白鳥の湖(キエフ・バレエ)

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02年7月9日(火)

宮城県民会館

 

音楽: ピョートル・チャイコフスキー

台本: ウラディーミル・ペーギチェフ, ワシーリー・ゲリツェル

原振付: レフ・イワノフ, フョードル・ロプホフ
振付: ワレリー・コフトゥン

舞台美術: マリヤ・レヴィーツカヤ

指揮: ウラディーミル・コジュハーリ  演奏:キエフ・オペラ・バレエ管弦楽団

 

オデット/オディール: アンナ・ドロシュ

ジークフリート王子: マクシム・チェピーク

悪魔ロットバルト: マクシム・モトコーフ

パ・ド・トロワ: タチヤーナ・ベレツカヤ, ナターリヤ・ラゼプニコワ, ワジム・ブルタン

花嫁候補: タチヤーナ・ゴリャコーワ, タチヤーナ・ベレツカヤ, ナターリヤ・ラゼプニコワ, ナターリヤ・ドムラチェワ

大きな白鳥: ナターリヤ・マツァク, オクサーナ・グリャエワ, オレスヤ・マカレンコ, アナスターシャ・パヴルス

小さな白鳥: ナターリヤ・ドムラチェワ, ヤナ・サレンコ, カテリーナ・アライェーワ, カテリーナ・ティホノヴィチ

スペインの踊り: クセーニヤ・イワネンコ, ナターリヤ・マツァク, ウラジーミル・チュプリン, セルゲイ・リトヴィネンコ

ヴェニスの踊り: ワジム・ブルタン

ハンガリーの踊り: オクサーナ・グリャエワ, アレクサンドル・シャポヴァール

家庭教師: セルゲイ・リトヴィネンコ

王妃: リュドミーラ・メールニク

 

コフトゥン版『白鳥』は,たぶんバレエを見始めたころに見たことがあるものの,そのころは演出の違いなど全然分かりませんでしたし,遠い昔の話なので,今回,初めて見るのと同じような感覚で見ましたが,いやー,踊りまくる演出ですねー。

幕が上がると宮廷の人々(ワルツ)が登場するのですが,出てくるなりステップを踏み始める感じ。次に家庭教師がステップを踏みつつ登場。次にパ・ド・トロワのダンサーもステップを踏みながら・・・。ははー,と感心しているところに,ジークフリート王子は,なんと大きく跳躍しながら登場して,いきなり短いソロ踊る。印象的な登場とも言えますが,ちょっと驚いてしまった・・・。成人を迎えるのを憂鬱には思っていないという設定なのかしらん? 

で,ワルツが始まるのですが,この振付も,かなりリフトが多く,一つひとつの動きも大きいものでした。
最初のうちは,おお,派手な動きで見応えがあるなー,と思って見ていたのですが・・・ううむ・・・どうも不揃いでしたねー。一人ひとりは,ロシアバレエ風の身体の使い方できれいなのですが,全体としての調和がない・・・。振付をこなすのに精一杯というか・・・。

その後も,舞台の上にいる人は常に踊っているというか演技をするヒマがないというか。(笑)
家庭教師は王子に学問を勧めないし,王妃(←さすがに踊りはしなかった)も「遊んでないで身を固めなさい」と説教する様子がない。
ふーむ,どうやらコフトゥン版の王子さまは,伸び伸びと幸せに育ったお坊ちゃんというコトらしいですねー。そういえば,パ・ド・トロワのコーダの中盤で乱入して跳躍を披露したりもしていたし。踊るのが大好きな,無邪気なヒトなんですね,きっと。

そうそう,そのパ・ド・トロワはよかったです。
若さのラゼプニコワと落ち着きのベレツカヤという女性2人も魅力的でしたし,衣装も,蛍光色のピンクとブルーの張りのある濃淡の布地が重なったスカートがふわっと広がってすてきでした。
そして,ブルタンがよかった〜♪ 動きにキレがあって見ていてとても気持ちがいい。小柄で細いから主役は難しいのかもしれないけれど,これだけ王子が踊りまくる演出なら,むしろこの方に踊ってほしかったかなー,と思いました。

と思ったということは,つまり,王子を踊ったチュピークはさほどではなかった・・・というコトでもあるわけです。まずまずきれいな動きですし,安定していましたが,特筆するような魅力も感じられませんでした。不満ではないですが,この方の出演日を選ぼうとは思えない,というか・・・。

 

さて,1人残されたジークフリートのソロもやはり「可もなく不可もなく」だったのですが,引き続いてロットバルトが背後に登場。王子と同じ動きがあったりして,なるほど,この役も踊るのだなー。

王子と白鳥の出会いは・・・大きなリフトを多用した振付になっていました。ううむ,これでは,怖れとかためらいとか身の上話とか・・・そういうニュアンスが(全くなかったとは言わないが)伝わらないと思うんだけどー。

と,不満に思ううちに話は進み,白鳥たちの登場。ちょっと人数が少なくて舞台の上が淋しい。しかも,その分をカバーするためなのか,やはり振付の要請なのか,動きが大きい。大きくてもいいけれど,この場合,バタバタしていると言ったほうが正しいような・・・?
ううむ・・・その後も・・・小さな4羽も,大きな4羽も,そしてオデットも,元気がよくて,一生懸命大きく動きすぎる・・・詩情が感じられない・・・?? 
あのー,これじゃ,『白鳥の湖』じゃなくてバランシン作品みたいだと思うんですけどー???

ここに至って思いました。
・・・・・・・こりゃ,あかんわ・・・。

ダンサーそれぞれの腕の使い方などはきれいだと思うんですよ。でも・・・身体全体の動きや舞台全体を見たとき,これは『白鳥の湖』ではない。少なくとも,私が見せてもらうつもりだった,ロシアバレエの『白鳥の湖』ではない。(いや,もちろんロシアではなくてウクライナですけれど。)
情感を犠牲にしても派手な動きを見せるのがコフトゥン版の意図やあるいは現在の指導者の方針なのか,それともバレエ団のレベルが低くて振付に振り回されているのかは,私にはわかりません。
でも・・・これでは,「ロシア三大バレエの一つ」(←地元の主催者の宣伝コピー)というのは,看板に偽りありだよなー,と思いました。

 

舞踏会の場は,やはり舞台上の人数が少なかったですが,花嫁候補4人がそろって踊った後にそれぞれヴァリアシオンを踊り,コーダもあるというもので,なかなか見応えがありました。
ここでもベレツカヤがすてき。ベテランの味というのでしょうか,(技術や容姿は若いダンサーのほうが上だったかとは思いますが)顔の向きや音楽の見せ方が上手でした。
しかし,なんだって,4人おそろいの衣装なのでしょうかねえ?

で,民族舞踊ですが・・・いやはや,これがまた動きが派手なのよ。よく見る振付と基本的には同じだけれどステップの一つひとつの距離が大きい感じ。

なので・・・たいへん楽しかったです。(笑)
ヴェニスの踊りのブルタンの速い回転が見事でしたし,ハンガリーのシャポヴァールには,おおっ! と思いました。片膝を床に着いたまま,もう一方の脚で遠くに跳躍する振りが続くのですが,この跳躍の距離がハンパではない。いや〜,見事でした〜。

そして,ロットバルトのヴァリアシオンがあり,黒鳥のパ・ド・ドゥになりましたが・・・ここはまたも「とほほ」でした。
ドロシュは元気のいい踊りですから,オデットよりは合っていましたし,きれいではあったのですが,アダージオは勢いがありすぎで,ヴァリアシオンやフェッテは体育会系(ごめんなさいね)。一方のチュピークは技術的に物足りないし,跳躍の着地音が大きいし・・・。

ううむ・・・音楽のせいもあったかとは思うんですよ。
私は音楽にうるさくない観客ですが,いくらなんでも演奏が速すぎたような気がするなー。アレに合わせて振付どおり踊ったというコトだけで誉めていいのかもしれん。(笑)

 

3幕は・・・1幕2場と同様の印象でした。
もうこの辺りでは感動するのは諦めていたので,まあこんなもんかなー,と思って見ていましたが・・・あの白鳥たちが音楽に合わせて掌をヒラヒラさせるのはいったいなんなの???

演出的には,王子がロットバルトの翼をもぎとって勝利を得る,というタイプでしたが,途中でオデットが舞台から去るのが珍しかったです。「?」と思っていたら,最後に白鳥のヘッドドレスを外してティアラだけで登場。お,なるほど,人間に戻ったわけなのね〜,でも,衣装が同じでわかりにくいからあまり意味はないかも〜。(笑)

 

というわけで・・・一言で言うと「なんだかなぁ・・・」という上演でした。
コフトゥン版自体が「詩情より踊りを追求する」ために私の好みではなかったのか,カンパニーのレベルがこの振付を上演するには少々無理があるのか・・・???

でも,まあ,不満というほどではないです。地元での公演で経費も安くてすんだし,それなりに特色のある『白鳥』でしたから,これはこれで楽しめました。
もっとも,次にキエフ・バレエが来日するときに東京まで見にいきたいとは思えませんでしたけれど・・・。

(02.8.31)

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