日々是好日・身辺雑記 2006年5月
(下にいくほど日付は前になります)

 
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WHAT A WONDERFUL WORLD・この素晴らしき世界

ルイス・アームストロングの歌うこの名曲を、みなさまおそらくどこかで耳にされた
事があると思う。
私は英語はまるでダメ、ヒアリングはまーっったくダメなのだが、この曲は大好きだ。

東京人なら分かるかな、「アメ横(アメ屋横丁)」の年末風景みたいなの。
「あぁもう
サービスしちゃうッ、イクラ3箱2千円でいいよッ持ってけドロボー
という魚屋のおっちゃんたちの塩辛声にそ〜っくり(笑)。

映画「スゥイング・ガールズ」、この中でもんのすごい大イノシシとの遭遇シーンに、
この曲がとても効果的に使われている。(
ネタバレになるので絶対書けない・笑)
「オイオイ、こんなのありかぁッ!?」の連発なのだが、本当に細かいところまで
よく練られた爆笑もので、この映画はオススメ
である。

夏至も近づくとなると陽は長く、父がうとうと眠りに入る頃に、病室の窓からK大付属
幼稚舎の校舎の屋上あたりが橙色に染まり、寝ぐらにいそぐ鳥たちの影がスイースイ
と羽ばたいてゆくのが見える。

母は入院生活に必要なものを買いに1階の売店に行った。
カーテン越しに隣のベッドから、イヤホンがはずれたのか、ラジオの音がかすかにモノ
ラルで聞こえてきた、「
この素晴らしき世界・WHAT A WONDERFUL WORLD

英語なぞまるで分からないはずの私の心に、突然この歌の総てが分かった。

私は杖を左手に、ドイツ製のごついリハビリシューズをはいて、背筋を伸ばしカツカツ歩
く。面会警備係のおじいさんには「お世話様です」と言い、お医者さんと看護士さんには
「ありがとうございます」と言い、脳外科病棟の患者の付き添いの奥さんや子供さんたち
は会釈をかわす。

母が、76才になった母が、きっとすぐに戻ってくるだろう、なんせ江戸っ子だもの。
手際の早い、知恵のある優しい母だもの。

WHAT A WONDERFUL WORLD・この素晴らしき世界

泣いていいのはこの一瞬、涙ひと粒だけだ。

だけれど今、今この「一瞬」だけは。





「祝・笑点40周年!」

先週だか先々週だかは「笑点40周年&大喜利の司会が円楽師匠から歌丸師匠にバトン
タッチ」だったそうで、いやはやめでたいのであった。
番組タイトルが当時ベストセラー&TV化大ヒットの三浦綾子の小説「氷点」のパロディ
ーで、主役の美少女が内藤洋子で、彼女の歌う「白馬のルンナ」もヒットして・・・
と、アホなことばかり知っている私である。(しかし・・・
「ルンナ」って何よ?・笑)

座布団運び役の山田くんもかつてNHKのSFテレビ「少年ドラマシリーズ」の名子役で、
いっとき「ずうとるび」(ビートルズを逆さに読んだだけ)ちゅー4人組のアイドル歌
手で紅白にも出たことがある・・・なんて、ホント、飯のタネにもならんことばかり知っ
てるんだなあ、私(笑)。

その山田くんが運んでいる大きな
特製座布団は、お値段3万5千円の紫ちりめん、積み
重ねて座っても倒れないように芯は堅い綿、周りが柔らかい綿で、重さは2・5キロ!
「お〜い山田くん、全部持ってっちゃいなさい!」「は〜い!」のやりとり、10枚近
いときでも軽くひょいっと全部抱えてスタスタ歩いてる、山田くんは実は力持ちなのだ。
(やっぱり飯のタネにはならんなあ・笑)

さて、その座布団なのだが・・・

父の2度目の脳手術が成功した。
「水頭症」といって、豆腐のように水の中に浮かんでいる脳、その「水」がどんどん
増えて脳が働かなくなってしまう症状が出ていたのだが、いやはや現代の医術のすご
いこと、頭にボールペンの先くらいの小さな穴を開けて、細い管を通して余分な水を
腹膜
腔内に吸収させてしまう、というバイパス手術なのである。

手術が終わって麻酔がさめて、
「お父さん、信子(これ本名)よ、わかる?」
と話しかけたら、しばらくの沈黙の後絞り出すような声で
「・・・・あんた・・・いい人だ・・・・」
やったあ! 分かったじゃん!! ・・・・しかしその後がイカン。
「・・・・三尺四方の・・・
大座布団・・・・」

・・・あたしゃ「笑点の座布団」かいっ!!

交通事故で首骨折のヘッドギアみたいなのつけてるおじさんはいきなり
尺取り虫ッ!!」
と叫ぶし、某有名女優の息子さん38才はパジャマから麻のジャケットスーツに着
替えた、と思ったらパジャマに着替え、っと思ったらまた麻のスーツに着替え。

脳外科って結構にぎやかなんである。 笑ってる場合じゃないんだけどね〜(笑)。

PS. 心配してメール下さったみなさま、ありがとうございます。



5月某日「私の青空」

万葉集の中で一番好きな歌は5巻893番・山上憶良(やまのうえのおくら)」の

「世間(よのなか)を憂(う)しと恥(やさ)しと思へども
              飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば」
である。

「我はどこから来たか・我は何者か・我はどこへ行くのか」おおよそどの宗教も
哲学も、この3つの観点から成り立っている。
私にとってそれは長い長い父との確執の繰り返しだった。
「親子モード」に入ると互いが互いにぎこちなく緊張してしまうのだ。

私と父との関係は、理工系(ロゲルギストの「物理の散歩道」とかNASAとか)、
あるいは古典文学や落語の話題で、どこかの大学にいる「ヘソマガリ教授と、彼
の研究室に出入りするこまっちゃくれた助手」というスタンスが一番上手くいく。

その父が三宅島の路上で倒れたのは4月19日の朝のことである。
島の人に発見され、ヘリコプターでヘリポートのある都内の大きな病院に搬送さ
れたのが同日の昼過ぎだった。

脳挫傷、左半身の麻痺、右もほとんど動かない。 意識の混濁が続いている。
集中治療病棟から一般病棟に移れたのは24日目、昨日のことである。

養母とそのパートナーの介護がやっと終わり、あとはドッコイ(一人っ子)のご
両親と父と母、実質6人の親を持った私にとって、人生の前半は「絵を描くこと」
後半は「夫婦ふたりの両親の介護のため積極的に待機すること」となるだろう。

心がくしゃくしゃになってしまうことなぞしょっちゅうだ。
しかし私は5月5日、厚木でミュージカル劇団「Step ONE」の公演「とびきり
素敵なこと」を見て、くしゃくしゃな心を洗われるような感動にひたり、そして
そのあと「サクラ大戦大好きでミュージカルも大好き」なみなさんとお茶会をし
て、(年齢も・職業もまったく違うところが新鮮である)その洗い上がった心の
真っ白なシーツを朝の澄みきった青空にパンッ!と広げてそよ風のなかで陽に当
てるような楽しさとうれしさに満たされたのである。

世の中は、嫌なこと、面倒くさいこと、迷うことがいっぱいある。
しかし、だからこそ「心を洗われる」ような至福の時空間を過ごせることも沢山
あるのだ。

ああ、とーちゃんの娘に生まれて幸せだなあ、私。
とーちゃん、頼むから目を開けて、私を見て。
私の名前を呼んでくれ。



5月某日「白いツツジが一番甘い」

しかし漢字検定で出たら絶対書けないし読めないぞ〜「躑躅=ツツジ」なんて。
・・・・・老眼の検査にも使えそう(笑)

江戸っ子でツツジといえば「根津神社」である。 今年は行きそびれてしまった。
初めて母とふたりで見に行ったのは、まだ20代の前半だったか、とにかくウチ
の母は「遊びをせんとや生まれけむ」な性格なので、庭園や美術展やお芝居には
いつもお供役でくっついていった。
だからといって着飾りもせず、おご馳走食べるでもなく、フツーにそこらへんの
ラーメン屋に入って、堅やきそばかタンメン食べて、
「ああ楽しかったね〜、ご馳走様でした。」と帰るだけなのだが。

おご馳走といえば。
4〜5才くらいの頃かなあ、祖師谷の団地に住んでいて、そこには道路沿いに紅
のツツジの植え込みがあった。 が。 植木屋さんの手違えで、白いツツジが何
本か混じっていた。

ツツジの蜜って、吸ったことあります?
萼(がく)からそぉっと「花としべ」を抜いて、その根元をチュっと吸うの。
甘いです。

私たちは、貧乏でもなく裕福でもなく、年なんか関係なく遊びまわる「なかよし
チビっ子団」だった。 ふたつ年上のアッコちゃん、ひとつ年上のシンヤくんと
ナオミちゃん、ひとつ年下のケンちゃん、シンヤくんの妹のミホちゃん。ふたつ
年下のサブちゃん。

おやつが無かったわけではない、ただ「チュッ」という一瞬の甘さが嬉しくて、
みんなで花を摘んでは蜜を吸っていた。

そのうちヤンチャ坊主のシンヤくんが
「白いツツジの方が甘い!」
と言い出して、みんなで白いツツジの木に群がってチュウチュウやっていた、ら。

近所に住むおじいちゃんに怒られた(笑)。

「あたしたち大人になったら、広いお庭のある家に住んで、白いツツジいっぱい
植えようね。」という作戦会議?の誓いの元に・・・・みんなどこへ越していっ
たのだろう。(何しろ祖師谷の団地は間取りが狭かったのだ)
マンションだろうか、一戸建てだろうか。 庭に白いツツジは咲いているのだろ
うか?

現在私の両親は、同じ市内の別の団地に住んでいる。 晴れた日にはリハビリを
兼ねて、ゆっくりゆっくり、杖をつきながら歩いて行く。(ゴハンたかりに・笑)
道路沿いに、紅と白のツツジが咲いている。
そっと摘んで、蜜を吸ってみた。
紅のツツジも、白いツツジも、どちらもおんなじ、甘かった。



5月某日「なんだか最近ちょっとバタバタ」

してるものですから、書き込みのペースやメールのお返事停滞しております。
申し訳ない! もちょっと、待ってね〜。



            

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