新宿御苑の寒桜 2002.3.14撮影

 

酒なくて 何の己が 桜かな

 

今年は例年よりも桜の開花が早いようですね。

桜を待たずとも、すでに梅が開花の時点でうきうきしておりますが・・・(笑)

 

提重(手提げ重箱)に赤毛氈(もうせん)のお花見にも憧れますが・・・

幸田露伴がしたという摘み草遊びのように、ちょっと美味しいものを持ち

ひょいと気軽に山桜でも見に出かけたいですね?

(露伴は晩年、友人と共に摘み草遊びをしたと随筆に書いたそうで

瓢箪に酒を入れ、肴には良い味噌を良質の杉の薄板に挿んで炙ったものを

用意して、摘んだ野蒜“のびる”につけて楽しんだようです。

参考資料:獅子文六「食味歳時記」

 

お花見気分が盛り上がりそうな、

簡単で目先が楽しそうなものを四点ご紹介させて頂きます。

 

「筍羹」

(材料)

筍、白身魚のすり身、生桜海老や干し椎茸など、

だし汁、醤油、みりん、酒、くず粉(片栗粉でもOKです)、

あれば山椒の実(又は木の芽など)

 

(作り方)

下準備した筍を縦半分に切り、中をペティナイフなどでくりぬきます。

くりぬいた所へ、白身魚のすり身を詰めます。

(写真ではすり身に生桜海老と、戻してから醤油とみりん、酒で甘辛く煮て

刻んだ干し椎茸を混ぜ込んでみました。)

これを湯気が出ている蒸し器で15分くらい蒸します。

その間に、あんを作ります。だし汁に醤油、みりん、酒を加え

お蕎麦のつけ汁より濃いくらいの味にして、

少々の水で溶いたくず粉(又は片栗粉)を加えてとろみをつけます。

蒸しあがった筍をお皿に盛り、あんをかけて山椒の実を飾って出来上がり♪

 

筍羹(しゅんかん)とは江戸の頃に中国から伝来した禅宗の普茶料理(精進料理)の

一種だそうで基本は筍料理のようですが、必ずしも筍を使わなくても良いようです。

鹿児島にも筍羹(しゅんかん)というものがあって、それは猪や豚肉と野菜を使った郷土料理だそうです。

元々は「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」の「羹」という事で、

温かい汁物という意があったようです。

 

時間がありましたら、筍だけ先に炊いて下味を含ませてから、

詰め物をして蒸していただく方が、より美味しいと思います。

写真では撮影用ということで、丸ごと盛り付けましたが、

実際は食べやすい大きさに切り分けて盛り付けをして頂いた方が食べやすいですね。

 

「生麩田楽」

(材料)

生麩、甘味噌、木の芽、紅花油など揚げ油

 

(作り方)

生麩は適当なサイズに切り、紅花油など揚げ油でさっと揚げます。

甘味噌をかけて、木の芽を飾って出来上がり♪

 

田楽というとまずは豆腐を思い浮かべますが、ちょっとおすましして生麩にしてみました。

今回生麩は京都の「麩嘉」さんの「あわ麩」、

甘味噌は愛知の「はと屋」さんの「こだわりの甘味噌」を利用しました。

 

創業慶応年間(1865年)の「麩嘉」さんは麩饅頭で知られていますが、今回使用した生麩も

皇室の方々が御所に御滞在の際の食膳には、必ず上がるという御用生麩だそうです。

食品製造への井戸水使用を禁止された時に、井戸水と京都の食文化を新聞に訴えてまで

井戸水へのこだわりを守り抜いた六代目の跡を現在は七代目が引き継がれています。

とっても柔らかくて、パッケージから出すのが大変なくらいです。

なんとも言えないもちもち感がたまりません。

残念ながらネット通販はなさっていらっしゃらないようですが、

食品専門店「紀ノ国屋」さんや有名デパートなどでお取り扱いがあるようです。(紀ノ国屋さんで340円)

 

創業文久元年(1861年)の「はと屋」さんは名古屋名物味噌煮込うどん店や、

料亭などプロに愛用されている味噌や醤油を造られている蔵元です。

今回のこだわり甘味噌は、桶から掘り出した粒のままの3年熟成の豆味噌「参年仕込」に、

ミネラル豊富な「きび砂糖」、「本みりん」、「アカシヤ蜂蜜」と自然な素材だけが加えて造られているそうで

やわらかい甘さが後を引きます。時々つぶつぶとお豆の形が残っているのですが

これがまた味わい深くて美味しいです。

野菜スティックにつけたり甜麺醤の代わりに調味料としても重宝します。

(180g:350円、東京の方は吉祥寺の「soybean farm」さんで購入できます。

ネット通販もなさっています。)

 

田楽・・・田植えなどの時に神に奉納する舞の一種だそうで、

その踊りの形に豆腐に串を刺した形が似ていた事から、

豆腐に味噌をつけて焼いたものを田楽と呼ぶようになったそうです。

(田楽が猿楽に猿楽が能に、能が歌舞伎にと進化していったとの事です。)

田楽の女房詞がおでんだそうで、焼く田楽から煮込み田楽

=煮込みおでんが生まれ、更に醤油味で煮込む関東炊きが生まれたそうです。

 

「鶏モモ肉の北京ダック風」

(材料)

鶏モモ肉、サンチュ、長葱、甘味噌(上記甘味噌)、生春巻きの皮、

塩、胡椒、片栗粉、酒、紅花油など揚げ油

 

(作り方)

鶏モモ肉は酒少々をふり、両面にしっかり塩、胡椒してから

たっぷりめの片栗粉をまぶしてかりっと揚げ、適当な大きさに切ります。

長葱は白髪葱にして、サンチュは冷水で洗ってぱりっとさせます。

北京ダックのように生春巻きの皮でサンチュ、葱、鶏肉、甘味噌を巻き

召し上がってください♪

 

今回は鶏肉の味付けを塩胡椒にしてみましたが、お醤油、生姜などで味をつけ

竜田揚げにして頂いても美味しいと思います。

またモモ肉ではなく、鶏肉の皮だけをぱりぱりに揚げたものだとより食感が北京ダックに近づきますね。

 

「桜鮨」

(材料)

桜の花の塩漬け、鮨飯(米、米酢、砂糖、塩)、

大葉、ごま、山葵、

鯛、かんぱち、サーモン(お好みの刺身でどうぞ)

 

(作り方)

固めに炊いたお米で鮨飯を作ります。お米を炊く時にさっと塩を落とした

桜の花の塩漬けを数個入れて、混ぜて炊くと香りが良いです。

(今回は二合で5つくらい入れて炊きました。炊き上がってから

茎の部分は外して頂くと、口にあたりません。)

炊けましたら、合わせておいた米酢、砂糖、塩を加えて鮨飯にします。

鮨飯にごまを混ぜ、丸くにぎります。

(ラップに乗せ、きゅっと絞ると楽に丸く出来ます。)

山葵、大葉、鯛などお好みのネタと塩抜きした桜の花の塩漬けを乗せ

軽くにぎって出来上がり♪

 

桜ご飯のレシピは良く見かけますが、酒肴になるように手毬鮨にしてみました。

鯛の笹漬けを使いたかったのですが、今回残念ながら手に入りませんでした。

大きいと食べづらいので、小さめに作るのがおすすめです。

 

「桜割り」

麦焼酎のお湯割り+塩漬け桜(塩をさっと落としたもの)

 

二日酔ひ ものかは花の あるあひだ

・・・と芭蕉翁は詠んでいますけれども、

二日酔いや悪酔いには注意して(と自分に言い聞かせております)

楽しいお花見をしたいですね。

 

お祝いの席に出される桜湯(桜の塩漬けに熱湯を注いだもの)は

二日酔いに良いそうです。桜鮨を作ってくださって、桜の塩漬けが余りましたら

お試しになってみてください。もちろん、二日酔いでなくても趣のある味わいです。

 

 

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