02年2月9日(土)・10日(日)
新国立劇場オペラ劇場
作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本: ウラジーミル・ベギチェフ ワシリー・ゲリツェル
振付: マリウス・プティパ レフ・イワーノフ
改訂振付: コンスタンチン・セルゲーエフ 監修: ナターリヤ・ドゥジンスカヤ舞台美術・衣装: ヴェチェスラフ・オークネフ
照明: 梶孝三指揮: アレクサンドル・ソトニコフ 管弦楽: 東京交響楽団
9日 | 10日 | |
オデット/オディール | 高橋有里 | 高山優 |
ジークフリート王子 | 山本隆之 | 森田健太郎 |
ロートバルト | 佐藤崇有貴 | ゲンナーディ・イリイン |
王妃 | 鳥海清子 | 堀岡美香 |
道化 | グリゴリー・バリノフ | 吉本泰久 |
家庭教師 | 石井四郎 | |
王子の友人(パ・ド・トロワ) | 西山裕子,遠藤睦子,陳秀介 | 大森結城,前田新奈,法村圭緒 |
ワルツ | 湯川麻美子,楠元郁子,鶴谷美穂,丸尾孝子, 奥田慎也,冨川祐樹,貝川鐡夫,ゲンナーディ・イリイン |
湯川麻美子,楠元郁子,鶴谷美穂,真忠久美子, 奥田慎也,冨川祐樹,貝川鐵夫,陳秀介 |
小さい4羽の白鳥 | 中村美佳,斉藤希,難波美保,大和雅美 | 中村美佳,斉藤希,難波美保,大和雅美 |
大きい4羽の白鳥 | 大森結城,前田新奈,湯川麻美子,楠元郁子 | 大森結城,前田新奈,湯川麻美子,楠元郁子 |
スペインの踊り | 湯川麻美子,西川貴子,冨川祐樹,ゲンナーディ・イリイン | 湯川麻美子,西川貴子,冨川祐樹,佐藤崇有貴 |
ナポリの踊り | 中村美佳,吉本泰久 | 高橋有里,グリゴリー・バリノフ |
ハンガリーの踊り | 楠元郁子,市川透 | 楠元郁子,市川透 |
マズルカ | 北原亜希,杉崎泉,堀岡美香,遠藤睦子, 高木裕次,陳秀介,佐藤禎徳,奥田慎也 |
北原亜希,杉崎泉,鳥海清子,遠藤睦子, 高木裕次,陳秀介,佐藤禎徳,奥田慎也 |
2羽の白鳥 | 大森結城,前田新奈 | 大森結城,前田新奈 |
大きい4羽の白鳥 | 楠元郁子,鶴谷美穂,真忠久美子,湯川麻美子 | 楠元郁子,鶴谷美穂,真忠久美子,湯川麻美子 |
1幕2場と3幕のコール・ド・バレエが見事でした。単にきれいでそろっている白鳥であるだけでなく,全体として詩情があります。これに比べると,1幕1場は,上半身の動きの柔らかさが今一つだったような・・・。2幕のキャラクターダンスは,前回に比べるとおとなしめで,盛り上がりに欠けました。
いつも思うのですが,ここのカンパニーは,女性と男性の力の差がありすぎますねえ。まあ,男性のほうも日本のバレエ団としては悪いとは思いませんから,女性のレベルが高すぎるとも言えましょう。
9日,高橋さんのオデット/オディールは,スコティッシュ・バレエからの移籍直後に主役で登場した一昨年に続いて2回目でしたが,前回と同様,大人の女性のオデットと誘惑者のオディール。
彼女は,プロポーションや技術の面では,観客を惹きつける磁力はそんなに強いほうではないでしょう。(フェッテでドゥーブルは入れていたけれど) でも,自分の表現があるのがとてもすてき。黒鳥のパ・ド・ドゥの最初のほうでは,スペインのソリストにも色目を使ったりするのよ〜♪
山本さん(小嶋さんの代役)は,素直で単純明快なジークフリート。感じがよくて,サポートは堅実。ただ,あっさりしすぎていて,ノーブルさが足りないというか・・・王子らしくない・・・。少なくとも,セルゲーエフ版『白鳥』の王子ではないような気がします。白いタイツが似合っていないしー。(笑)
黒鳥のパ・ド・ドゥが盛り上がりに欠けたのは,高橋さんはかなり「見せた」から,表現・技術両面で,彼の責任だと思うなー。あ,でも,花嫁候補が踊っている間顔を曇らせて全然見ていないのが,実に魅力的でした。(ハンサムだから,暗い表情もすてきに見える)
10日は,新国立での初主役の高山さんが登場。素直で伸びやかな感じの踊りで,立派なオデット/オディールだったと思います。正統派と言いましょうか,白鳥は白鳥らしかったし,黒鳥は黒鳥らしかった。ココが印象的という場面はなかったですが,「白鳥」ではそういうことがけっこうあるし,悪い意味で印象に残るよりはずっといいですよね。
森田さんは,1幕で登場して颯爽と片手を上げた瞬間にこの人が主役だとわかるし,動きもノーブルで,舞台を大きく使っていました。うん,彼は,間違いなく王子です。
半年前よりスリムになったのかしら,白タイツも似合って若々しい王子でしたが,調子はあまりよくなかったのかも。本来もっと踊れる方だと思うのですが,黒鳥のパ・ド・ドゥでのソロは,少々「恋の歓び」というか勢いが足りなかったような・・・でも,その直後のオディールへの求婚と続く愛の誓いの熱烈さで,見事に挽回して印象的。王妃への抱きつき方の勢いも,切迫感があってよかった〜。
1幕のパ・ド・トロワは,9日は,遠藤さんの音楽的な踊りがよかったです。陳さんは,白いタイツが似合うのが何より(←こだわっている)。10日は,3人ともよかったですが,前田さんのアクセントのつけ方が,特に魅力的でした。
道化は,10日の吉本さんがすばらしかったです〜♪ 跳躍が高い,回転にキレがある,しかも端正。お芝居も爽やかで,品がいいです。9日のナポリも見事でした。
9日のバリノフさんのほうは,愛敬があって,かわいらしい。終始ちょこまかと動いて,王妃の裾を直したりしているのに,鳥海さんは彼につれない。「おどき」と手で追い払われたりしているのー。(笑)
3幕のキャラクテールでは,湯川さんと西川さんのスペインが,2人のイキもあって見事。特に湯川さんは,メイクもこの場面だけ妖艶で,上半身のそらし方にもアクセントがあって,とてもよかったです。
最後に白鳥たちの話に戻りますが,コール・ドだけでなく,ソリストもよかったです。特に,3幕の2羽の白鳥を踊った大森さんと前田さんは,長身を生かして,それぞれのソロも非常に印象的。音楽に合わせて踊るのではなくて,動きを止めたり(タメ?),流れるようだったり,うわー,見せるー,と感激しました♪
うーん,全体としては,2日間とも,少々盛り上がりに欠けました。まあ,『白鳥』の名演というのは難しいですし,こちらの精神状態もあったかもしれないので,不満というわけではないですが・・・。
(02.2.16)
04.01.01から