世界バレエ&モダンダンスコンクール スーパーガラ公演
メダリストたちの競演

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2005年7月17日(日)

宮城県民会館

 

第1部

『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: R.ドリゴ/L.ミンクス     振付: M.プティパ/V.チャブキアーニ

田中ルリ  ラスタ・トーマス

田中ルリは,安定した踊りだったと思いますが,チュールの袖つきという衣裳のせいなのか,腕から胸のあたりがきれいに見えませんでした。(ありていに言えば,太目に見えた) 薄いブルーグレー(シルバー?)のチュチュで,内スカートが濃い目の色になっているのは「品がよくてすてきだな〜」だったのですが。
グラン・フェッテでダブルを10回近く続けたし,その後も,3回に1回くらいはダブル。(さすがに前のほうに動いてはきましたが)
雰囲気的には,女らしいメドーラ・・・かな。ちょっと湿気が強すぎる感じて好みではありませんが,「しっとりした感じ」とも言えそう。

トーマスは紫のハーレムパンツで登場。
彼を見たのは初めてだったのですが・・・跳躍の着地音が大きいものの,至極まともなテクニシャンできれいな踊りだったので拍子抜けしました。(いや,なんか・・・もっと個性的な「色物」なのかと思っていたのですわ。たいへん,たいへん,失礼をいたしました)
グラン・ジュテしながら身体を斜めにして水平に360度回転して着地する大技(説明がわかりにくいですよねえ。すみません)が見事に決まって,大きな拍手がわきました。

あとは,まあ,『海賊』ですからねえ・・・。
ルジマトフのアリは唯一無二のものであって,私は一生あれに囚われていくのであろうなー,と改めて思ったことでした。

 

『ジゼル』2幕よりパ・ド・ドゥ

音楽: A.アダン     振付: J.コラーリ/J.ペロー

ヤオ・ウェイ  サン・シェンイー

ヤオは,愛らしい丸顔にきれいなプロポーションで,最初は,ジゼルが似合っているなー,と思ったのですが,段々違和感が出てきて,ヴァリアシオンでは眉間に皺が。なんというか・・・ものすごくリズミカル。このヴァリアシオンの音楽は,割合明るいんですよね。その曲調を素直に表現しすぎているというか・・・元気よく歯切れよく踊っていて,全然2幕のジゼルに見えませんでした。
振り自体も少し違っていたような気もするので,もしかするとデンマークの『ジゼル』ってああいう踊り方をするのかしらん?(いや,まさか)

それから,最初に2人で踊ったあと下手で跪くアルブレヒトに後ろから寄り添ってポーズを決めるところで,寄り添わないどころか,アルブレヒトを突き飛ばしかねないように見えるミスがあったのも悪印象でした。(ミスですよね? まさか,そういう解釈だったのではないですよね??)

サンは,プロポーションがすばらしかったです。(今回の一座の中では,マトヴィエンコと同点1位のプロポーションに見えた)
踊りはエレガントできれいでしたが,おとなしかったです。でも,ガラでこの場面だけを踊って魅力的に見せろ,というのが無理な注文のような気もするので・・・訂正。
おとなしかったけれど,エレガントできれいでした。

 

『Duet』

音楽: R.スミス/ラチェル     振付: イ・ユン・キュン/ユ・ソック・フン

イ・ユン・キュン  ユ・ソック・フン

前回の世界バレエ&モダンダンスコンクールのゴールドメダリストだそうです。
そうですねー,よくあるコンテンポラリーダンスに見えました。斬新とは全然思いませんし,引き込まれませんでしたが,見ていてしんどくなるようなことがなく,全体の起承転結もあり,まとまった作品だったのではないでしょうか。
女性はターコイズブルーの上に茶色を重ねた衣裳で,男性は逆に,茶色の上にターコイズブルーを重ねた衣裳。

 

『眠れる森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ

アナスタシア・チェルネンコ  デニス・マトヴィエンコ

チェルネンコは,身長もけっこうあるし,ほっそりとした見事なプロポーション,華やかな美貌,易々と180度上がる脚・・・というふうに素材はすばらしいのですが,踊りは,よく言っても「これからの人」でありました。
上半身の優美さが欠けていましたし,脚の動かし方はもっとトホホ。
それでも,アダージオは(マトヴィエンコの力もあるのでしょうか)「命名式に優しさの精が欠席して,替わりに元気の精が2人来ちゃったのかしらね〜」程度だったのですが,ソロになると,「これはですねー,鷹揚の精の替わりに無神経の精が来て,呑気の精の替わりに無神経の精が来て,勇気の精の替わりに無神経の・・・(以下略)」とかなんとか言いたくなる感じでありました。

彼女は,今年のモスクワ・コンクールで1位をとったそうですが・・・私には謎です。
ローザンヌ・コンクールなら,将来性の勝負ですから,現在ていねいさ,精緻さに欠ける踊りであっても素質で受賞してもいいのですが・・・うううむ・・・単にオーロラが向いていないのであろうか?

マトヴィエンコはとてもよかったです。
上手できれいで柔らかくて,先日の新国立の全幕で感じたような「やりすぎ」もなく,きちんとコントロールされた落ち着いた王子。
5年くらい前の「☆キラキラ☆王子さま」はもう戻ってはこないのかもしれませんが,でも,予定調和の結婚式の「王様の後継者」にふさわしい,立派な踊りだったと思います。

 

『レダと白鳥』

音楽: J.S.バッハ     振付: R.プティ

草刈民代  レモンド・レベック

プティの作品を踊る草刈民代は悪くないし,とってもすてきなこともある・・・と思っていたのですが,この作品は向いていないようでした。
美貌ではあるのですが,動きが重く,きれいでもないので,ゼウスを惹きつける魅力に欠けていたと思います。

レベックは,それなり。
ギリシャ神話の大神(←しかも好色)ゼウスであったか? は疑問ですが,たくましい上半身が効果的でした。

 

第2部

『ライモンダ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽: A.グラズノフ     振付: M.プティパ/牧阿佐美

志賀三佐枝  山本隆之

志賀三佐枝は,さすが。
丁寧できちんとコントロールされた動きというのは,実に目に快いものだなー,としみじみ思いました。特に,細かい脚の動き(ロン・ド・ジャンブ? 片脚で立って,もう一方を空中でちょちょっと動かすパ)の美しさ,愛らしさには「そうそう♪ こういうのが見たいのよ〜♪♪」と。(チェルネンコは見習うように)

特に,アダージオがよかったです。
幕が上がって奥でポーズをとっているところの輝きにはちょっと感動しましたし(正直,意外だった。そういう華があるとは思っていなかったから),淑やかでありながら威厳もあるお姫様で,幸せな結婚式の雰囲気もあって,品がよくて・・・とてもすてき。
ヴァリアシオンは,意外にも,私の好みとは外れていました。厳しい表情できりっと踊っていて,手を打ち合わせる振りもスピードありすぎ。そもそも音楽と振付が結婚式にしては謎なのではありますが・・・なんか怒っているみたいだなー? アブダラーマンのことを思い出して怒りを新たにしているのかなー? なんて思ってしまいましたよ。(いや,音楽とぴたっと合っていて上手なんですけれどね)

というわけで,アダージオで盛り上がった割りにその後は感動しそこねたのが残念でしたが,もう一度彼女の踊りが見られたのは,とても嬉しいことでした。

山本隆之は,よいパートナー。
アダージオもコーダもユニゾンの動きが多いので,「もっと脚が上がらんと同じ動きに見えんではないかっ」と文句を言いたくなりましたが,サポートは安定しているし,リフトは見事。コーダでの長〜い片手リフトなんて,なぜ拍手が起きなかったのか不思議なくらい。
ソロのほうは,悪くはないけれど,こういう催しの中で見るのはちょっとつらいかも。(それとも不調?)

 

『白鳥の湖』第2幕よりグラン・アダージオ

音楽: P.チャイコフスキー     振付: M.プティパ/L.イワノフ

ルシア・ラカッラ  シリル・ピエール

これは完全に好みの問題だと思うのですが,ラカッラの白鳥は,私は全然ダメでした。踊り以前に,細すぎる身体に拒絶反応が出てしまって・・・。

スカートが大きく広がるチュチュを着て,マッチ棒みたいな腕と脚であの柔軟性をもって踊られると,なんというか・・・失礼ながら,大人の女性に見えない。一方のピエールは頭一つくらいラカッラより大きいし,がっちりした体格でもあるので,10歳くらいのいたいけな少女が大人の男に抱きすくめられている図のように見えてしまって・・・。とんでもない目の迷いだとは思いますが,「こんなもの見たくないっっ」という気分になりました。
以前同じパートナーで同じ演目を見たときは,こういう反応は出なかったのですが・・・?

 

『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ

音楽: N.リムスキー=コルサコフ     振付: M.フォーキン

ポリーナ・セミョーノワ  イーゴリ・ゼレンスキー

ゼレンスキーの金の奴隷には,「いや〜,人間って成長するのね〜」と大いに感心しました。(僭越ですみませんです)
10年くらい前に見たときは,色気ゼロで,限りなく「なんじゃこりゃ?」に近かったのですが,今回見たら,まああ,ちゃんとセクシーな大人の男になっているではありませんか。
びっくりしたわ〜。

身体の線も若い頃よりきれいになったのかしらん,衣裳もよく似合っておりました。ルジマトフの刷り込みがあるから絶対受け付けられないだろうと予想していたのですが,ぜーんぜんそんなことなかったです。(王子の衣裳よりかっこいいかも〜)
踊りも好調だったようで,空を切り裂く大きな跳躍や,身体を後方に倒しながらのマネージュ(バタフライ?),正統派の大きく舞台を回るマネージュの高さと完全な開脚・・・もう見られないのだろうな,と思っていたゼレンスキーらしい踊りが見られて,とっても嬉しかったです〜♪

「狙った女をモノにする」風の野獣系でしたが,踊りがきれいだから,野獣にならずに芸術になるのね〜,という感じ。
奴隷には見えませんでしたが,この際そんなことどうでもいいわね〜,と思える,たくましくてオトナの余裕を持ち合わせた金の奴隷。(←くどいようだが奴隷には見えないが,ほかに呼びようもない) 
うん,すてきでした。

セミョーノワはキーロフと同じ衣裳で登場したのですが,あの衣裳が似合っておりませんでした。(少々胴長に見えてしまった。なぜだろう?)
踊りは柔軟性を生かして,一生懸命「妖艶」を演じている感じ。で,努力すればするほど,「お嬢さん,無理してますね」感が漂ってくる。なんか,優等生が教科書に書いてあることを忠実に実践しているみたいでした。(名古屋や東京での公演で評価が高かっただけに,期待しすぎて見たせいもあるのかなぁ?)

まあ,その「懸命」感は好感を持って見られるものでしたから,「大人の男と背伸びしている小娘」ヴァージョンだと考えればいいのかもしれませんが,それではいくらなんでも『シェヘラザード』の話から外れているような気が。
踊り自体はたいへんよかったと思うので,要するに,「ゾベイダ踊るにはまだ早い」ってことでしょうかねえ? 

 

『DARKNESS & LIGHT』

音楽: M.ナイマン     振付: W.タケット

吉田都  フェデリコ・ボネッリ

タケット振付の新作。故高円宮さまに捧げる作品だそうです。
音楽はマイケル・ナイマンの曲で,3曲だったかな。曲調が変わるとともに照明も変化していました。
衣裳は黒。2人とも上はタンクトップで,下は,女性は短めのチュチュ風スカート,男性は短パン。

吉田都はバレエシューズでしたが,ポアントワークがないだけで,動きはクラシックバレエだったと思います。
さすがはオーダーメイド,彼女の踊りの軽やかさや愛らしさ,音楽性をよく生かした振付だと思いました。ストーリーやドラマで見たあとに重いものが残るのではなく,「ちょっと踊ってみました」的にさらっと見せてもらって,清々しい気分が残る。そんな感じ。
せっかく全国を回るのだから,クラシックのパ・ド・ドゥを見せてほしいなー,と思っていたのですが(今でもそう思いますが),彼女のよさを生かして創作された作品を見られるのも悪くはない。

ボネッリは,マッチョな体型なので私のタイプではないですが,小柄なパートナーをいっそう可憐に見せる効果もありますし,複雑そうなリフトも軽々。よいパートナーだなー,と思いました。(お顔もかわいいしー)
踊りは・・・すみません,印象がないです。「ありゃ」の類は全くありませんでしたから,悪くはなかったのではないでしょーか。

 

舞台が明るくなると(幕が開くと,だったかも?)全員が揃ってポーズしておりました。
おもむろに動き出して,リフトしながら引っ込んだり,横一線で男性にサポートされてのピルエットを見せたり,数人が次々とピケの連続で舞台前面を横切ったり,セミョーノワがダブルの連続フェッテを見せたり,男性4人がいっせいにマネージュを披露したり(舞台上は大混雑),最後にゼレンスキーが登場,ア・ラ・スゴンドのピルエットを回ったり・・・というサービスがありました。

うん,まあ,文句を言いたいことも多々ありましたが,楽しいガラだったと思いますよん。

(2006.9.27)

 

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