水たまりは凍ったし、雪だってもちろん降った。
で、カメも冬眠するわけだ。頃合いをみはからって、雨風のあたらない土の中に寝室を掘ってやって、春が近づくと堀り、起こす。
まだ寝ぼけているカメを
「♪親ガメの〜背中〜に子ガメをの〜せ〜て〜、そのまた〜背中〜に孫ガメの〜せ〜て…♪」
とバベルの塔のように大きさの順にどんどんカメを重ねてみせ、さわらせてくれた。イヤ、こりゃもうメチャクチャ楽しいの!(5歳児には。というか、今やっても楽しいと思う。)

5才の終わりに引っ越しが決まって、近所のお世話になった文房具屋兼貸本屋さんに挨拶に行った。
店にいたそこのお兄ちゃんに
「ちょっと待ってて。」
2階(家)にトントントン。
「のんちゃん、これあげるよ、はい。」
手渡されたのは小さな木彫りの水車小屋、ゼンマイで、♪チロリンチロリン♪とかわいらしい音がするオルゴールだった。
(ここで前ふり、わたしの本名は「信子」である)

「お兄ちゃん、これ、何て曲?」

「・・・『信子の・・・子守唄』、さ。」

この「・・・」と「、」の使い方のダンディーなこと!(とても高1とは思えん)
こんな「いい目」に5才11ヶ月で、あっちゃっていいものだろうか!?

それにしても言いも言ったり、である。
私は高1のとき女子校だったので、世間にはこんな男子高校生がゴロゴロしてると思いつつ「ミロノフ先生」や「紫のバラの人」を漫画で見て過ごしておった。
が、卒業し、進学して小学校以来久々の共学になったら、「男子学生」はそのほとんどが「バンカラ」で「・・・」「 、」なんて世界じゃなかった。
大いなる誤算である。

しかーし。
十数年後に私はこの「・・・」「 、」に遭遇するのである。
独身時代のドッコイである。
ふたりで狂言を観に行った帰り、地下鉄の表参道まで贈ってくれて、ホームで
「なんで私みたいなのがいいんですか?」
と訊ねた。なんせそのころの私は「酔っ払いの当たり屋」をちょっとマシにしたくらいの荒くれっぷりだったからね。
ドッコイはしばらく黙っていた。ホームの奧に電車の来る気配。
アナウンスが入り、地下鉄のランプが見えた、そのとき

「ぼくはあなたが、美しい人だと思うから、・・・。」

かああああぁぁぁっぁあっっ!!!
来た地下鉄に頭真っ白で乗り込み、たぶん私は茹でタコのように真っ赤だったろう、ガラスの向こうのドッコイに半分頭のネジがはずれたまんまで手を振った。
ドッコイはにこにこして手を振っていた。

「この男、堕とさでいらりょうか!」

カメを積み重ねるように、オルゴールのゼンマイを巻くように、私はドッコイという人と楽しく遊ぶようになった。結果結婚である。

しか〜し。
結婚後何度くり返し
「何で私と一緒になったの?」
と訊ねても、答えはいつも
「変な人だから。」
である。
「変な人」なのは「私が変な人だから結婚した」あなたの方じゃ、ドッコイ!


4月某日

ああ更年期

母は50代後半だったと言うが、私は10年も早く「若年性更年期」に突入してしまった。まったく医大の教科書のように「のぼせ・目まい・発汗・立ちくらみ・体重増加 etc.」の日々である。

特に体重は、飲んでいる薬の副作用もあるが、だいたい5割り増し、とんでもないことになっている(笑)。
発汗は日によるが、出先で日本手拭い1本濡らすほどである。
扇子を手放せない。
服は買い換えるは、心臓に来るはで、もうてんやわんや。
(さらっと書いたが、心臓は結構苦しいのである。)
減量体勢に入ってはいるのだが
「やせて3ヶ月太って3日」
とはよく言ったもんで、効き目があらわれるまでしばらくは現状維持。
まー、年で新陳代謝も落ちてるし、こんなもんでしょう。
やれやれ、激減も体に悪いし、10年くらいかけてゆっくり落とすとすっか。

小学5年で初潮をむかえたとき、私は便器に向かって
「サギだっ!」
と叫んだ覚えがある。かなり重い方(大出血と激痛)だったので。
これが、子供を産まんがためにこの先何十年も続くのかと思うと、
「年1回でいいじゃん、こんなもの!」
と思った。
あらゆる生き物の中で、「万年さかり」なのは人間くらいだ。
しかも男子はその行為が快感だというではないか!
ズルイぞ、まったくもうっ!!
それでもって、結局子供は授からず、もう更年期である。
何としてくれよう、私の人生!

と、言いつつ、絵描きで文字書きの私は、心のどこかで
「でもこれ、ネタになるな。」
とほくそ笑んでいるのである。
ああ、職業病・・・(笑

            

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