こうもり (新国立劇場バレエ団)

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03年12月23日(火・祝)

新国立劇場

 

振付: ローラン・プティ

音楽: ヨハン・シュトラウスII世
編曲: ダグラス・ガムレイ

振付指導: ルイジ・ボニーノ
振付指導コーチ: ジャン・フィリップ・アルノ

舞台美術: ジャン=ミッシェル・ウィルモット
衣裳: ルイザ・スピナテッリ
照明: マリオン・ユーレェット, パトリス・ルシュヴァリエ
舞台美術・照明補佐:ジャン=ミシェル・デジレ

指揮: デヴィッド・ガルフォース
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

ベラ: 湯川麻美子     ヨハン: 山本隆之     ウルリック: 吉本泰久

メイド: 楠元郁子     警察署長: ゲンナーディ・イリイン

グランカフェのギャルソン: 奥田慎也, マイレン・トレウバエフ, グリゴリー・バリノフ

フレンチカンカンの踊り子: 大森結城, 西川貴子, 前田新奈

チャルダッシュ:
マイレン・トレウバエフ, 遠藤睦子, 西山裕子, 鹿野沙絵子, 川村真樹, 鶴谷美穂, 丸尾孝子

ウインナワルツ:
西川貴子, 厚木三杏, 大森結城, 前田新奈, 鹿野沙絵子, 川村真樹, 鶴谷美穂, 神部ゆみ子, 丸尾孝子, 尾原貴子, 岸川章子, 北原亜希, 深沢祥子, 堀岡美香,
市川透, 奥田慎也, マイレン・トレウバエフ, 陳秀介, 江本拓, 冨川祐樹, 貝川鐵夫, 冨川直樹, 井口裕之, 佐々木淳史, 澤田展生, 高木裕次, 内藤博, 中村誠

ヨハン(歌): 樋口達哉

昨年に続く再演。なお,初演の感想はこちら
楽しかったのですが,期待ほどではなかったです。
初演のときはこの日と同じ3人が主演した舞台が一番よかった(フェリさんとボニーノさんが出た日よりも,小嶋直也さんが踊った日よりも)という記憶があったので,ちょっと意外でした。

 

湯川さんは,とてもよかったです。初演のときよりさらに存在感が増した感じ。
その結果,家庭でのシーンなど,単なる良妻賢母ではなく欲求不満の古女房の感じも出てきて,特にネグリジェ(下着?)姿で肩紐をずらして夫との夜の営みに期待するシーンなどが効果的。うーむ,これではダンナが辟易するのも無理ないかなー,5人も子どもを作ったんだからもう勘弁してほしいと思うかもしれんよなー,とにやにやしてしまいましたよ。(お下品で申し訳ありません。うーむ,おばさん入ってますかね? いや,この発想では,おばさんというよりおじさんか?)
ウルリックに対しても助けを求めるというよりは,呼びつける感じと言ってはいいすぎでしょうか。(だってさー,吉本さんのほうもかわいらしく「いそいそ」という感じで登場するんだもん)

変身後は,いや〜,輝いておりました〜♪ 当然ながら初演のときほどの驚きはなかったですが,この輝きはすごい,と改めて思いました。
彼女は脇で踊っているときはその位置で踊るのがふさわしいように見える。そしてこの役を踊るときは常に主役を踊っているバレリーナのように見える。意識的にしているのか自然にそうなるのかはわかりませんが,そういう存在感の使い分けみたいなことができるというのは,すばらしいことだと思います。

山本さんは,不機嫌な夫ぶりや軽佻浮薄に夜遊びへの期待に盛り上がるソロはよいのですが,勇んで出かけた先でたいして色男に見えないのがちょっと物足りなかったです。周りが盛装しているのに簡素な黒の衣裳だったから損をした面もあると思いますが,肝心の踊りがあまり魅力的ではなかったのが一番の敗因のような気が・・・。あと,今回は,存在感で完全に湯川さんに負けていました。3日連続出演の体力的な問題もあったのかしらん?
その結果,初演のフェリ/ムッルを見たときと共通する「ヨハンの影が薄いよなあ。かっこいいだけではねえ」という気分になってしまいました。
あ,でも,フライングのシーンも踊りも,去年よりうまくなっていたように思います。それから,食事を「かっこむ」動きがものすごーく上手でしたわ。

吉本さんは,踊りがとてもよかったです。動きが軽くて去年よりこなれていた,というか自分のものになっている感じ。特に,メイドの後ろでこっそり踊るところはとても楽しかったですー。(とはいえ,実際には小嶋さんの踊りとついつい比べてしまい,「・・・全然踊れてない」と不満だったりもしたのですが,まあ,比べるのが間違っているわけですから)
芝居のほうは,去年のほうが面白かったような気が・・・? 細かい動きにいろいろ「いやーん,笑わせないでよー」というモノがあって,何回も吹き出してしまった記憶があるのですが,今回は達者でチャーミングではあるけれどおとなしめだったというか・・・。こちらも3日連続出演の疲れがあったのかもしれませんが,最終日だから,もう少しはじけてくれてもよかったんじゃないかなー,と思ったりもします。

 

すったもんだの一夜が開けたあとのベラは,それはもうご満悦。
湯川さんのベラの一番すごいところは,ここから始まるシーンで,単に「夫の愛を取り戻した」という感じではなく「夫はもう私の手中にある」という雰囲気を見せるところなんじゃないかと思います。かわいい妻なんかじゃなくて,「女は怖い」という面を見せるところ。今回,ウルリックなんか見向きもしないで自分の世界に浸っているこのシーンを見て,いっそうその感を強くしました。

異論はあるかもしれないし,それが作品の意図するところなのかどうかはわからないけれど,私は「スリッパは夫婦の幸せの象徴」などという論よりは,そういうモノを見せてくれるほうが好きですわ〜。(その後で,ごくマトモな幸せなワルツで「めでたし,めでたし」は見られるわけだしー)

 

そのウインナワルツですが,ううむ・・・コール・ドの皆さんは衣裳が似合ってすてきなのですが,踊りとしては物足りなかったかも。もっとボールルームダンスっぽく踊ってほしいというか・・・。その道に疎いのでよくわからないのですが,ライズ・アンド・フォール(いや,フォール・アンド・ライズでしたっけ?)が足りないとか,そういうコトでしょうかね? 
それから,山本さんには,ホールドしていないほうの腕をもう少しきれいに見せてほしいですー。

それ以外のシーンでは,コール・ドはよかったと思います。特に,仮面舞踏会は楽しいですわ〜。ただ,背景を変えたようですが・・・なぜなんでしょう? あの並木道のような絵の前で踊るというのは,白昼屋外で仮面舞踏会をやっているような趣で,かなり妙だと思うんですけどー???

楠元さんの「家政婦は見た!」的メイドとグランカフェのギャルソン3人は今回も楽しませてくれました。
かわいいバリノフさんは私の(も?)お気に入りだし,トレウバエフさんもうまいけれど,なんといっても奥田さんのお尻の突き出し方が見事だと思うわぁ。なんかペンギンちゃんが歩いてるみたい♪

 

というわけで・・・悪くはなかったんですけれどねえ・・・。
うーーーん・・・↑に書いたように山本さんと吉本さんに多少の不満はあるわけですし,「初演の意気込み」みたいなモノがなかった分伝わってくるものがなかったのかなー,と思ったりもしますが・・・結局のところ,小嶋さんの直前降板によるこちらの盛り下がった気分のせいなのでしょうねえ。やれやれ,我ながら困ったものです。

(03.12.25)

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