親子で楽しむ夏休みバレエまつり
〜レニングラード国立バレエのソリストたち〜

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06年7月21日(金)

きゅりあん(品川区立総合区民会館)

 

会場は満席。
表題どおりの親子連れ(お母さんといっしょ)も多かったですし,バレエを見るのは初めてという皆さんも多かったんじゃないかな,「きれい」「すごい」の類の囁き声も多く(←私はこの辺には寛容),回転が連続するだけでどよめきが聞こえ,大技(に見えるもの)には盛大な拍手。とても雰囲気のよい客席でした。お子さんたちもおとなしかったですしね。

おとなしかったのは,主催者の工夫のおかげもあったのだと思います。
司会者つきで,数曲終わるたびに,次の演目の内容を説明したり,バレエの衣裳について紹介したりする。その内容が適切かどうかには首を傾げたくなるところはありましたが,親切ですし,公演の趣旨に沿っていますし,よいことですよね〜。
特によかったのは,お子さんだけその場に立たせて,バレエの足のポジションやお辞儀のしかたを教えてくれたこと。バレエを習っていそうな子も,関係なさそうな子も,皆さん熱心に取り組んでいて微笑ましいです。ちゃんと覚えて帰って,おうちでお父さんに見せてあげてくださいね〜。

 

第1部

『ばらの精』

音楽: M.ウエーバー     振付:M.フォーキン

アナスタシア・ロマチェンコワ  アントン・プローム

ううむ・・・プロームが,全然よろしくなかったです。
ポール・ド・ブラがあまりに固くて「10年早いよ。もしかすると一生無理かも」という感じ。(前者であるよう祈る)
跳躍も,「その場で跳ぶ」系(アントルシャとか)は,柔らかくて高さもあってとてもよいのですが,「遠くに跳ぶ」系(ジュテ)は弱いようでした。(そういうこともあるのだ,と初めて知った。それともどこか傷めているとかでしょうか?) 窓から飛び込んでくるところで,既にしてその低さにがっかりしてしまいましたし・・・この役には無理があるのかも?
雰囲気的には,色気皆無の健全でかわいらしい薔薇の精で,「親子で楽しむ」のにふさわしいと思いました。

ロマチェンコワはよかったです。
この役の衣裳だとプロポーションの欠点も目立たないし,細やかな演技で少女らしい雰囲気も上手に見せていました。最後に薔薇の香りをかぐところを,もうちょっとロマンチックに演じられると,もっとよいと思いますー。

 

『アルレキナーダ』より パ・ド・ドゥ

音楽:R.ドリゴ     振付: F.ロプホフ

ナタリア・リィコワ  アレクセイ・クズネツォフ

愛らしい作品を小柄で愛らしいペアが披露。よかったです。
(そして,むかーしむかし見たこのバレエ団のキルサノワ/ペトゥホフの舞台を思い出したりもした。クズネツォフには悪いけど,ペトゥホフはほんっとにうまかったよね)

リィコワは,小柄ではつらつ,細すぎない健康美人。チャーミングですし,回転も細かい脚の動きも軽やかで上手。白にブルーでアクセントをつけた衣裳もかわいかったな〜。
クズネツォフも上手。コミカルな演技とテクニカルな跳躍で,楽しませてくれました。

 

『白鳥の湖』第2幕より 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ,L.イワノフ/N.ボヤルチコフ演出

エレーナ・コチュビラ   キリル・ミャスニコフ

コチュビラはむやみに威勢のよい黒鳥で,全然感心できませんでした。もっと丁寧に踊ってくださいね〜。

ミャスニコフは,ソロはかなり苦しくなっていましたが,サポートがさすが。「どこに飛んでいくかわからない」感じのパートナーを制御するのに力を発揮しておりました。
王子らしい感情表現もよかったです。(上半身の使い方が,コチュビラより優美であった)

 

『ファンタジー』

音楽: R.シューマン     振付: N.ボヤルチコフ

イリーナ・ペレン   マラト・シェミウノフ

パジャマか? ピエロか? の白い衣裳で踊られる現代作品。(シェミウノフのメイクからしてやはりピエロか?)
ペレンのヘアスタイルは,頭頂部で髪をまとめたところにお花がついている三つ編で,カワイイです。シェミウノフのほうは,よく言えば古事記の登場人物のようで,悪く言えばサザエさんみたいでした。

最初,女性が菊を持って登場し,最後は男性が女性を抱き上げつつ菊を手にして退場しました。全般に意味不明ですし,面白くもなかったです。短かったから,まあ,いいですけどー。
音楽は,「トロイメライ」だったんじゃないかな?

 

『バヤデルカ』第2幕より パ・ド・ドゥ

音楽: L.ミンクス     振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ改訂演出 

オリガ・ステパノワ  アルチョム・プハチョフ

上手で安定したペアによる,安心して見られるよい上演。
ただ,全幕でグラン・パとして踊られるのを見慣れている目には「なんか淋しいなー」感が強すぎて,引き込まれませんでした。

ステパノワは,化粧が濃すぎるし,「ほっそり」でないので押し出しも強すぎて,ガムザッティにしては怖すぎましたが(いや,ガムザッティだから怖くていいのか?),ほかは全く問題ないです。
堂々たるテクニックで情も深そうな,大人のガムザッティ。

プハチョフはウエスト周りが露出した白のハーレムパンツで登場。つまり,キーロフ仕様の衣裳に見えたのですが・・・ここのバレエ団の2幕もああいう衣裳なのでしょうかね? 
衣裳は似合っていましたし,踊りは普通にきれいでしたが,期待ほどではなかったです。(そもそも,彼のソロルとバジルを見るのが今回の目的だったので,要求水準が高くなっちゃったのかも) ガラと割り切って幸福な結婚式(又は婚約式)を踊っているのか,全幕のソロルを踏まえて表現しているのか,不明確なのはよくないと思うなー。

 

第2部

『せむしの仔馬』より フレスコ

音楽: C.プーニ     振付: M.プティパ

スヴェトラーナ・ロバノワ  ユリア・アヴェロチキナ  マリーナ・ニコラエワ  エレーナ・シリャコワ

この作品は,ワガノワ・バレエ学校の公演で何回か見たことがあります。
で,見るたびに,「つまらん上に,衣裳がダサイ」ので困惑していたのですが,いや,今回は感心した。プロが踊ればそれなりに楽しめるのですね〜。盛り上がりはないものの,愛らしくて清楚な小品だと思いました。
衣裳もよかったです。基本的なデザインはワガノワと共通する「胸当て+長めチュチュ」なのですが,上半身が黒でスカートがパステル調。色遣いが上品でしたわ。

 

『眠りの森の美女』より グラン・パ・ド・ドゥ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

アナスタシア・ロマチェンコワ  アントン・プローム

白い衣裳にキラキラした飾りが多く,髪の銀粉もキラキラと輝き,いかにも『眠り』だな〜,という感じ。
2人とも小柄なせいもあってか,ロイヤルウエディング的格式が少々不足気味でしたが,きちんとした上演で,よかったです。

ロマチェンコワは,体育会系の肩の辺りが気になるのが珠に瑕ですが,ていねいな踊りで,上手でした。
プロームは,腕の使い方などの「王子度」がかなり上昇。以前『くるみ』パ・ド・ドゥの王子で見たときは「道化向き」に分類したのですが,間違っていたようですね〜。(でも,やっぱりジュテ系が弱いみたいだなぁ)

 

『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ

音楽: A.アダン     振付: J.コラリ,J.ペロー,M.プティパ

エレーナ・コチュビラ   キリル・ミャスニコフ

コチュビラは,ジゼルのほうがずっとよいですね〜。輪郭のくっきりとした美しさで,精霊のようなジゼル。見応えがありました。
ミャスニコフはお見事。多少の技術的衰え(と頭髪の衰え)はありますが,優美な動きで悔恨のアルブレヒトを物語っておりました。

 

『ディアナとアクティオン』 (『エスメラルダ』より)

音楽: C.プーニ     振付: A.ワガノワ

イリーナ・ペレン   マラト・シェミウノフ

予想よりずっとよかったです。

ペレンは華やかな愛らしさ。ちょっと「踊りなれてない?」感はあったので,ツアー初日ではなく後半のほうで見たかったかも,という気はしましたが,十分魅力的。
狩の女神というよりは色っぽいニンフみたいな感じでしたが,ギリシャ神話の登場人物ではありますから,これはこれでよいですよね。

シェミウノフはダイナミック。
若くてたくましくてフェロモンたっぷりの牡鹿・・・というより,若くてたくましくてフェロモンたっぷりの狩人みたいだったなー。

というわけで,本来の人物設定とは違うふうには見えましたけれど,別にそれでもいいよね〜。
この2人用ヴァージョンなのでしょうねー,派手で見応えのあるリフトが盛り込まれ,男性のソロは難しすぎないパになっていたようです。

 

『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: L.ミンクス     振付: M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

オリガ・ステパノワ   アルチョム・プハチョフ     ヴァリアシオン: (おそらく)ロマチェンコワ  ロバノワ

 

少々華が足りないのを技術力で補って,大いに会場を盛り上げた上演。見事でした。

ステパノワはうまい。とにかく上手い。脚は強いし,軸はしっかりしているし,回転のサポートなんか要らないんじゃないか? と思っちゃうくらい。
真っ赤な衣裳で,ヴァリアシオンもフェッテも赤い扇を持って踊りました。フェッテは,最初から最後までシングルーシングルーダブル(扇を開く)という不動ぶり。
パワフルに突き進む鉄火肌のキトリ,という感じ。かっこよかったです〜♪(全幕で見たいな〜)

プハチョフは,このパ・ド・ドゥを踊るには少し端正すぎるのかも。ソロもサポートも上手だし,芝居っ気もあるのですが,「楷書体のバジルなので,少々面白みに欠ける」という気はしました。
全幕で踊れば,それはそれでよいバジルになると思うけれど(猪突猛進キトリと冷静に諌めるバジルとか?),ガラ向きではないのかな・・・。
でも,とにかくきれいではありますから,見られてよかったです。白タイツだったのも嬉しかったな〜。

(06.09.09)

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10年くらい前の映像なのでしょうか,↑の出演者のうちDVDにも登場しているのはミャスニコフだけです。

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「フレスコ」が入っているかどうかは不明ですが・・・。

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