ルグリと輝ける仲間たち(プログラムC)

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02年8月3日(土)

宮城県民会館

 

アレグロ・ブリランテ

振付: ジョージ・バランシン
音楽: P.I.チャイコフスキー

エレオノーラ・アバニャート, ジャン=ギョーム・バール

エミリー・フユ, ドロテ・ジルベール, ミリアム・ウルド・ブラハム, ポリーヌ・ヴェルデュザン
オドリック・ベザール, アドリアン・ボデ, ブリュノ・ブシェ, グレゴリー・ガヤール

若手とはいえ,さすがパリ・オペラ座のダンサー,それもルグリが選んだだけあります。皆,上手で,きれいで,音楽に遅れるダンサーもいない。
ただし,一人ずつが,あるいは各ペアがそれぞれ踊っているだけで,互いに合わせていないように見えて,私は気に入りませんでした。(NYCBもそうだったから,もしや,バランシンというのは,こういう踊り方が正しいのだろうか???)

主役二人もそれぞれ踊っている感じだったなー。
アバニャートは,ごめんなさい,他の4人より抜きん出ているとは思えませんでした。
バールは,端正な動き,余裕を持って踊っている感じで,おお,エトワール(♪)でしたが,もう少し躍動感がほしいかな。

 

エンジェル

振付: レナート・ツァネラ
音楽: アルヴォ・ペルト

マニュエル・ルグリ

初めて見ました。
ええと・・・こういう,何か深遠なテーマがありそうな,素の肉体(上半身は裸)で見せる男性ソロというのは難しいなー,観客を選ぶのだろうなー,と思いました。

つまり,私には,何の魅力も感じられない上演だったのですが,それは,ダンサーの責任ではなく,振付のせいでもなく(そんなにいいとも思わないが),ひとえに,私がルグリに感情移入がないせいではないか,と・・・。
ルジマトフの踊るソネット(アダージェット)は,振付自体はこの作品より劣ると思うのですが,私にとっては感動的です。それは,私がルジマトフというダンサーを愛しているからで,彼のファンでない観客にとっては「?」なのではないかと思います。
この作品も,ルグリのファンにとっては,心を打つものなのでしょう,きっと。

踊りは,たいへん上手でした。

 

くるみ割り人形

振付: ルドルフ・ヌレエフ
音楽: P.I.チャイコフスキー

レティシア・ピュジョル, エルヴェ・モロー

ヌレエフの振付というのは,どうしてこう難しいコトをいっぱい詰め込むのでしょうかねえ。見事に踊った場合でも,「よくこんな難しい踊りを・・・」と感心するばかりで,美しさにうっとりできないわけで,まして若手が踊った場合には・・・。全盛期のご本人が踊ればすてきに見えたのであろうか,といつも不思議に思うのですが・・・。
それから,ティアラが大きすぎるし,金色のチュチュというのも派手すぎ。ヌレエフ版ではこのパ・ド・ドゥはクララ役のバレリーナが踊るそうで,この姿が彼女の憧れなのでしょうから,「趣味が悪いコだなー」と言わざるを得ない。(笑)

ピュジョルはきちんとこなしていてさすが。特にヴァリアシオンは安定感があって上手でした。
モローは,脚がきれいで腕が長く,小さな頭,しかも上半身はしっかりしているという,立派なプロポーション。ハンサムだが主張が強くないお顔立ちからしても,王子向きのダンサーだと思いました。

 

チーク・トゥ・チーク

振付: ローラン・プティ
音楽: アーヴィング・バーリン

ジモーナ・ノヤ, マニュエル・ルグリ

黒のミニドレスにハイヒールの女性と蝶ネクタイと黒の上下(タキシードだったかな?)の男性による大人の恋の駆け引きのダンス。プログラムによると,アステアに触発されて,ジャンメールとボニーノに振り付けられた作品だそうです。

ノヤは大人の女の雰囲気はよかったですが,少々垢抜けないような・・・。
ルグリは・・・ううむ・・・私が彼に見せてほしいのは,「地の果てまでも」の恋であって,おしゃれな一夜の恋ではないのよ。

 

イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴィエイテッド

振付: ウィリアム・フォーサイス
音楽: トム・ウィレムス

ジモーナ・ノヤ, ジャン=ギョーム・バール

二人ともかっこよかったのですが,「なんか違うなー」と思いました。
もっとシャープというか,攻撃的というか,ぎりぎりで見せるというか・・・そういう感じがほしかったです。
バレエ団が違うから,オフバランスにしたときのパートナーシップに自信が持てなかったというコトでもあるのでしょうか?

 

『ラ・ヴィヴァンディエール』よりパ・ド・シス

振付: サン・レオンより,ピエール・ラコット(1976年)
音楽: J.B.ナダウ,チェーザレ・プーニの編曲による

ミリアム・ウルド・ブラハム, グレゴリー・ガヤール

レイラ・ディラク, エミリー・フユ, ドロテ・ジルベール, ポリーヌ・ヴェルデュザン

舞台で見たのは初めて。
主役二人はチャーミングで,牧歌的な雰囲気もあってまずまずでしたが,6人とか5人とか4人とかで踊るときに,イキが合っていないというか,合わせる気がないというか・・・。それぞれソリストの踊りでしょうから,コール・ドみたいに一糸乱れぬ動きは必要ないのかもしれませんが,せっかく何人かで踊っているのだから,タイミング(音のとり方?)とか,並ぶ方向とかは合わせたほうがきれいだし,見ていて楽しいのにー。

 

シンデレラ物語

振付: ジョン・ノイマイヤー
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ

エレオノーラ・アバニャート, マニュエル・ルグリ

現代版の『シンデレラ』。
とてもよかったです〜。

たしかハンブルク・バレエのジジ・ハイアットとルグリのために振り付けられた作品だと思いますから,振付そのものがルグリの個性(情熱的だが洗練されているとか,ダイナミックだが優雅だとか・・・)に合っているんじゃないのかしら。
白いドレス,金髪をなびかせて踊るアバニャートは伸びやかな動きが美しく,しかもコケティッシュな感じもあって,たいへん魅力的でした。

床の上に寝る(?)動きまで使ったデュエットでしたが,すべてが流れるように美しく,うっとり〜。
(二つの場面をつなげて上演したのでしょうか)最初はシンデレラと王子が出会って愛を確かめ合うシーン,それから,ちょっと切なさのある別れのシーンだということがわかって(←違ってたりして),抜粋だとは思えない満足感を味あわせてもらいました♪♪

 

ドン・キホーテ

振付: マリウス・プティパより
音楽: ルートヴィヒ・ミンクス

第1幕
キトリ: ジモーナ・ノヤ
バジリオ: マロリー・ゴディオン

第3幕
キトリ: レティシア・ピュジョル
バジリオ: マニュエル・ルグリ

女友達: ダフネ・ジェスタン, レイラ・ディラク, エミリー・フユ, ポリーヌ・ヴェルデュザン
闘牛士: オドリック・ベザール, ブリュノ・ブシェ, エルヴェ・モロー
漁師たち: アドリアン・ボデ, グレゴリー・ガヤール
花嫁の付き添い:ドロテ・ジルベ−ル

立派なセットもあって,主役以外の踊りも見せてくれて,とても楽しかったです。

ノヤは,踊りが少々荒い感じはしましたが,それが気風のいい姐御の雰囲気になっていました。ウィーン国立バレエがどのようなレベルのカンパニーか知らないのですが,やはりプリンシパルですねー。見せ方がうまいです。
ゴディオンは,体格的な釣り合いの問題からでしょう,片手でのリフトは見せてくれませんでしたが,ヌレエフ振付(という記載はないが,そのようです。)の特徴である細かい脚の動きが軽やかで見事。芝居も上手ですし,少年ぽい感じもあって,たいへんチャーミングなバジルでした。
闘牛士の3人は,おねえさんの目の保養。かわいい上に,踊ればかっこいい。
それから,ボデ♪ 無邪気な笑顔がとってもとっても魅力的でした〜。

3幕になだれ込む感じの演出もよかったですし,アントレとアダージオは,お見事。
ピュジョルは『くるみ』に続き,安心して見られるテクニックを披露。あまり華はないような気もしましたが,エトワールらしい「格」は充分あるのだなー,と思いました。
ルグリは,もちろん,かっこよかったです。そして,今さら言うまでもないですが,本当にサポートが上手ですね〜。ピュジョルの踊り方というか二人の安定感が『くるみ』のときと全然違うので,改めて感心しました。

続いて,花嫁の付添いのヴァリアシオン。うーむ,ジルベールはカドリーユだというのに,これだけ踊れるとはたいしたものですねー。(まあ,だからこそルグリが連れてきて,この場面で踊らせているのでしょうが・・・)

そして,バジルのヴァリアシオン♪ と思ったら・・・なぜかコーダの音楽が始まって,しかもルグリではなく,闘牛士のうちの二人がマネージュを始める・・・。え? え? と思ううちにグラン・フェッテが始まって・・・。ああ,驚いた。
びっくりしすぎたから,噂のピュジョルのトリプルを見逃したじゃないのー。ぷんぷん。
うーん,ちょっとケチだと思う・・・。ルグリは四つも踊るから,省略するのは納得できるけれど,ピュジョルのヴァリアシオンは見せてくれればいいのにー。

・・・とは思いましたが,最後に1幕の主役二人も加わって,全員の踊りも見せてくれましたから,あまり贅沢を言ってはいけないですね。
はい,たいへん楽しかったです。

 

というわけで・・・最初のうちは「ううむ?」が多かったのですが,段々気分が盛り上がる,楽しめる公演でした。
期待の若手の活躍も見られましたし,ルグリは(私としては気に入らないモノもあったけれど)ヴァラエティーに富んだレパートリーを見せてくれましたし,何より,地元でパリオペのダンサーの舞台が見られたわけですから,たいへんありがたかったです〜。

(02.8.11)

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