シンデレラ(新国立劇場バレエ団)

サイト内検索 01年一覧表に戻る 表紙に戻る

01年12月23日(日)

新国立劇場(オペラ劇場)

 

振付: フレデリック・アシュトン (監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス)

作曲: セルゲイ・プロコフィエフ

舞台美術・衣裳: デヴィッド・ウォーカー     照明: 沢田祐二

指揮: バリー・ワーズワース  演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団

シンデレラ:志賀三佐枝  王子:逸見智彦

義理の姉たち:マシモ・アクリ,堀登  仙女:大森結城  道化:グリゴリー・バリノフ

春の精:中村美佳  夏の精:遠藤睦子  秋の精:高橋有里  冬の精:前田新奈

父親:石井四郎  ダンス教師:吉本泰久  ナポレオン:小林由明  ウェリントン:貝川鐵夫
王子の友人:奥田慎也, ゲンナーディ・イリイン, 陳秀介, 山本隆之

 

2月公演に続いて,新国立3度目の上演。

四季の精の登場シーンで,背景幕が1枚上がるごとに次の妖精が現れるところとか,あの豪華な馬車とか,美術が美しいなー,と今回も感激しましたし,上演全体も楽しんできました。
今回は小嶋さんが見られないんだなあ,と思ってしまって,悲しくもなったけれど・・・。(やれやれ。出演者の皆さんには,申し訳ないことですね。)

 

志賀さんは,たいへんポジティブなシンデレラでした。
お掃除やお義姉さんたちのお世話がかいがいしくて有能そうだし,何があっても落ち込まず,前向きに明日を信じているような感じ。もちろん,悲しくなったりはするけれど,自分から立ち直るだけの強さがあるように見えました。
舞踏会では,手の差し出し方や頷き方などにも貫禄があって,どこかの国から来た謎のお姫様というよりは,「お待ちかねの王子の婚約者さまがご到着になりましたー」という風に見えました。本来のシンデレラのお話とは違うとは思いますが,プリマらしくて立派ではあります。
そもそもアシュトン版は,いきなりチュチュ姿の四季の精や星の精たちが入ってきたのに,宮廷の人々は,ぜーんぜん驚かないし,王子もいそいそと階段までエスコートしにいくので,そういう演出に合っている,という意味でもよかったかも。
1幕や3幕のソロは,上半身が硬いかなー,という気もしましたが,アシュトンの振付のせいかしらん。(素人にはよくわかりません)チュチュ姿での踊りは,ピュアな宝石の輝き。たいへん美しかったです。

逸見さんは,優しそうで,あま〜い王子さま。輝く白の衣装が,まあ,似合うこと,似合うこと。
ただ,少々風格に欠けますね。エレガントだけれどノーブルではない,と言えばいいのかな。全体に,自信なさげに踊っているように見えたし・・・初役のせいかしらん。
先週見た「くるみ割り人形」の王子は,お菓子の国の王子だから,甘くて誠に結構でしたが,「シンデレラ」は童話のお話とはいえ,一応宮廷を構えているわけだし,「玉の輿」ですから,もう少し「色男だが金と力もある」という風であってほしーなー,と思いました。
いや,実際には「力」はあるわけで,サポートがよかったです。バレリーナをきれいに見せつつ,自分もきれいに見せることも忘れないというか。2幕のパ・ド・ドゥの最後,シンデレラのウェストに両腕を巻きつけるようにしてリフトして回るところとか,3幕で,頭上高くリフトしたパートナーをゆっくり下ろしながら,後ろ脚をすっと伸ばしてポーズを決めるところが見事でした。

結婚式の場の始まりのほうに,2人が舞台の左右に分かれて,星の精たちが並ぶ中を,長いローブを引きながら前方にゆっくりと歩んでくるシーンがあります。
志賀さんは,ここで,しっかりと前を見て,実に確信に満ちた足取り。それは,自分の未来を見つめているかのよう。これは,シンデレラにとって恋の成就の結婚式であるだけでなく,戴冠式でもあるのだなあ,と思いました。

一方の王子は,彼女との未来に向けて,凛々しく高みを見つめて・・・・・・
というようなところは,全然カケラもなくてぇ,顔を横に向けて,ずぅーーーーーっとシンデレラばかり見ているのー。(大笑い〜)
いやー,まいった,まいりました。降参します。逸見さん,ナイス! 名演!!!
ここに至って納得しましたよ,全く。少々頼りないけれど(失礼!)妻を心から愛している王子と未来志向で既に国母の風格を備えたシンデレラというのは,今後の人生を考えると,カップルとしてはいいのかもー。家庭は円満,宮廷は安泰,領地もシンデレラのおかげでますます栄えるに違いない。うん,見事なハッピーエンドでした〜。

 

お義姉さんたちは,ますますパワーアップしていました。正直言って,ドタバタすぎて,あまり楽しくなかったですが,それは,たぶん,見る側の気分のせいでしょう。あと,ウェリントンが長瀬信夫さんでなかったこともあるのかな。今回の貝川さんも,長身の二枚目ではあったけれど,若いから,お義姉さんに完全に勢い負け(笑)。長瀬さんの飄々とした味が見たかったです。
10月から加入のバリノフさんの道化は,元気がよくて,愛敬もある。踊りは,もう少しだけきれいにね〜。
星の精(コール・ド)は,全体で「自分の役を踊っている」という感じでよかったですが,4日間連続で5回公演のちょうど真ん中だったせいか,ソリストは少々お疲れだったかしら。中では,高橋さん(秋の精)のポール・ド・ブラ(というには鋭角的な振付だけれど)がきれいで,訴えかけてくるものがありました。

(01.12.26)

サイト内検索 上に戻る 01年一覧表に戻る 表紙に戻る

04.01.01から