J−バレエ 〜ダンス・クレアシオン〜 (新国立劇場バレエ団)

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02年11月16日(土)

新国立劇場中劇場

 

String(s) piece

振付: 金森穣

音楽: 池田亮司

舞台美術: 金森穣

衣裳: 金森愛

遠藤睦子, 酒井はな, 湯川麻美子, 市川透, 冨川祐樹, 山本隆之, 井口裕之, 貝川鐵夫

 

金森さんの作品は初めて。ヨーロッパ風コンテンポラリーという印象を受けました。

黒基調の装置,床の中央に大きな円でスポットライトが当たり,その中央から上手天井へとワイヤーが張られている。縦に一直線に並んだ8人のダンサーが,下手から上手に歩いていく・・・女性は黒でそれぞれスタイルの違うドレス,男性は黒の上下で上はスタンドカラーみたいなシャツ。おおっ,かっこいい♪
・・・と思ったのですが・・・その後がつらかった。
音楽が前衛的すぎて,私は苦手。振付もちょっと踊ってはすぐ終わってしまう,切れ切れな動きが続いて,あ,私,これはダメだわ・・・。
後半は,照明も明るくなり,音楽も多少音楽らしくなり(ちょっとウィレムス@フォーサイス作品みたいでした),けっこう踊りまくる感じになったので,それなりに楽しみましたが・・・。
そうそう,男女とも白いロングドレスの群舞大集団の出現には,ちょっと笑ってしまいましたー。(すみません)

装置と照明と衣裳はとてもすてきでした。
振付は・・・ううむ・・・コンテンポラリーには疎いのでなんとも言えませんが・・・一つだけ言えるのは・・・
プログラムによると今回の作品は「身体を“よじって伸ばす”動き」により「身体に奥行きができて,はじめて立体になり始める」という試みがなされていたらしいのですが,そういう感じは全然受けませんでした。普段と違って「よじって伸ばしている」コトさえ見えない私が悪いのか,振付者が求める動きをダンサーができていないのか,振付そのものがさほどでないのか・・・?

山本さんがよかったです。踊っているときはもちろん,うずくまってワイヤーの錘を動かしているだけでも,ただ走り出すだけでも,雰囲気があってかっこいいの。現代モノを踊る彼は,ほんとにすてきだわ〜♪
それから,貝川さんが,長身を生かしていて,目を引かれました。細くてノーブルな感じのダンサーという印象を持っていたので,おっ迫力もあるのね,と感心。

 

Nothing is Distinct

振付: 中島伸欣

音楽: 菅谷昌弘 ほか

舞台美術: 藤本久徳

衣裳: 滝川波留美

島田衣子(依頼ソリスト), 奥田慎也

高橋有里, 西山裕子, 鹿野沙絵子, 川村真樹, 神部ゆみ子, 楠元郁子, 鶴谷美穂, 丸尾孝子

陳秀介, マイレン・トレウバエフ, グリゴリー・バリノフ, 吉本泰久

 

中島さんの現代作品を見るのは3回目だと思います。
日本的なモダン・バレエという感じでしょうか。トウシューズではなかったと思いますが(←記憶不確か),動きはバレエに見えました。
音楽は現代の日本人作曲家によるものだそうですが,まあ何とか私の許容範囲かな。

《おおよその進行》
奥の紗幕の向こうに黒く浮かぶ女たちの退廃的なポーズ,奥から転がり出て何かにつき動かされるように踊る男たち(最初からエンジン全開で踊ってくれて嬉しい),倒れて苦しむその中の1人,胸の前で忙しく手を上下させる女性たち,群れからはじき出される(あるいは離れる)1人の少女,男女入り乱れての群舞,主役(?)2人以外全員での胸の前で忙しく手を上下させる動きの激しさ,空から降りしきるアルミ缶(スチール缶?),中空から吊り下げられた石油缶(?)のかたまりの下降,残された男女のデュエット,ダンサーの足が当たった缶が転がる動きと音,最後に再び紗幕の向こうに黒く浮かぶ女たち。 

装置は黒の中に(缶の)銀色が鈍く光るもので荒涼とした雰囲気でしたし,衣裳も黒系,照明も暗い中で,意味ありげなシーンが続く作品で,「現代の物質社会の危うさ」とか「人間疎外」とか,そういったメッセージ性を感じました。(プログラムを読むと,そう的外れでもないみたいです。)
こういうテーマを扱うというのは「ダサイ」になってしまう危険もあるでしょうが,最後のデュエットを除いては場面転換も多く,缶が振ってくるというケレン(?)も「おおっ」だったので,「社会派でなかなかかっこいいわぁ」と私は思いました。(何を見ても意味をアレコレ考えてしまうタチなので,わかりやすいのはありがたい。)

ゲストの島田さんは,踊りがうまく情感もあって,とてもよかったです。小柄なのも幸いして,「孤独な魂」という雰囲気ですてきでした。

 

FEELING IS EVERYWHERE

振付: 島崎徹

音楽: Libre VermrllMorirffrares nos conve」,JSBach「ヴァイオリンソナタ第1番ロ短調」より,Vivaldi「トリオト短調」より,Vivaldi「協奏曲ニ長調」より ほか

舞台美術: 山口賢一

衣裳:朝長靖子

音楽アドバイザー:榎本まゆみ

大森結城, 酒井はな, 西山裕子, 平山素子(依頼ソリスト), 前田新奈, 湯川麻美子, 鹿野沙絵子, 楠元郁子, 斉藤希, 丸尾孝子

 

島崎さんの振付は,TVで見たローザンヌコンクールの課題で見ただけで,まとまった作品としては今回初めて見ましたが,面白かったです。
動きはやはりバレエに近かったような気がしますが,珍しいモノを見たなー,という感じでしたし。

エスニック調の軽快な音楽に乗って,中南米のフォークロア風の色彩豊かな柄の変形チュチュ(? ミニスカートと言ったほうがいいのかな?)でダンサーが登場。楽しげに踊り出すので,ああ,最後が明るい作品でよかったわ〜,と安心。
その後も,ソロやデュエット,大人数の場面や4人の踊りなどが次々と続き,楽しげなものやちょっとドラマチックな踊りなどの変化もあって,楽しかったです。
出演者が女性だけですから,少々エスっぽい感じもあり,女子中学生が群れているみたいだなー,とほほえましく暖かい気持ちになりました。(注:「エス」というのは,昔の少女小説用語。今だと「百合」になるのかもしれませんが,戦前の女学校とかが舞台だから,もっと雅やかな感じ。)

衣裳がとてもチャーミングでした♪
短いスカートというのは,日本人バレリーナの鍛えられた脚には向かないというのが私の持論(←おおげさー)なのですが,今回の衣裳に関しては,色とりどりで1人ずつ違うにぎやかな柄の陽気さも手伝って,「健康な女性美」を強調していてよかったです。
そうそう,途中,平山さん(たぶん)が舞台の端で衣裳を脱ぎだしたので「ええっ,もしや,まさか・・・」とワイドショー的思考をしてしまいましたが,同じようにフォークロア風の柄が描いてあるレオタード姿になったのでした(笑)。なお,その後は,全員この衣裳で登場。
ヘアスタイルも,アップやポニーテールや三つ編み,下ろしている方など様々で,皆さんとても魅力的。

酒井さんがとてもよかったです〜♪
最初8人の群舞に続いて登場した瞬間,舞台がいっそう明るくなった感じ。うーん,ほんとに彼女は華があります。「さあ,スター登場っ」という感じでした。
そして踊りも見事。他のダンサーと同じ動きをしているときも,彼女だけ動きが大きく見える。『String(s) piece』も3月の『ドゥエンデ』もよかったし,彼女は現代モノも上手なのですねー。
それから,鹿野さんがすてきでした。どちらかというと元気ハツラツ系だった全体(←いや,もちろんそれでいいわけですが)の中で,一番大人の雰囲気で優美だったわ〜。

 

全体としては,『String(s) piece』<『Nothing is Distinct』<『FEELING IS EVERYWHERE』の順で気に入ったので,まずまず楽しめる公演でした。
特に『FEELING ・・・』は,バレエ団のレパートリーに入れて,時々見せてほしいなー。

それにしても,客席が「とほほ」の入りで,関係者の皆さんにお気の毒なようでした。まあ,もっと知名度の高い振付家の作品の「ミックス・プロ」であの程度でしたから,しかたがないのかなー,とは思いますが・・・。

(02.11.17)

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