くるみ割り人形(牧阿佐美バレヱ団)

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2006年12月15日(金)〜17日(日) 

ゆうぽうと簡易保険ホール

 

作曲:P.I.チャイコフスキー

演出・改訂振付:三谷恭三(プティパ,イワノフ版による)

美術:デヴィッド・ウォーカー     照明デザイン:ポール・ピヤント

指揮:デヴィッド・ガルフォース    管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団     合唱:東京少年少女合唱隊

  

 12月15日

 12月16日

12月17日
金平糖の精 橋本尚美 笠井裕子 伊藤友季子
雪の女王 佐藤朱実 吉岡まな美 青山季可
王子 逸見智彦 京當侑一籠 菊地研
クララ 野口朝子 西櫻子 鈴木舞
シュタールバウム氏 森田健太郎 保坂アントン慶 逸見智彦
シュタールバウム夫人 吉岡まな美 坂西麻美 吉岡まな美
フリッツ 山田翔 水井駿介 高谷遼
ドロッセルマイヤー 本多実男 小嶋直也 本多実男
ドロッセルマイヤーの甥 清瀧千晴 細野生 清瀧千晴
祖父 山内貴雄 秋山聡 山内貴雄
祖母 横山薫 土田さと子 横山薫
コロンビーヌ 伊藤友季子 青山季可 奥田さやか
ハレーキン 中島哲也 坂爪智来 中島哲也
ヴィヴァンデール 森脇友有里 小松見帆 安部里奈
おもちゃの兵隊 上原大也 伊藤隆仁 上原大也
執事 鷲崎圭一  岡田幸治
くるみ割り人形 邵智羽 今勇也 邵智羽
ねずみの王様 塚田渉 徳永太一 塚田渉
スパニッシュ 坂西麻美  邵智羽
加藤裕美  山中真紀子  坂爪智来  石田亮一 
坂西麻美  今勇也
柄本奈美  金森由里子  藤井学  高鴿  
坂西麻美  邵智羽
加藤裕美  山中真紀子  坂爪智来  石田亮一
アラブ 吉岡まな美  保坂アントン慶 佐々木可奈子  保坂アントン慶 吉岡まな美  保坂アントン慶
チャイナ 森脇友有里  上原大也 小松見帆  上原大也 森脇友有里  上原大也
トレパック 塚田渉  徳永太一  清瀧千晴 中島哲也  伊藤隆仁  細野生 塚田渉  徳永太一  清瀧千晴
棒キャンデー 橘るみ  奥田さやか  小橋美矢子 青山季可  伊藤友季子  坂本春香 橘るみ  奥田さやか  坂本春香
花のワルツ(ソリスト) 青山季可 小嶋直也
笠井裕子  伊藤友季子  坂本春香  京當侑一籠  今勇也  中島哲也
佐藤朱実  逸見智彦
橋本尚美  坂梨仁美  海寳暁子  塚田渉  徳永太一  菊地研
田中祐子  小嶋直也
佐藤朱実  笠井裕子  坂梨仁美  京當侑一籠  今勇也  中島哲也

 

小嶋さんが3日とも出演するとわかったので,3日間行きました。
行くまでは「ここの演出つまんないんだよねぇ。3日見るのはしんどいなぁ」という心境だったし,初日を見終えた時点でも同じ気分だったのですが・・・3回続けて見るうちに,けっこう愛着が湧いてきちゃったみたいです。「はあ?」な演出や装置に反応するエネルギーが尽きてきたのかもしれない。あるいは,「こういうもんだ」という悟りに至ったと言うべきでしょうかね?
演出意図が今ひとつ不明ですし,盛り上がりませんし,2幕にまで大量の子役が登場しますが,アットホームでほのぼのした悪くない演出のような気がしてきましたよ。うん。(1幕1場の幕切れが残ったワインで乾杯する執事たちであるとか,全然怖くも不気味でもないネズミちゃんたち(しっぽにおリボンつけてるの♪)とか,趣があって好きです〜)

 

初日の雪の女王は佐藤さん。「庶民的に可憐」なタイプだからどうかなー? と思っていたのですが,さすがはベテラン,それなりに女王様になっていました。
「寒い冬の国の女王様」的エラソー感はなかったと思いますが,クララちゃんが最初に訪れた国で温かく歓迎される・・・という意味では,全然問題ないです。というか,適任です。優しそうで,親しみやすくて,配慮の行き届いた女王さま。踊りは安定していて,音楽的でした。

金平糖の橋本さんに関しては,佐藤さん以上に,どんなもんかなー? という気分でした。安定・信頼・堅実,脇を固めるバレリーナだと思っていたので。
でも,こちらもさすがにベテラン,それなりにキラキラ女王様になっていましたし,切ないような色気がありましたね〜。濃いめのピンクの衣装が,金平糖ではなくて,ロゼワインみたいに見えました。踊りは,こちらも安定していて,音楽の見せ方が上手。

逸見さんは,いつもどおり優美な王子様。
去年のほうが踊りは好調だったように思いますが,とにかくエレガントですし,白系キラキラの衣裳も桃色+臙脂色の衣裳もすばらしく似合っておりました。

 

2日目は,金平糖の笠井さんがとーってもよかったです。前から,「いいなー」とは思っていたのですが,初めて主役で見て,いっそう気に入りました。
アダージオは,パートナーシップの問題なのか若干「ん?」がありましたが,あとは安定していたと思いますし,踊りの雰囲気がとても好きです〜。優等生的鷹揚とでも言いましょうか,良家の若奥様風におっとりしっとり落ち着いた感じに見えて好ましいです〜。
身長があるし,肩から胸の辺りのラインがまろやかで女らしさ全開だし,堂々と美しい大人のプリマでした。

雪の女王はおなじみの吉岡さん。この方のチュチュ姿は私の好みではないのですが,硬質な大人の色気があって,よかったと思います。

京當さんの主役を見るのは初めてでした。
頭は小さく肩幅は広く背も高いダンスールノーブル体型ですから,見る前から王子合格なわけですが,実際見たら,さらに高得点。
所作もそれなりに王子になっているし,サポートがよいですね〜。グラン・パ・ド・ドゥで金平糖を横抱きにして振り回す動き(無粋な説明ですみませんです)がダイナミック&安定。二人とも大柄だから,見応えがありました。
ソロも,悪くはないんじゃない? 逸見さんのようにはいきませんが,主役を踊り始めたころの逸見さんも今ほど踊れたわけではないから,10年後にはもしかして・・・と考えることにします。
あ,ヘアスタイルは改めたほうがいいと思いますー。体育会系? で王子らしくないんだもん。

 

最終日の金平糖の精は伊藤さんでした。
ほっそりとして儚げな感じと若々しい愛らしさが同居している感じ。(ジゼルを見たいかも〜) 不用意にさわると崩れそうな精巧な細工の砂糖菓子みたいだなー,と思いました。
お菓子の国の「女王様」までいっているかどうかはわかりませんが,姫オーラは十分で,クララの憧れの存在にふさわしい。腕を広げたポーズには,「あ,なるほど。今日の主役はこの人なんだ」と頷けるものがありました。

雪の女王は青山さん。
『白鳥の湖』で主役を見たときも思ったのですが・・・この方は「押し出しがよい」という感じですね。お姫様にはおさまりきれないと言えばいいのかしらん,酒井はなさんなんかと共通する「なんだか迫力あるよねー」という感じを受けました。
踊りは上手で安定。

王子の菊地さんは,髪を撫で付けるとか流し目をするとか,そういうモノは封印して(←当たり前ですね。すみません),神妙に王子を踊っておりましたし,ちゃんと王子に見えました。
サポートは明らかに上達。手の表情は(『リーズ』のときに感心したのに続いて)エレガント化著しい。ソロに「ナルシー?」が漂うのは決して悪いことではないと思いますし,魅力的なダンサーですよね〜。

 

コール・ド・バレエは去年よりはよかったと思います。(雪の場面で,舞い散る雪らしい感じがしたのでほっとした) 
ただ,2階席から見るとやはり・・・ではありました。プリンシパルやソリストのキャスティングとの兼ね合いで,日替わり状態なのがいけないのでしょうか,フォーメーションがけっこう崩れていましたし,身体の向きなどもばらついていたような。

ソリストは,概ね,初日+最終日と中日とのダブルという感じ。初日のほうがファーストキャストなんだよね,という印象でした。

特に印象的だったのは,ドロッセルマイヤーの甥とトレパック(の脇)で出ていた清瀧さん。
甥のほうは去年も見て「おお,きれいに踊ってるなー」だったのですが,今年はさらにヴァージョンアップ。きれいなのはそのままに「おおっ,ジャンプが高くなったっっ」でありました。
トレパックのときは,跳躍の高さと自然な開脚,そして動きのキレのよさで一番輝いていました。特に初日は真ん中の塚田さんが精彩を欠いたこともあって,「一人勝ち」状態。でもって,先輩お2人も彼の踊りに刺激を受けたのでしょうか,最終日は3人ともダイナミックで,大きな拍手が湧いておりました。
プログラムを見ると写真が一番最後に別扱いで載っているので,まだ団員ではなく生徒さんなのだろうと思いますが,将来が楽しみです〜。(身長が伸びますようにっ)

 

あとは概ね登場順にいきますが・・・まず,「逸見さんのパパは怖かった」の件。
シュタールバウム氏は日替わりだったのですが,森田さんは「かっこいい」に傾斜,保坂さんは「お父さん」が強く,逸見さんは「おきれい」でございました。なのですが,くるみ割り人形を壊した(ようには見えにくい演出なんだけどー)フリッツを叱るところは,意外にも逸見さんが一番怖い。額に青筋立てて神経質に怒る感じで,私が子どもだったら,ああいうお父さんはイヤですわ。
シュタールバウム夫人は,どちらも長身で美しく,たいへん結構でした。

クララ役は,皆さんお上手で愛らしかったですが・・・金曜日の方は,プロポーションが伸びやかできれいでした。脚も腕も首も長いし,身長は155センチくらい? もっとあったかも? 小学6年生だそうで,「発育いいなー」と感心してしまいましたよ。土曜の方は,中学1年生だそうですが,小柄でほっそり〜。優等生っぽい感じの方で,踊りも安定。日曜の方も,小柄でほっそり〜の中学1年生。この方は演技がお上手で,美人になりそうなお顔立ちでした。
フリッツも日替わりなのですが,ほかの日のお友達の「男の子」役と兼務してるみたいだし,「あ,このコ去年も見た」もありました。やっぱり女の子と男の子では競争率が天と地ほど違うんでしょうねえ。

ドロッセルマイヤーに関しては,本多さんのほうが「なんか怪しげな雰囲気が・・・」で,いかにもドロッセルマイヤーらしいです。鼻をつけたりもしているし,マント捌きも凝っているし。
小嶋さんは,白いカツラと片眼アイパッチがなぜか似合って,そりゃもうかっこいい。前回は姿勢のよさと颯爽たる歩き方に惚れ直しましたが,この日は白い手袋に包まれた手の動きが印象的。去年は,身体の前で手を重ねる(握る?)動きが散見されて,あのー,従僕かよく言っても執事に見えちゃうんですけどー? だったのですが,今回はそういう不用意な仕種はなかったし,「魔法を使う」関係のマイムがとーってもきれい。ああ,これは「王子の手」だ,これは「ダンスールノーブルが踊るドロッセルマイヤー」なんだ,と思いました。

1幕の人形たちは・・・私には人形振りの良し悪しはわからないので省略。
初日にコロンビーヌを踊った伊藤さんに「おお,やはり華があるな」とは思いました。

 

スペインの真ん中は男女ともダブルキャストの予定だったのですが,ソリストのどなたかの体調の関係なのでしょうね,2日目の予定だった橋本さんが花のワルツに回り,3日とも坂西さんが踊りました。
彼女は「優しいお姉さん」タイプなので,スペインの颯爽とは違うような気はしますが,大柄な身体が真紅の衣裳に映えて美しかったです。男性は,今さんのほうが,見得の切り方がかっこよかったかな。

吉岡さんのアラブは初めて見ましたが,よいですね〜。ちょっと安定に欠けたところはありましたが,雰囲気が妖艶かつクール。アラビアの舞姫ではなく,女王様に見えました。
保坂さんは,サポート名人ぶりを遺憾なく発揮。(・・・ちょっと増量したみたいですねえ)

チャイナは両キャストともさほどではなかったです。えーと,「指を立てる」がイマイチ決まらない感じ?
(ところであの形で中国を表すのは,どういう故事来歴によるものなのだろう?)

棒キャンデーは,奥田さんってほんわかしてかわいらしい踊りなのね〜,というのが大きな発見。真ん中の橘さんは,うーむ,ちと「作りすぎ」かなぁ? 
2日目の中心は青山さん。雪の女王同様「押し出しのよさ」を感じました。「かわいいだけ」ではないようで,貴重な資質ですよね〜。

ケーキボンボンは,初日と2日目は,若手の団員による8人の踊り。最終日は,黄色〜オレンジのチュチュで小学生? 12人が登場しました。
どちらにせよ,あまり面白いものではありませんなー。

 

最後に花のワルツの話ですが・・・小嶋さんが踊らない土曜日に,,全体をゆったり〜と眺めて思ったのですが,魅力的な振付ですね。コール・ドは女性12人で,ソリストのほうは男女4組で,しかもそのうち1組がリーディングカップルになっているから,かなりフォーメーションに変化が出るのですよね。正面を向いて跪いた男性が両手を揃えて前に突き出す動きなど謎の振付もありますが,全体として見応えあるな〜,と思いました。

初日の小嶋さんのパートナーは青山さん。小柄な方だからカップルとしての映りがよいし,軽そうなので,リフトやサポートにラクラク感があるのもファンとしてはありがたいことでした。
踊りも上手だったと思うのですが,うーむ,演技をしないのは困りますね。花のワルツではなく2幕冒頭シーンの話なのですが・・・王子に伴われてクララが登場し,ネズミたちとの戦いの顛末を再現するのと関係なく,無表情に床の一点を見つめておりました。まあ,こっちが舞台の真ん中を見ないで小嶋さんを見ている(彼のほうはもちろん,クララと王子の芝居に適度に反応している)から目に入っただけなわけですが,観客は舞台のどこを見ているかわからないのですから,舞台上にいるときは常に役でいてほしいものです。

2日目のトップは佐藤さんと逸見さんでした。佐藤さんは可憐。逸見さんは,やはり今回はお疲れ? のように見えましたが,はんなり〜と美しかったです。あと,坂梨さんのたおやかな雰囲気は,私の好みかも。

最終日は田中さんが登場。花を髪につけた愛らしいヘアスタイルがおよそ似合わないという問題はありますが,動きがクリアで貫禄たっぷり。
というか,主役が伊藤/菊地の舞台に田中/小嶋の花のワルツがついてくるって,アンバランスすぎる豪華さだと思うんですけどー?

小嶋さんは,去年に比べて抑え目? 慎重? に踊っているように見えました。もしかするとコンディションがよくなかったのかもしれません。それとも,もしかすると,コール・ド的? な揃え方を意識して踊っていたのかもしれません。去年は「踊りの大きさが違う」という感じを受けましたが,今年はそれはなかったです。
もちろん,今年も「踊りのうまさが違う」とは思いました。なんであんなに上手なんでしょーねー。4人で同じことをする度に,安定感が段違い。動きの質も段違い。そのことは知っているわけですが(だからこそ,ファンをやっているわけですが),改めて感心してしまいましたよ。
去年よりよかったのは,サポート関係。ピルエットのサポートで「ん?」が全然なかったので,気持ちよく「うっとり〜」に専念できました。

踊りに花のワルツ的「ふんわり〜」感がないのが珠に瑕だとは思いますが(逸見さんと比べると格段に劣る。特に青山/小嶋はシャープすぎ),今年は笑顔全開で踊っていたので,びっくりしたし,幸せにもなりました。
彼は,滅多に歯を見せないダンサーなんですよね。それが必要な役のときはもちろんそうしますが(バジルとかマキューシオとか),ノーブルな役のときはそれはしない。もちろん笑顔で踊るべきシーンでは笑顔ですが,歯までは見せずに「穏やかににっこり」な王子なのが常でした。(去年のこの役でもそうだった) そういうところも好きなのですが・・・でも笑顔全開だとやっぱり嬉しいわぁ。なんだかそれだけで幸せになっちゃうわぁ。

 

というわけで,とても楽しい3日間でした。
若手のダンサーのお顔もだいぶ見分けられるようになってきたし,キャンデー投げもエンジョイしたし,この調子なら小嶋さんは来年も出演してくれそうだし,年末の定例の楽しみにしようっと♪

(2006.12.30)

 

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