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くるみ割り人形

(新国立劇場バレエ団)

    クリスマスツリー ねずみ

 

02年12月22日(日)・23日(祝)・26日(木)

新国立劇場オペラ劇場

振付:マリウス・プティパ, レフ・イワーノフ
台本:マリウス・プティパ(E.T.ホフマンの童話による)
改定振付:ワシーリー・ワイノーネン
演出:ガブリエラ・コームレワ

音楽:ピョートル・チャイコフスキー

舞台美術・衣装:シモン・ヴィルサラーゼ
照明:ウラジーミル・ルカセーヴィチ

指揮:渡邊一正  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

   12月22日   12月23日   12月26日 
マーシャ 志賀三佐枝 高橋有里 宮内真理子
王子 デニス・マトヴィエンコ 小嶋直也
ドロッセルマイヤー ゲンナーディ・イリイン
シュタリバウム 石井四郎   内藤博
シュタリバウム夫人 湯川麻美子  
フランツ 大和雅美  
道化 吉本泰久  
人形 西山裕子  遠藤睦子 西山裕子
黒人 奥田慎也 マイレン・トレウバエフ 奥田慎也
おじいさん 佐藤禎徳 
おばあさん 田中りゑ  
ねずみの王様 市川透   貝川鐵夫 市川透
くるみ割り人形 伊藤隆仁
雪の精(ソリスト) 西山裕子,遠藤睦子 西川貴子,前田新奈 西山裕子,遠藤睦子
スペイン 西川貴子,マイレン・トレウバエフ 楠元郁子,市川透 
東洋 大森結城 湯川麻美子
中国 遠藤睦子,吉本泰久 丸尾孝子,吉本泰久
トレパック 前田新奈,楠元郁子,市川透   遠藤睦子,鹿野沙絵子,マイレン・トレウバエフ
パ・ド・トロワ 西山裕子,大和雅美,グリゴリー・バリノフ 伊藤友季子,斉藤美帆,グリゴリー・バリノフ
ばらのワルツ 湯川麻美子,川村真樹,鶴谷美穂,真忠久美子,奥田慎也,陳秀介,冨川祐樹,冨川直樹 大森結城,西川貴子,前田新奈,川村真樹,奥田慎也,陳秀介,冨川祐樹,冨川直樹

 

22日

志賀さんは上手でしたが,マーシャ向きではないかも・・・。
小柄ではありますが,雰囲気がお姉さんすぎて,1幕と2幕の前半はあまり似合っていなかったような気がします。
王子が登場したあとは,よかったです。華が足りないかなぁとは思いますが,音楽の雰囲気を上手に表現していて,特にグラン・パ・ド・ドゥでの貫禄と安定は見事。音楽が高揚するにつれて,彼女の貫禄も増していくような感じを受けました。

マトヴィエンコさんは,きれいでしたが,意外に地味(おまけに3幕の自前の衣裳も地味・・・笑)。
去年『眠り』で客演したときは,チャーミングなキラキラ王子様だったので,ちょっと驚きました。大人になって控え目に振る舞っていたとも言えるでしょうが,彼の魅力だった若々しい輝きが感じられなくて,「少女の夢の王子さま」度はあまり高くなかったです。(若々しさを求めるのは,こっちが少女じゃないからかもしれないけどー)

あまり調子がよくなかったのかもしれませんし,2幕のパ・ド・ドゥでちょっとしたリフトミスがあって,(それ自体はよくあることだと思うのですが)それ以後超安全運転になってしまったのが悪かったのかもしれません。
慎重を期するあまりリフトに入るのがかなり遅かったですし,(もちろんにこやかさは保っていましたが)視線がいつも下向きで,たぶんパートナーのウエストから下ばかり見ていたのではないのかなー?

去年の『ロミジュリ』では,もっと難しそうなリフトを,もっと危なっかしくても(←失礼ですみません)勢いで見せていてとても魅力的だったので,志賀さんとの再度の共演を楽しみにしていたのですが・・・。

あ,ソロはよかったです。特に緩急をつけた回転技は見事。ほんとに脚が細くて長いですね〜♪

 

23日

1幕の高橋さんは,喜怒哀楽をはっきりさせて,子どもらしさを上手に表現していました。
ドロッセルマイヤーにリフトされるところなど,小柄な上に脚の上げ方が上手だから,小さな女の子を持ち上げている雰囲気♪

ネズミと人形たちの戦闘シーンでは,おおっ,かなりお転婆っ。
新国立のマーシャは皆さん,チアリーダーの如く人形たちに声援を送ったり,クッションを投げたりの活発さなのですが,ネズミに駆け寄って頭をはたきつけるのは初めて見たような気がするなー。(笑)

そして,その女の子が,王子が登場すると段々と少女になっていく。
3幕のコウモリに襲われるシーンでは,後ろから王子の腰に手をやって頼ったりするの。うまいわ〜。(で,王子のほうも,片手を後ろに回してその手を握るのよん♪)

小嶋さんは,凛々しくて頼もしい王子として登場。
彼はソロに比べてパートナリングは苦手だと思いますが,この日は,素人目には完璧なパートナーに見えました。2幕の最後,マーシャのウエストに片腕を回してリフトをしながら回転する振付があるのですが,2人の調和したシルエットの美しさと段々と加速する回転には,うっとり〜。

グラン・パ・ド・ドゥでの高橋さんは,腕が長いので,リフトされたときのポーズがきれい。ソロも(技術的には志賀さんや宮内さんほど安定していないとは思いますが)軽やかで,可憐なお姫様でした。

小嶋さんは,「少女の夢の王子さま」度が高いとは言いかねる方ですが(←私に対しては異様に高いが,客観的に見て高くないだろうことは理解できる),その代わり「偉い王子さま」度が非常に高かったです。4人のカヴァリエたちへの威令はたいしたもので・・・カヴァリエはマーシャにかしずいているわけですが,そうか,それは王子が命じたからだったのね,という(考えてみれば)当たり前のことを再認識しました。

コーダのマネージュには・・・感激しました。(いや,特別なことは何もなかったです。以前と同じですけれど,でも,久々に見られて,そして以前と同じだったから・・・。)
まっすぐに伸びたつま先が常に上を向いていて,着地していないかのような,連続する跳躍の美しさ。

これなの。これがずーっと見たかったの。この1年間待っていたの。見られなくて悲しかったの。あなたの王子でなくちゃだめなの・・・そう思いました。
(なんか,こうして書くとかなり恥ずかしいですわね。第一,他のダンサーに失礼なような気も・・・。いくらなんでも「だめ」はないだろうとか,ルジマトフ王子はどうなるのか(笑)とか・・・。ううむ・・・,ま,いいや。とりあえず書いておこう。)

高橋さんの目覚めたあとの演技がよかったです。ただ単に人形を抱きしめるのではなく,まず不思議そうにじっと人形を見つめ,夢の中でのすてきなできごとを段々と思い出し,それが夢だったことを悟って,ちょっと淋しそうに,でも夢に導いてくれた人形に感謝しながら抱きしめる・・・。印象的な幕切れでした。

 

26日は,仕事の都合で遅刻してしまい,2幕からしか見られませんでした。

宮内さんの華奢な愛らしさは,夢見る少女そのものですね〜♪
ツリーが大きくなるのを見ているときの演技や行く先々にネズミたちがわらわらと出現して行き惑う場面など,ちょっとおっとりしすぎていて緊迫感が足りないような気はするのですが,彼女の場合,これはこれでいいのよね,上品なお嬢さんなんだから,と思える。美人はトクだわ〜。(笑)

彼女のマーシャは2年前も見ていますが,今回印象に残ったのは,指先の動きの繊細さ。2幕のパ・ド・ドゥやグラン・パ・ド・ドゥのヴァリアシオンではこれがとても効果的で,(少女ではない)清らかな乙女らしい艶が出ているなー,と思いました。

小嶋さんは,この日も立派な王子。
サポートは23日のほうがよかったと思いますが,ソロはこの日のほうが躍動感があったかな(前のほうの席で見ていたせいもあるかも)。跳んでいるときの彼って,どうしてこんなに脚が長く見えるのかしら〜?

今回かなり感心したのは,舞台の上にいるときは,どこにいても,何をしていても,マーシャに想いが向いていること(を観客に伝えられること)。まあ,今までできていなかったことが問題なのかもしれませんが・・・。(←誉めているんだか貶しているんだか)
これはたぶん,上半身の使い方が上手になったからではないかなー,と思います。胸から腕にかけての動きが以前より柔らかくなっていて,休演続きだったのに上達するとは,う〜む,この方はやはりただものではない・・・というのは,ファンのたわごとでしょうかねえ。

 

今回は,コール・ド・バレエが非常によかったです。
特に雪の場面の美しさは見事で,粉雪の雰囲気。ここの場面は,フォーメーションはきれいだけれど腕の動きが直線的すぎて今ひとつ好きになれないのですが,これくらい上手だと見応えがあるなー,と思いました。
「ばらのワルツ」は,もっと柔かくあってほしいですが(特に男性),夢の中のピンク色の花弁らしい雰囲気はそれなりに出ていました。

2年前の上演のときは,1幕の子どもたちや2幕の兵隊人形を楽しみました。今回もそういう場面もよかったと思いますが(特にマーシャのお姉さん役の方が愛らしくて上手),こういうふうに雪の場面や「ばらのワルツ」のほうが印象に残るのは,バレエ団のファンとして嬉しいことです。

 

それから,男性ソリストが充実しましたねー。前回,3幕は完全に女性上位で,男性で誉めたいのは市川さんのトレパックだけ(汗)という感じだったのですが,今回は,そのトレパックで「市川さんもなかなかよかったが,トレウバエフさんのほうがもっといい」などとほざけるようになったのはまことにめでたい♪

というわけで,3幕で印象に残るのは・・・
「スペイン」楠元さんの明るい雰囲気。遠藤/吉本の「中国」の愛嬌,特に吉本さんの跳躍。トレパックでの鹿野さんの楽しげな表情とトレウバエフさんのテクニックと勢い(23日は帽子を飛ばす熱演♪)。パ・ド・トロワでのバリノフさんの柔らかいアントルシャ・カトルの連続。

そして,グラン・パ・ド・ドゥでの4人のカヴァリエ♪
すてきな王子様に見守られながらカヴァリエたちと踊るアダージオは,少女の憧れの極みで,ワイノーネン版の最大の魅力だと思います。ですから,4人のカヴァリエの責任は重大なわけですが,今回はこの4人のダンサーがよかったです。サポートは安定していましたし,マナーも恭しくて堂々としていてすてき(特に陳さんがノーブル)。
これも,他の日にスペインやトレパックや王子を踊るダンサーがかけもちしているのではなくて,毎日同じメンバー,それもソリストクラスの,キャラクターよりダンスールノーブル向きのダンサーを充てることができたからではないかしらん。

 

演出については,やはりあまりいいとは思えません。特に1幕は,盛り上がりに欠けるし踊りが非常に少ないのでどうにも困ったものですし,3幕のディベルティスマンもあまり面白くない振付があると思いますが,由緒ある版だから(←古色蒼然ともいう),まあしかたないですね。

装置は深みには欠けますが,暖色系できれいだなー,と改めて思いました。衣裳とカツラは・・・慣れました。(笑)

 

全体としては,「堪能した」という感じ。小嶋さんの久しぶりの王子はもちろんですが,バレエ団全体としてより魅力的になっているのが感じられたのがとても嬉しかったです♪

(02.12.28)

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