シンデレラ(新国立劇場バレエ団)

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01年2月23日(金),24日(土),25日(日)

新国立劇場(オペラ劇場)

 

振付: フレデリック・アシュトン (監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス)

作曲: セルゲイ・プロコフィエフ

舞台美術・衣裳: デヴィッド・ウォーカー     照明: 沢田祐二

指揮: アラン・パーカー  演奏: 東京交響楽団

   23日  24日  25日
シンデレラ アマンダ・マッケロー 酒井はな アマンダ・マッケロー
王子 小嶋直也 イルギス・ガリムーリン 小嶋直也
義理の姉たち マシモ・アクリ,堀登
仙女 湯川麻美子 大森結城
道化 根岸正信 堀内充 根岸正信
父親 石井四郎
ダンス教師 佐藤禎徳 秋山聡 佐藤禎徳
春の精 西山裕子 高山優
夏の精  西川貴子
秋の精 高山優 遠藤睦子
冬の精 前田新奈
ナポレオン 伊藤隆仁 小林由明 伊藤隆仁
ウェリントン 長瀬信夫
王子の友人 市川透,奥田慎也,ゲンナーディ・イリイン,山本隆之 市川透,奥田慎也,ゲンナーディ・イリイン,オリバー・リドー 市川透,奥田慎也,ゲンナーディ・イリイン, 山本隆之

 

楽しかったです〜♪

まず,2人のお義姉さんが楽しい。
意地悪というよりはワガママで,憎めない役回りですよねえ。この作品の実質上の主役は,シンデレラと王子ではなく,この2人なのではないか,という気さえするほど。
24日は,母を誘っていったのですが,もう大受けでしたー。3幕などは,2人が登場しただけで笑い出す始末。(ちなみに母は,2幕の最後,シンデレラの早替りにもいたく感心していました。素直でありがたいお客さんだわ〜)

初演のときは「ちょっとついていけないかも」と思った,ナポレオンとウエリントンも,今回は楽しめました。(長瀬さんがすてき♪ かつてのダンスールノーブルが,こういうふうに活躍できるのよね。男性ダンサーは,バレリーナより得かも)

 

しかし,アシュトンの振付というのは,普通のバレエ(『白鳥』とか『眠り』とか・・・つまり,ロシア・バレエというコトかな)とは違いますねえ。腕の動きは鋭角的で機敏だし,身体の向きなんかも,え? ここでこっち? という感じだし・・・。
それと,季節感が日本と英国は違うのね,と思いました。春の精が,なんでこんなにパキパキ踊るのー? とか・・・。

 

マッケローさんは,粗末な服でのシーンは,虐げられた中でも明るさを失わない娘,という趣でなかなかよかったですが,2幕の舞踏会と最後の結婚式は少々地味。
踊りも,特に初日は,硬いというかなじんでいないというか・・・ポーズも美しくないですし・・・ううむ・・・ゲストとしては,問題ありでしょうねえ。

まったく,なんで初役のゲストなんか呼ぶんだか・・・と怒るべきなのでしょうが,実は私は,彼女に来てもらって,とってもとってもよかったな〜,と思っています。
なぜなら,小嶋さんが嬉しそうだったから。(えへへ)

どこがどう違うか,と聞かれると困るけれど,いつも以上に,伸び伸び踊っているように見えました。パートナーシップも,なかなかよかったし。
カーテンコールでキスまでしたので,仰天しました〜〜〜。うーむ,ああいうコトをしでかす人だとは思ってもみなかったわ〜。

マッケローさんのどこが彼のパートナーとしてよかったのかはわかりませんが,シンデレラのほうから王子に靡き寄る感じがあったのは,たしかです。それは,24日の酒井さんにも,初演のとき見た吉田都さんにもなかった,たおやかな女らしさ。
だから,二人で寄り添う場面などに,とても雰囲気が出たのだろうと思います。

 

というわけで(?),小嶋さんの王子は,とてもよかったです。
一言で言えば,俊敏で,軽やか♪
彼には,プティパの主役より,こういう軽い王子さまのほうが似合っているのかもしれません。(ちょっと残念だったりもする)

片手を上げての登場シーンは爽やかだし,立ち姿は凛々しい。シンデレラには恭しくて,お姉さんたちへの反応は,何をしているわけでもないのに,タイミングが上手だからユーモラス。
跳躍は清々しい美しさで,回転は余裕を持って終わる。特に,4人の友人(四季のカヴァリエ)を従えて,跳躍しながら進み出るところの躍動感!
マントを翻しながらシンデレラの家に登場したときには,きゃあああ♪ と,女子高生の昔に帰って,熱狂してしまいました〜。

ああ,ほんとにステキだったわ〜♪♪

 

さて,理性を取り戻して・・・24日の主役ですが・・・酒井さんは,「健気な働き者」というステレオタイプのシンデレラではないですね。
暖炉の火をじっと見つめる幕開きのシーンからして,「情念」みたいなモノが感じられる。粗末な服でのソロは,感情の振幅が大きくて,たいへんドラマチック。お掃除がなおざりなのも,すばらしい!
チュチュの場面は,華やかで,妖艶でさえありました。舞踏会での登場シーンでは貫禄が感じられ,さすがは,この劇場のプリマ,という感じ。
ただ,四季の精が次々現れるシーンで「わーい」と喜ぶ演技をするのが,子どもすぎて疑問でしたが・・・どういう解釈なのかしら?

ガリムーリンさんは,明るい持ち味だからこの作品の王子にはあっているのかな,と予想していたのですが,ううむ・・・ロシア風の王子すぎると言うべきか,よく言えば荘重,悪く言えば垢抜けない。作品全体の中で,少々浮いて(沈んで?)いたように思います。
磐石のサポートは立派ですが,踊りはキレが悪かったなあ。(失礼ながら,少々太りすぎでは?)

 

道化は,かわいらしい王子のお供の根岸さん,斜に構えた堀内さん,どちらも楽しかったです。
妖精たちの中では,西川貴子さんの夏の精が,「ダル」な夏の雰囲気を上手に表現していました。
星の精たち(コール・ド)は,軽快で音楽的。見事だったと思います。

 

四季の精の登場シーンで小姓が持っている小道具の細かさとか,舞台を一回りするだけなのに豪奢な馬車が登場することとか,衣装や装置も凝っていて,やっぱり,これくらい豪華だと,「堪能した〜」という気分になれますよね。

特に印象的だったのは,結婚式の始まり。シンデレラと王子が結ばれて舞台が暗転し,暗い中,奥に小さな光が一つ,また一つと現れるところ。(星の精たちが,ペンライト(?)を持っているのー。)
そして,最後のシーン。奥で主役が寄り添い,2人が見つめる空には星が瞬く・・・。とてもロマンチックな幕切れで,うっとりしました。

うーん,とても楽しめて,そしてステキな舞台でした♪

(01.12.13)

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