デューク・エリントン・バレエ(牧阿佐美バレエ団)

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01年7月27日(金),28日(土),29日(日)

新国立劇場(オペラ劇場)

 

演出・振付:ローラン・プティ

音楽:デューク・エリントン

装置:ジャン=ミッシェル・ヴィルモット

衣装:森英恵, ゼニア・スポーツ(ゼニア・ジャパン株式会社), アルビエロ・マルティニ

 

エリントンの音楽(名演奏のテープ)に振り付けた、2幕17場のオムニバス形式の作品。

「フランス人が,ジャズを使って,日本のバレエ団に振り付ける? それも,あのお行儀のいい牧バレエに?? 大丈夫なのかね???」と,失礼なコトを考えながら,見に行きました。

で,結果としては,いやあ,楽しかったです〜〜♪
プティ氏のこの種の「おしゃれな」作品は,どちらかというと苦手なのですが,なるほどー,ダンサーの個性をよく生かして作っているなー,うまいもんだなー,と感心。
バレエ団の財産になる名作というようなモノではないと思いますが,ウエルメイドなエンタテインメントでした。

 

《第1幕》

1 The Opener  

小嶋直也

軽くてキレのいいテクニックとリズム感を見せながら,おちゃらけた動きもあり,観客に,「いらっしゃいませ。楽しんでいってくださいね。」というメッセージを伝えるダンス。

私は,これだけで,もうすっかり嬉しくなってしまったのですが,このメッセージを解読できず,どう反応すべきか困っている方が多かったようで,客席の反応は今一つのように思われました。
これは,観客の期待と演出=構成の狙いのミスマッチで,基本的にはプティ氏の責任だと思いますが,小嶋さんのスター性の不足も,その一因ではありましょう。(とほほ)

黒のタンクトップと黒のスラックス(←死語?)は,彼によく似合います♪

 

2 Solitude  

上野水香

セバスチャン・アルヌール, ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, 相羽源氏, 逸見智彦, 佐藤崇有貴, 塚田渉, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 武藤顕三, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 邵治軍, 三國典央, 中村一哉

バレエのレッスン場のバーを思わせる長い棒を縦横に動かす男性コールドとともに,白系の総タイツの上野さんが踊ります。

上野さんが,美しかったです。
プロポーションのよさや身体の柔らかさだけで見せるのではなく,清楚でいながら,コケティッシュな魅力がありましたし,音楽の雰囲気にもよくあっていました。

男性陣が,全員黒髪だったので,びっくり。白無地のTシャツに黒タイツという衣装とあいまって,ステキでした。

 

3 Island Virgin  

小嶋直也, 森田健太郎, 正木亮羽

今回,一番のお気に入り♪

リズミカルな音楽に乗って,白の半袖Tシャツに白のおズボン,メガネをかけて正木さんが登場。メガネを胸のポケットにしまい,楽しげに踊り出します。続いて,森田さんも同じ姿で登場,踊りに加わります。そして,小嶋さんも,同じ衣装で登場。
下手の奥からすたすた歩いてくる姿,2人に気付いて「ん?」と立ち止まるところ,メガネを外しながらのいたずらっぽい笑顔,そして軽やかなダンス・・・いやーん,どーしてこんなにかわいいのぉ?(笑)。

全体に,愛敬のある振付で,3人ともチャーミングでしたが,森田さんと正木さんには,もう少しスレンダーになってほしいような気も・・・。

何と言っても,小嶋さんの愛嬌があってきれいな全身の表情がたまりませんでしたわ。見ていると,とても幸福な気持ちになるの〜♪♪♪ 

 

4 Caravan  

セバスチャン・アルヌール, ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, 相羽源氏, 逸見智彦, 佐藤崇有貴, 塚田渉, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 邵治軍, 中村一哉

男性ダンサーが,列を作ったり,円陣になって床に伏せたりする踊り。

いつになく(笑)眼光鋭い逸見智彦さんや相羽源氏さんが,印象的でした。

 

5 Happy Go Lucky Local  

ルイジ・ボニーノ, 正木亮羽

ボクサー姿の2人の短い踊り。大きい正木さんとチャップリン・メイクで小柄なボニーノさんの対比が楽しい1曲でした。

正木さんは,こういう作品を見ると,今の体型も悪くないかな?

 

6 Shakespeare  

志賀三佐枝, 小嶋直也, 森田健太郎, 菊地研

新人の菊地さんが,パックを踊りました。
16歳だそうですが,初々しいだけでなく,堂々としているので,びっくり。背丈はあるし,お顔もいいほうですし,テクニックもなかなか。若いからこその輝きもあるとは思うのですが,これからが楽しみ♪

小嶋さんは,ハムレット。
貴公子風。でも,「to be or not to be」というより「大事なコトを思い出せなくて困っている人」みたいに見えて,笑ってしまうんですけどー。

志賀さんと森田さんは「ロミジュリ」
とても,よかったです。
椅子を一つ使うだけで,バルコニー・シーンにしてしまう。プティも上手いし,ダンサーも見事。志賀さんの,清らかでいながら艶がある表現もステキですし,森田さんの情熱は,まさにロミオ。

衣装は,志賀さんは,白の簡素なドレス。男性は,エリザベス朝風(?)の色違いでした。

 

7 Come Sunday 

セバスチャン・アルヌール, ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ

哀調を帯びた音楽の中,「前世紀初頭,黒人たちは休息と自由を夢見る」というダンス。

後ろの幕に3人の影が映るのですが,これが,踊りと同時進行だったり,違っていたりするのが,ちょっと幻想的でした。

 

8 Don’t Get Around Much Anymore  

シャーロット・タルボット, 佐藤崇有貴

ちょっとおしゃれで,リズミカルで,なかなか楽しいパ・ド・ドゥ。

タルボットさんは,日本人バレリーナではやっぱり出せないだろうなあ,という色気を見せるダンサーでした。でも,妖艶なタイプではなく,ちょっとドミニク・カルフーニを思わせる清潔感のあるバレリーナで,全体の雰囲気を壊さないところもよかったわ。
佐藤さんは,さすが,牧で一番の美丈夫だけあって,スタイルのよいタルボットを向こうに回して(?),立派なパートナー。

 

9 In a Sentimental Mood / Mr. Gentle and Mr. Cool  

金澤千稲, 坂西麻美, 平塚由紀子, 鈴木規緒美, 佐藤朱実, 土田さと子, 柴田有紀, 酒向葉子(28), 橋本尚美, 櫛方麻未, 飯野若葉, 山井絵里奈(27・29), 吉岡まな美, 笠井裕子(27・29), 柄本奈美(28), 坂梨仁美, 山中真紀子, 山口恵理子

セバスチャン・アルヌール, ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, 相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 徳永太一, 今勇也, 安田峻介, 阿南誠, 邵治軍, 三國典央, 中村一哉

小嶋直也, 菊地研

16組のカップルによる場面。女性はピンク(桃色)のミニドレス。男性は,白のTシャツに縦縞のチョッキ,縦縞のスボン。

1幕の最後に至って,やっと,上野さんと志賀さん以外の女性ダンサーも登場。
うーん,今回の作品は,意外なほどに,男性路線でしたねえ。牧は,日本で一番,男性の質の高いバレエ団だと思いますが,バレリーナもいっぱいいるのに,ちょっともったいなかったような・・・。

少々長すぎるような気もしましたが,不満だらけの女性たち,男性の組体操や死んだふりなど,なかなか面白かったです。(途中で小嶋さんもちょっと出てきたしー)

最後は,ソロにコールドにと,今日一番の活躍の菊地さんが,舞台に一人残り,元気な回転と軽やかなジャンプを見せて,幕となりました。

 

《第2幕》

10 Hi-Fi Fo Foms  

小嶋直也

相羽源氏, 逸見智彦, 佐藤崇有貴, 塚田渉, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 今勇也, 菊地研, 邵治軍, 中村一哉

プティ氏によると「全く新しい試みに挑む小嶋直也と10人のダンサー」。
そこまで大上段に構えるほどのコトか? とは思いますが,まあ,たしかに珍しくはあった・・・かなぁ・・・。

なんと申しましょうか,笑ったというか,呆れたというか・・・あははは,要するに,「器械体操の場」でした。
全員,マジメな顔で動いているのが,とてもユーモラスで,いやあ,笑わせていただきました。
メンバーを監督するため,客席に後ろを見せる小嶋さんの,上腕部の筋肉が美しかったわ。

最後,一人残った彼は,体操用の器具(?)を椅子にして腰をおろし,つまらなそうな顔で,客席を睥睨する・・・と,一人のダンサーが登場して,その器具を持ち去るが,微動だにせず,その姿勢を保つ・・・いやあ,吹き出しちゃったわ。(でも,これって,たぶん,すごいコトなんですよねえ??)

 

11 Mood indigo / Dancers in love  

ジュリアーノ・ペパニーニ

見事なダンスでした。手が,脚が,首が,肩が,イキモノのようにリズミカルに動く,いや,踊る。テクニックもあって,それが,見事にジャズになっている,という感じ。

すばらしかったです。客席も,フィナーレ以外では,一番沸いたのではないかしら。

 

12 Sophisticated Lady : Chelsea Bridge / Satin doll  

シャーロット・タルボット

ファビオ・ライムンド・デ・アルメイド・アラガオ, 塚田渉, 菊地研

まず,森英恵さんデザインのドレスのタルボットが,倦怠感溢れるソロを踊りますが,飽きました。続いて,タキシードの男性3人が登場し,恋の駆け引きの場面になりますが,ここも,ちょっと冗長だったかなあ。しかも,3人とも振られて去ったあとの場面が,また,結構長いんだもの・・・決して,悪くはなかったんですけれど。

菊地さんが,衣装はちょっと七五三風の似合い方でしたが(ごめんなさい),少年の魅力で輝いていました。

 

13 It don’t mean a thing  

ジュリアーノ・ペパリーニ

セバスチャン・アルヌール, ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, 相羽源氏, 根岸正信, 逸見智彦, 佐藤崇有貴, 塚田渉, 秋山聡, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 邵治軍, 中村一哉

ダンサーが,踊りながら,歌っていました! うまいかどうかはわかりませんが(笑),さすが,リズム感はいいようでしたね。うん。
楽しかったです。

 

14  Cotton Tail 

上野水香, ルイジ・ボニーノ

黒のユニタードの上野さんとチャップリン・メイクのボニーノとの楽しいパ・ド・ドゥ。

上野さんは,1幕のほうが魅力的でした。振付が,彼女の少女らしさを強調しすぎていたのではないかしら?
ボニーノさんは,達者なものですねえ。

 

15 Ad Lib on Nippon 

草刈民代, 正木亮羽

相羽源氏, 根岸正信, 逸見智彦, 佐藤崇有貴, 塚田渉, 秋山聡, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 邵治軍, 中村一哉, 三國典央

なるほど,ここで草刈さんを出しますかー。うまいなあ。

背後に洗練された日の丸(?)が現れ,日本調も感じられる音楽の中,赤い衣装,胸に蝶(これも森英恵作品)の草刈さんが,女王様のように男性にかしずかれながら,長い曲で踊りました。
並んだ男性の膝の上を歩いて渡ったり,皆が背をかがめる上を,運ばれていったり,輪になって伏せた中央で,上体だけ起こした数人にリフトされたり・・・面白かったわ。途中から正木さんが出てきてパートナーになりましたが,恋愛関係にはならないで,女王様のまま(笑)。

男性の衣装は,上下とも黒で,上半身はトレーナーだったのですが,このトレーナーにいろんな刺繍で文字が入っているのが,楽しかったです。Duke Ellingtonとか,Roland Petitとか,Asami Maki Balletとか・・・。

あと,若手の男性の中で,今勇也さんという方が,あまり背は高くないのですが,なかなかハンサムだったので,チェックを入れておきました。

 

16 Kinda Dukish Rockin in Rhythm 

セバスチャン・アルヌール,ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス,ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ

1幕と違って陽気な踊りでした。私にはさほど面白くなかったですが,男性コールドが着替える間,つないでいただいたということで・・・。

 

17 Take the “A” Train  

シャーロット・タルボット, 草刈民代, 志賀三佐枝, 上野水香

ルイジ・ボニーノ, ジュリアーノ・ペパリーニ, 小嶋直也, 森田健太郎, 佐藤崇有貴, 正木亮羽, 菊地研, 

セバスチャン・アルヌール,ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス,ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ

金澤千稲, 坂西麻美, 平塚由紀子, 鈴木規緒美, 佐藤朱実, 柴田有紀, 橋本尚美, 櫛方麻未, 吉岡まな美, 山口恵理子 

相羽源氏, 根岸正信, 逸見智彦, 塚田渉, 保坂A.慶, 京當雄一郎, 徳永太一, 今勇也, 邵治軍, 中村一哉

舞台の奥に,赤い,ろうと状(?)のセットがあって,奥から,次々と男性ダンサー10人が滑り降りてきます。一人一人,自分をアピールしながら。革の上下で,皆さんかっこいい♪(ただし,材質は,ホンモノの革ではないようでした。)
そして,黒のミニのドレスに黒ストッキングの女性ダンサー10人(脚がきれい♪)も加わり,ひとしきり踊った後,中央奥の幕が左右に分かれ,ソリスト陣14人(女性は白のミニ・ドレス。男性は,コールドと同じ。)が歩み出てきて,勢揃いのフィナーレになりました。

ダンサーが楽しそうなので,見ている側も楽しくなるダンス。

カーテンコールには,プティさんも登場。(なぜか,28日は,いませんでしたが。)
最終日には,コールドの中にいた菊地さんを呼んで,前に押し出し,ダンサーたちも皆で彼に拍手を送る,という,うるわしい場面もありました。

そして,アンコールとして,「A列車で行こう」をもう一度♪
プティさんも参加して,ますます楽しませてもらいました。

この場面での小嶋さんは,最初は「あのー,若干王子入っていませんかー?」という感じだったのですが,回を追うごとに(3日×2回=6回見たワケです。)ノリがよくなり,最終日のアンコールでは,周りの黒人男性以上のスイング♪
おかげさまで(?),とても幸せな気分で,会場をあとにすることができました。
ああ,楽しい3日間だったわ〜〜♪♪

(01.11.11)

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