2003.8.27 掲載

リート・オラトリオ研究部 友の会 だより  2003年 7月1日 号

 

 2003年度BDGコングレスに出席して               川 村 英 司

今年のコングレスは5月2日から4日までKarlsruheの音楽大学(Staatliche Hochschule für Musik Karlsruhe)で開かれました。小さいながら、(と言うと学生の将来を全く考えずに大学の経営面だけを考えて、彼等の将来の失業を手助けする日本の高等教育機構に無感覚になっていると言われそうですが)とても設備が揃い、自然環境と合わせて素晴らしい環境で勉強できる学生達を羨ましく思えるほどのところです。

それに先立つ4月27日Hamburgに飛び、Ocker先生に出迎えて頂きました。ハンブルグ・シティー・マラソンのため回り道を強いられ、ついでだからと、かつての先生の伴奏者に挨拶のために寄り道したりして、お昼にLübeckにつきました。先生の娘さん夫婦がLübeck に住んでおり、昼食をよばれました。午後は市内見物をしました。

早速翌日の28日朝9時にLübeckにあるBrahms Institutを訪ね、AutographやKorrektur、初版、再版などを見ることができました。そこでBrahmsについて話をしているうちに、ヴィーンにはないStichvorlageやKorrekturなどがあり、今後の参考になる資料が色々とあることがわかりました。何日間か滞在して調べなければならないようです。

このBrahms Insutitutは色々なものを集めていた個人が寄付したものだそうです。恐らく公共の図書館などにあった物であれば、戦時中にアメリカ、イギリスの無差別爆撃で焼けてしまったり、疎開先で戦勝国にもって行かれたりしてしまっていたでしょう。

第2次世界大戦中のアメリカやイギリスの爆撃のひどさは想像を絶するような絨毯爆撃だったそうです。先ず焼夷弾の絨毯爆撃で木造住宅など燃えるものを全部焼き尽くし、(其の焼夷弾の油性物質をかぶり焼け爛れた一般市民のケロイドのひどさは其の時代の人は忘れていませんし、語り継がれているようです。)次に爆弾で焼夷弾で焼けなかった物を目茶目茶に破壊したのです。文化財など町全体を壊滅させたのです。

今回のイラク戦争でメソポタミヤ文化を滅茶苦茶にしたのもアメリカならではの他民族文化を破壊するやり方です。バクダット博物館の略奪も背後にはアメリカがあるのではないかという憶測記事もあながち嘘とも思えず、なるべくしてなったものと思います。

留学中の45年前(1958年)の夏休みに旅行したドイツ、特にケルン市内の瓦礫の山を思い出しました。戦闘に関係のない一般市民をどれだけアメリカは殺戮したか、日本も同様です。2度までも原爆を広島と長崎に落としたアメリカを絶対に許せないと僕は心の底から思っています。ニューヨークの貿易センターを潰された何十倍の事を米英は我が国及びドイツにしたのです。(しかも9月11日に貿易センターの中には一人もユダヤ人はいなかったと言う噂が広がっています。)

坊主憎けりゃ袈裟までもと言うのが米英の戦略です。文化財もへったくれもないのは今回のイラク戦争でも証明されていますが。古い兵器を10数年も貯蔵しておくわけにはいかないので何年かに一度は使ってしまわなければならないのです。しかも新しい兵器の実験もしなければなりません。誤爆ではなくて、未完成兵器の実験なのです。その良い例がクラスター爆弾です。アフガニスタンでは30%以上が不発弾になり、地雷化し一般市民が被害を受けています。今回の同爆弾の不発弾のパーセントは大分減った様ですが完全ではありません。しかもそれが使用を禁止されている大量殺戮兵器なのですが、米英にとっては「他人は裁くが、自分はどんな卑怯な事をしても勝ちさえすれば良い」と言う傍若無人ぶりです。全くイスラエルと同じです。イラクの大量破壊兵器は未だに見つからず、今度はシリアに隠したとの事。言いがかりもよいところです。

Lübeckの復興と破壊後の様子の写真などを教会で見て、何がともあれ "No War!" と世界中で叫ばなければ原子爆弾で世界は滅びてしまうでしょう。劣化ウラン弾をアメリカは今回も使っているのです。原爆は今や抑止力ではなく、アメリカは使用しようとしているのです。綺麗な、放射能を全く出さないウランや水素を使った爆弾は存在しないのです。

 

市内見物の話から反戦主義の表明になってしまいましたが本題に戻ります。

たまたまOcker先生が初版と再版を比較して違いを見出し、Brahmsが使ったと思われるHöltyの詩集などを見、Friedlaenderが書いたBrahms Liederを読んで半分納得したりして、時代の変化も窺い知れたような気がしました。一日色々なものを見て、次回の訪問を約束してホテルに戻りました。夕食は1400年代に出来た倉庫がレストランになっているところで食べました。アメリカより200年近くも古い歴史があるのです。

次回はきちっと問題点を整理して、滞在したいと思います。

翌日は7時に朝食で8時にホテルを出てKielに向かいましたが、途中先生が住んでいた町と北ドイツの風景を見せたいと云われ、回り道をしました。11時にKiel大学のMusikwissenschaftliche InstitutにあるBrahms新全集を編集している所を訪ねました。新全集はHenle社から出版されていますが、歌曲はまだ出版されていません。Lübeckもそうでしたが、ここでもとても親切に対応してくれ感謝しています。色々な質問はメールで出来るようになりました。スタッフの一人がオーストリア国立図書館で僕を何度も見かけているとの事で、とても和やかに話が出来ました。「この機会に是非HamburgのStaats‐ und UniversitätbibliothekのHandschriftを訪ねてきなさい」と、早速AbteilungのLeiterと電話で話をつけてくれ、今夜中にメールで見たい曲をLeiterに知らせておけば、翌30日の朝から比較の作業を一日させてもらえるということになりました。夜Bremenに戻り、翌朝早起きをして朝8時の汽車でBremenからHamburgに向かい、注文した自筆楽譜や、校正刷りなどを見て夜Bremenに戻りました。ここも紹介者が特別な人だったせいかとても親切で、貴重な資料を一日中眺める事が出来ました。

5月1日のお昼にKarlsruheに向かいましたが、其の前に児玉君を1時間ほど訪ね、奥さんと赤ちゃんに会って来ました。とても元気そうでした。

 

いよいよ2日から年次総会で、そこで聴講したものを先ず列挙します。

5月2日は 9.00 -10.30 Werkstatt Klangkontakttraining

11.00-12.30 Werkstatt Ta Ke Ti Na

昼食後は 14.00 開会式

14.30 - 15.30 Hauptvortrag Von der "Jünglingswonne" zum "Greisengesang" - Vokale Lebensstationen Prof. Dr. Michael Stegemann

16.00 - 16.45 Singen im Kindergarten Prof. Dr. Phil. Peter Brünger

17.00 - 18.30 Werkstatt Gesang Prof. Jakob Stämpfli

20.00 より  Karlsruheから少し離れた所にあるEttlinger SchlossでHans Christoph Begemann(Bariton)とThomas Seybold(Piano) のSchumann‐Heine‐Abendがありました。彼は大阪のSchubertコンクールで一位になった人ですが、その前に志賀高原の「リー研友の会」の合宿に参加して、Ocker先生のレッスンを毎日うけて喉の硬さをほぐしていた事を思い出しました。

現在は大変な有望株だそうですし、本当に良く育ったなーと思いました。

リサイタルの後に彼を囲んで食事をしたためにホテルに着いたのは1時でした。

翌朝は8時の朝食で(Ocker先生と一緒でなければ寝坊した事でしょう)

9.00 - 9.45 Stimmbildung während der Mutation Dr. Michael Fuchs

10.00 - 11.30 Kinderstimmbildung - Demonstration und Diskussion

Brigitte Siebenkittel und Dr. Winfried Adelmann

12.00 - 13.00 Jugendchorarbeit Uli Führe

14.00 - 15.30 Werkstatt Gesang Krisztina Laki と Jakob Stämpfli の公開レッスンがありましたが、2日にStämpfliさんを聴いているのでLakiさんを聴きましたが、途中でStämpfliさんに移りました。彼のレッスンは25年ほど前の第一回国際声楽家・声楽教師連盟の会議で共に公開レッスンを受け持ちましたので、彼のレッスンの素晴らしさはわかっていましたが、とても素晴らしいレッスンをしていました。

16.00 -17.00 Podiumsgespräch : Künstlerkarrieren

Kammersängerin Prof. Hilde Zadek und Prof. Thomas Quasthoffの話がありました。

とても印象深い話でした。

17.15 - 19.00 Mitgliederversammlung があり所謂総会で役員選挙もありました。

 夜は食事会がありましたが、失礼して昨日に続きBegemannがSchubertの "6 Heine Lieder"をEttlinger Schlossで歌うので、Ocker先生ご夫妻とそちらに行くことにしていましたが、いささか草臥れてきたので休養する事にしました。

 4日は8時に僕のトランクを駅のコインロッカーに入れておくことになり、7時半に朝食でした。8時半から先生の荷物を車に積みこみ、先生ご夫婦はコングレスの後でイタリア旅行をされますので、会が終わってから出発の準備をしたわけです。

9.00 - 9.45 Singen im Alter " Könen wir ,,dem Schicksal in den Rachen greifen"?

Prof. Dr. Med. Wolfram Seidner

10.00 - 11.00 "Anti Aging" für die Stimme?

Leitung: Prof. Elisabeth Bengtson-Opitz

11.30 − Preisträgerkonzert が例年の様にありましたが、僕は13時7分の汽車に乗る事にしていたために、途中で失礼して駅に向かいました。

 以上が今年のBundesverband Deutscher Gesangspätagogenの様子です。個々の講座の内容については折に触れて、感想を含めて書きたいと思っておりますが、取り敢えず全容をお知らせ致しました。

 2002年度リート・オラトリオ研究部友の会 会計報告

 

 2002年4月1日から2003年3月31日までの会計報告を下記の通り報告します。

収入  2001年度分繰越金    285,542-      

連絡費(振込手数料を除く) 116,350-          

利息            152-  

収入合計         402,044-      

支出  コピー代  18,278-

送料     32,145-

文房具類  3,517-

献花代    40,000-

繰越金    308,104-

支出合計 402,044-

献花代について:本年1月4日に、リー研顧問の野口玲子先生のお母様が、続いて同月27日にお父様がご他界なさいました。リー研友の会として、それぞれに献花致しました。

送料について :送料には、郵便、宅配便、銀行振り込み手数料、交通費を含みます。

2003年度分のリート・オラトリオ研究部友の会連絡費(本年度分1,000円)を集めますので、下記の方法のいずれかにてお支払い下さるようお願いします。複数年度分まとめても歓迎します。

1. 直接手渡し(清田真理子)

2. 郵便振込 口座番号00150−0−71824 加入者名:リート・オラトリオ研究部友の会

3. 銀行振込 東京三菱銀行八幡支店 普通預金口座番号0764574 リート・オラトリオ研究部友の会 清田真理子

郵便振込の用紙を同封致しましたのでご利用ください。既に今年度以降分をお支払い下さった方には、同封致しませんでした。なお連絡費をお支払いいただけない場合、他の会員の方々に負担がかかることになります。長年にわたりお支払いいただけない場合、『リート・オラトリオ研究部友の会だより』の発送を控えさせていただいております。

 上記の会計報告、及び連絡費に関するお問い合わせは、清田真理子までお願いします。

 

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♪今年もリー研友の会主催の夏合宿が催されます。詳細は同封のプリントをご覧ください。              

 

 編 集 後 記

 

ひと雨ごとに紫陽花の色もあざやかになってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?

今年はリー研創立の年から数えて40年目です。クラブとしてのリー研が存在しない今は、夏の合宿が唯一実質的なリー研としての活動になります。40年だからといって合宿で何か特別なことをする計画はありませんが、今も40年前も変わらない情熱を持って常に私達をご指導下さいます川村先生のもと、志賀高原に集いmusizierenしませんか?みなさまのご参加をお待ち申し上げます。

リー研の顧問として長きにわたり後進の指導にご尽力くださいました野口玲子先生のご母堂様が1月4日に、ご尊父様が同月27日にご逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。

『友の会だより』ではみなさまのご寄稿をお待ちしております。ご意見、ご要望などもございましたら、どうぞお寄せください。                          

担当あ

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