ドン・キホーテ(レニングラード国立バレエ)

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02年1月16日(水)

Bunkamura オーチャードホール

 

作曲:L・ミンクス

振付:M・プティパ  演出:A・ゴルスキー  改訂演出:N・ボヤルチコフ

美術:V・オクネフ  衣装:I・プレス

キトリ: オクサーナ・クチュルク    バジル: ファルフ・ルジマトフ

ドン・キホーテ:イーゴリ・ソロビヨフ   サンチョ・パンサ:ラシッド・マミン   ロレンツォ(キトリの父):アンドレイ・ブレグバーゼ   ガマーシュ:アレクセイ・マラーホフ   エスパーダ:ドミトリー・シャドルーヒン   大道の踊り子:エルビラ・ハビブリナ   メルセデス:オリガ・ポリョフコ   森の女王:オクサーナ・シェスタコワ   キューピット:ヴィクトリア・シシコワ   花売り:オリガ・プリギナ, ユリア・カミロワ   酒場の主人:デニス・ヴィギニー   ジプシー:ナタリア・オシポワ, アンドレイ・クリギン   ファンダンゴ:アンナ・ノボショーロワ, アンドレイ・クリギン   ヴァリエーション(3幕):イリーナ・コシュレワ, オリガ・ステパノワ  

 

ううむ・・・主役の2人は,あまりよくなかったです。

クチュルクは,容姿も雰囲気もテクニックもキトリ向きだと思って楽しみにしていたのですが・・・。緊張か不調かパートナーとのリハーサル不足か,はたまた力量不足かわかりませんが,技術も表現も今二つくらい(ごめんねー)。魅力的とは言いかねるキトリでした。(ちゃんとキトリだったとは思います。夢の場もキトリっぽかったけれど,まあ,白いバレエ向きではないから,しかたないでしょうねえ。)

ルジマトフも,今一つ。
動きが重いし,それを長年培った伊達男ぶりでカバーしているのが,見ていて切ない。
それに,全体に,なんというか・・・「ボヤルチコフ版の演出はこうだから,こう動かなくては」みたいな感じで・・・。あのねー,ファルフ,ゲネプロみたいに見えちゃった・・・。明日が本番なの? 私は明日は見られないのにー(泣)。

一番痛かったのは,恋の雰囲気が足りないこと。
双方それなりに努力していたとは思いますが,恋人同士というよりは,必死の妹と助けるお兄さんとか,一生懸命頑張る生徒と見守る先生のように見えたことは否定し難い(笑)。

と文句は言いますが,まあ,これは私のルジマトフに対する要求水準が高いせいですね。客観的に見れば,ステキなバジルと言えましょう。
特許申請を勧めたいような,彼ならではの見得の切り方はかっこいいし,コミカルな芝居やマイムが達者でないことによるかわいらしさは健在。
酒場のシーンでの,隅のテーブルからの手拍子には,クラクラきてしまったわ。
それから,狂言自殺のシーンがものすごく大仰で,楽しかったです〜♪ 大きな剃刀をお腹に突き刺すまでの演技は,なにしろルジマトフですから,切迫感に満ち満ちているわけです。筋を知らないで見たら,ほんとに自殺すると思うのではないかしらん。だから,十分間をとってから,顔を上げて左右を見回すだけで・・・あははは,笑ったわ〜。

 

大道の踊り子をハビブリナが踊ったのは,バレエ団の意気込みと言うべきでしょうし,メイクなども工夫していたようですが,ミスキャストではないかしらん?
エスパーダのシャドルーヒンは,颯爽よりは柔らかさが勝ちますが,なかなかステキ。赤いマントを広げて,マタドールたちを従えて,前に進んでくるところの上体の反りがよかったですー。
黒髪に染めたクリギンの,ジプシーもかっこよかった。(ファンタンゴはつまらなかったけれど。)
シェスタコワの森の女王が,とてもよかったです。跳躍の着地で多少のぐらつきはあったものの,首の傾け方(顔のつけ方?)が優美だし,上半身の動きに女王らしい貫禄がありました。(もしかすると,私は彼女のファンなのかな?)
グラン・パ・ド・ドゥで後のほうのヴァリアシオンを踊ったコシュレワも,チャーミング。
それから,ガマーシュのマラーホフ♪(まさか,かのマラーホフの親戚ではないですよねえ?)藤色の貴族風衣装で,エレガントを揶揄するとこうなる,というのを上手に見せていました。バジルの狂言自殺で腰が抜けてしまうのには笑ったー。

 

ボヤルチコフ演出は,前奏曲でドン・キホーテの出発までをていねいに見せるし,随所でドルネシアの幻影が登場して,親切で,わかりやすい。キーロフ同様に駆け落ち→ジプシーの場→酒場と話が進み,さらにお父さんとガマーシュが2人の後を追ってくるというお話の進行の合理性(?)もよかったですが,バジルは負傷したドン・キホーテのために助けを呼びにいったのではないのですかね? ほっぽって,酒場で楽しんでいてはいかんですねー。
あ,それから,風車騒動の後で登場するクモの怪物が6本脚なのは,いかがなものか?

 

とか何とかいろいろ覚えていて書けるのは,要は,ルジマトフに悩殺されなかったということを示しているわけですが,何のかのと言っても,3年ぶりに彼のバジルを見られたのは,やっぱり嬉しいことでした。
クチュルクも,現在のマールイと招聘元の営業政策(?)からいくと,こういうことでもないと,日本でキトリを披露する機会はなかったでしょうしね。彼女にとっても会心の出来ではなかったのかもしれませんが,カーテンコールで,花束を抱きしめて「やり遂げた・・・」という表情をしていたのが印象的でした。うん,彼も善行を積みましたね(笑)。

(02.1.17)

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