華麗なるクラシック・バレエ・ハイライトAプロ
(レニングラード国立バレエ)

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最近は夏にも来日するようになったレニングラード国立バレエですが,おなじみのパ・ド・ドゥを並べただけ,という感じのプログラムで,あまりにも芸がないような・・・。

まあ,でも,そういう公演名なわけですし,私のお目当てのルジマトフはいい舞台を見せてくれたので,別に文句を言う気はありませんが。

 

01年7月24日(火)

新宿文化センター

 

『パキータ』より 振付:プティパ

ディアナ・ヴィシニョーワ, ファルフ・ルジマトフ, レニングラード国立バレエ

なにしろ,一番最初からルジマトフの出演なものですから,まず,それが嬉しい♪

レニングラード国立のバレリーナが続々と登場し,そして,ヴィシニョーワの登場。
髪を栗色に染めて,濃いメイク,そしていっそう細くなった姿に一瞬驚いたものの(いや,実は,出てきた瞬間,ヴォロチコワかと思ってしまった・・・似ていませんでした?),その輝きは圧倒的。テクニックの見事さはそのままに,動きがさらにワガノワ風に上品になり,貫禄も増して,実に見事なプリマでした。

2曲目で,ルジマトフの登場。
コールドが下手奥から上手前に並び,その上手前に立つヴィシニョーワと,下手の奥に登場するルジマトフ。この登場のタイミング,しばらくその位置でヴィシニョーワを見つめるときの,立ち姿の美しさ,そして,ゆっくりとヴィシニョーワに近づく動きの間のとり方・・・この,あざといほどの,かっこよさをなんと表現したらいいのでしょう。
そう,これよ〜,これを待っていたのよ〜。ああ,久々のルジマトフ節だわ〜(笑)。

・・・というわけで,ここですっかり悩殺されてしまい,このあとは,ひたすら彼を見つめておりました。

 

『白鳥の湖』よりグラン・アダージォ 振付:プティパ

エルビラ・ハビブリナ, ドミトリー・ルダチェンコ

ううむ・・・ハビブリナはオデットのタイプではないようです。全然舞台に引き込まれなかったのは,「パキータ」に魂を奪われたせいだけではないと思うなあ。
ルダチェンコは金髪でまあハンサムかな。サポートの上達を望みます。

 

『ゴパック』 振付:ザハロフ

マイレン・トレウバエ

赤いバルーンタイツで,元気よく舞台を跳ね回る,コンサート向きの楽しい演目。
ちょっと高揚感が足りなかったような・・・。技術的にはいいのですが,野性味とか,愛敬とか,何でもいいけれど,もう少し味付けがほしかったかな。

 

『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ/イワノフ

オクサーナ・シェスタコワ, ドミトリー・シャドルーヒン

よかったです。特にアダージオが。

シェスタコワは,誘惑するオデット。全身の動きが王子を誘っていて,それが,かわいらしい顔立ちとあいまって,蠱惑的。
一方のシャドルーヒンがまた,こりゃ欺しやすそうだわ,という感じの人柄のよさそうな王子で,非常に気に入りました。(全幕で見たら,情けなくて腹がたつかもしれないが。)
2人とも,ソロが今一つだったのが惜しまれます。

 

『ド・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

オクサーナ・クチュルク, ミハイル・シヴァコフ

クチュルクは,かわいらしいキトリかと予想していたら,けっこう妖艶な感じでした。白系のチュチュで,髪の横のほうに一輪の真紅のバラをつけて,美しかったです。
シヴァコフは,特にこれといって・・・あ,この方にも,サポートの上達をお願いしたいです。

 

 

『ばらの精』 振付:フォーキン

ロマン・ミハリョフ, アナスターシャ・ロマチェンコワ

すみません,私,この2人の「ばらの精」って苦手なんですよ。
ミハリョフの跳躍の着地音が以前より小さくなったので助かりました。

 

『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

イリーナ・ペレン, ドミトリー・リシンスキー

ペレンは容姿が美しいし,動きも流麗なワガノワ・スタイルなのですが,オーロラとしては,まあ普通。1月の全幕のときは,もっとずっと輝いていたのになあ。ガラで「眠り」は難しいということでしょうかねえ。
リシンスキーは,容貌もプロポーションも所作も全部王子さまで,ステキ〜,と思ったのですが,ソロがちょっと・・・。
あと,この方にもサポートの上達を・・・(←これで3人目。お願いしますよー,先生がた)

 

『スポーツのワルツ』 振付:シードロフ

ドミトリー・ルダチェンコ, マイレン・トレウバエフ

若い男性ダンサーのテクニックを披露するための,深い意味のない,楽しい作品。軽いモノで,肩のコリをほぐして,メインイベントにそなえましょうね,という配慮のうかがわれる作品配列で,結構でした。(←ホントにそうなのか?)
しかし,バトミントンのラケットでテニスをするというのはいかがなものか?(笑)

 

『ジゼル』2幕より 振付:コラリ/ペロー

ジゼル:ディアナ・ヴィシニョ−ワ  アルベルト:ファルフ・ルジマトフ  ミルタ:オルガ・ポリョフコ  ハンス:ミハイル・シヴァコフ  レニングラード国立バレエ

とても,感動しました。
1幕の後半3分の2くらいの上演だったのですが,パ・ド・ドゥだけの上演と違い,ウィリーたちもヒラリオンも登場して,見応えがありました。(ヒラリオンが力尽きるのを,うっすら笑いを浮かべながら見下ろしているミルタの恐ろしさ!)
そして,何より,ヴィシニョーワとルジマトフが描いた物語は,まるでそれだけで一つの完結した作品だったように私には感じられました。

この作品の2幕でのルジマトフの登場は,いつも陰鬱です。恋人を死に追いやった悔恨に満ちていて,その,マントを引きずるようにして舞台に現れるときの暗さは,(もちろん美しいけれど,)ファンをうっとりさせるというより,苦しい気持ちにさせるものです。
そして,そんなアルブレヒトの前に現れたヴィシニョーワのジゼルも,非常に静謐で・・・妙な言い方かもしれませんが,私には「悲哀に満ちた亡霊」に見えました。あるいは,「影」のような存在に見えた,と言ったほうがいいかもしれません。

ルジマトフのアルブレヒトには,ジゼルは見えていないようでした。
気配は感じる・・・しかし,求めても彼女の姿は見えない・・・彼女が落とした百合の花は自分の手の中にある・・・。
この演技は終始変わらず,彼女を求めるときには常にほとんど客席側の虚空を見つめていて,二人で踊るときにも彼女に触れていないかのよう。そして,ミルタに懇願するときには,自分の命乞いをしているというより,ジゼルを返してほしいと願っているように見えました。あるいは,一目だけでもいい,ジゼルを見せてほしいと願っているように。
そして,ヴィシニョーワも,彼を救おうとしている,無私の愛の象徴としてのジゼルには見えませんでした。ただ,ふわふわとそこに漂っているばかり・・・。

最後の,アルブレヒトが力尽きる踊りの直前に,ジゼルにふれないで抱きしめた(抱きしめようとしたが,そこにはいなかった,と言うべきか。)のには,そうか,彼には最愛の人に触れることさえ許されていないのだ,と改めて思わされ,鳥肌が立つようでした。

もしかすると,ジゼルの気配を感じたというのは,アルブレヒトが死んだ彼女を思うあまりの幻覚だったのかもしれません。そうだとすれば,夜明けの鐘の音は,彼を現実に引き戻すもので,もう一度恋人をこの手に抱けるのではないかという思いは,実は全くの幻だったことを,彼に悟らせるものだったのでしょう。

レニングラード国立バレエの演出では,結末は,短調に編曲された音楽で,アルブレヒトは,ジゼルの去ったあと,上手の奥から,下手前のジゼルの墓に向かって駆け寄ります。ルジマトフは,このシーンで,いつもは美しい跳躍の連続を見せるのですが,今回はそれをしないで,まっすぐに墓の前に駆け寄り,倒れ伏してひたすら慟哭していました。

その姿を見ながら,アルブレヒトにとっては,これから生き続けていくよりも,自分が作り出した幻の世界の中で,ミルタの命ずるままに,死んでしまったほうが幸せだったに違いない,と確信しました。
そして,彼の見た幻覚は,ジゼルにもう一度会いたいという思いによるものというよりも,彼女の後を追って死んでしまいたいという願望によるものだったのかもしれない,とも思いました。
しかし,彼は死ぬことはできなかった・・・ウィリーの世界は,半ば狂気に陥った彼の見た幻覚にすぎなかったのだから・・・。
そして,正気を取り戻した彼は,生き続けなくてはならない。最愛の人を失った心の空洞を抱え,彼女を殺したという罪の意識に苛まれながら・・・。

そんなことまで考えさせられる・・・そう,ルジマトフというダンサーは,まことに,私の妄想を刺激する表現者です。

(01.11.11)

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華麗なるクラシック・バレエ・ハイライトBプロ
(レニングラード国立バレエ)

01年7月25日(水)

新宿文化センター 

 

ルジマトフの日本公演(←レニングラード国立の公演だと知ってはいるが,主観的には,彼の公演なのよ。)2日目です。
全体としては,昨日の「ジゼル」があまりにすばらしすぎただけに,昨日ほどではないかなあ,と・・・。

 

『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

オクサーナ・クチュルク, ミハイル・シヴァコフ

Aプロと同じ演目・出演者。

うーん,2日続けて見ると,「ドンキ」としては,今一つ高揚感に欠けたような・・・たぶん,2人の間の「丁丁発止」とした感じが足りないのではないでしょうか。
コンサート形式の公演では,いつも見る演目であるだけに,こちらも贅沢になってしまいます。

 

『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ 振付:コラリ/ペロー

エルビラ・ハビブリナ, ドミトリー・リシンスキー

ハビブリナは,オデットよりジゼルのほうが,断然いいと思いました。大きな瞳が,哀しげで優しげで,とても情感があります。
しかし,彼女のパートナーは,前日のルダチェンコにせよ,この日のリシンスキーにせよ,踊るだけで精一杯という感がありました。それ自体は,若いからしかたないと思いますが,看板プリマのハビブリナのパートナーとしては,役不足なのではないでしょうかねえ。ここは一つ,ミャスニコフにご出馬いただきたかったわ。

 

『ゴパック』 振付:ザハロフ

マイレン・トレウバエフ

Aプロと同じ演目・出演者。感想も同じ。

 

『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ/イワノフ

オクサーナ・シェスタコワ, ドミトリー・シャドルーヒン

Aプロと同じ演目・出演者。

シャドルーヒンは,サポートは上手だし動きも品がいいのですが,テクニック不足なので,ガラ・コンサート向きではないかも・・・。

 

『パキータ』より  振付:プティパ

ディアナ・ヴィシニョーワ, ファルフ・ルジマトフ, レニングラード国立バレエ

Aプロと同じ演目・出演者。
この日は,前日よりは,落ち着いて見ることができました。

ルジマトフが,コンサートでの『ドンキ』パ・ド・ドゥやこういう作品で見せる,いわば芝居がかった表現は,「この人以外誰ができるかっ」という独自の芸風(笑)なわけで,あと一歩踏み出すと,バレエが求める品のよさから逸脱するおそれがあるものなのではないかと思います。
日本での人気が絶頂だったころの彼は,そのぎりぎりで勝負しているようなところがあって,時として「ちょっとやりすぎじゃないのぉ,ファルフ」と,つぶやいたりしたこともあったのですが,今はもう大丈夫♪
何をやっても,身体の端までコントロールされていて,洗練されたクラシック・バレエの世界になるのよね。
年齢的なものでしょう,かつてほどの跳躍の高さや回転の勢いはないものの,そんなことは問題ではないくらいに,ほんとうに美しい〜。

 

 

『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

イリーナ・ペレン, ドミトリー・リシンスキー

Aプロと同じ演目・出演者。

まるで,『眠り』を踊るために生まれてきたかのような,美男美女のカップルだなあ,と改めて感心しました。
が,リシンスキーはお疲れのご様子。パ・ド・ドゥ2つでこれでは困りますねえ。せっかくの王子さまの容姿がもったいない。体力増強をお願いしたいです。

 

『騎兵隊の休息』よりパ・ド・ドゥ 振付:プティパ

オクサーナ・クチュルク, ロマン・ミハリョフ

とても,よかったです。
楽しくて,軽やかで,クチュルクもミハリョフも,とてもチャーミング♪
2人とも小柄なテクニシャンなので,肩の上に腰かける形のリフトや2人で同じ動きをするところなどが愛らしいですし,ソロも,踊り比べ,という感じで,見事。特に,クチュルクのパ・ド・シュバル(たしか,そういう名前のパだったような・・・)が軽やかでステキでした。

 

『カルメン』 振付:べリスキー

ディアナ・ヴィシニョーワ

久々に見る,ペリスキー版カルメン。
こんなに,体操っぽかったですかね,この振付?

ヴィシニョーワは踊りは見事だし,スターの輝きだし,この体操のような振付を彼女ほど見事にバレエとして表現できる人はいないと思います。さすが,オーダーメイドの作品だけのことはある!
一瞬の炎のように燃え上がり,周りをすべて焼き尽くすようなダンス・・・うーん,でも,これ,カルメンかなあ???

 

『スポーツのワルツ』 振付:シードロフ

ドミトリー・ルダチェンコ, マイレン・トレウバエフ

Aプロと同じ演目・出演者。感想も同じ。

 

『アダージェット〜ソネット』 振付:ドルグーシン

ファルフ・ルジマトフ

一昨年の「ルジマトフ シェイクスピアを踊る」,昨年「ルジマトフ&レニングラード国立バレエの詩情」に続く上演。

この日は・・・そうですね,昨年ほど胸に迫ってはこなかったです。
昨年は,「ファルフ・ルジマトフ」自身を見せられているようで,見ているのがつらくて切なかったのですが,この日は,舞台の上にいたのは,一人のダンサーで,割合平静に見ていることができました。

あまりにも感動的なアルブレヒトを見てしまった翌日という,こちらの精神状態の問題もあったのかもしれませんが,彼自身が手探りで踊っていたような気がするなあ・・・。

いや,もちろん,悪かったわけではなく,心動かされるダンスではあったのです。
こちらが贅沢になっているということですね。すみません。

 

この日は,出演者総登場のフィナーレがありました。

レニングラード国立のダンサーが,次々とカップルで登場。ヴィシニョーワは下手から,バレエ団の男性陣以上ではないか,という大きな跳躍で登場。いや,すごいわ。
そして,ルジマトフ御大は,後ろから登場して,いきなり連続回転(ア・ラ・スゴントというらしい)を始める・・・。一瞬,そんなサービスしてくれなくてもいいのに,十分なのに,と思ってしまった・・・でも,途中から,破顔一笑! だったので,とても幸せな気持ちになれました。彼にとっても,嬉しい舞台だったのかな,と思えて・・・。

(01.11.11)

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華麗なるクラシック・バレエ・ハイライトBプロ
(レニングラード国立バレエ)

01年7月26日(木)

長良川国際会議場センター 

 

ルジマトフの日本公演(←あいかわらず不正確な表現で申し訳ない。)最終日は,初めての岐阜市,長良川国際会議場。

岐阜駅について,遅い昼食をとろうと観光案内所で尋ねたところ,岐阜の名物は,「味噌カツ」だとか・・・? それは,名古屋ではないの? ・・・いえ,岐阜の味噌カツは,赤味噌のところが違います・・・結局,串カツのお店に行きました。
「老舗」を予想して行ったら,「昔からの大衆食堂」という感じのところだったので,思わず生ビールを頼んでしまいましたよ。
カツは,甘めの味付けで,おいしかったです♪

さて,バレエに話を戻しますと・・・3日連続公演のせいか,お疲れの出演者も見受けられましたが,まずまずいい舞台でした。

 

『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

神谷俊江, ミハイル・シヴァコフ

ご当地のゲスト(越智インターナショナル・バレエ出身)が最初に出演して,雰囲気を盛り上げようという配慮だったと思うのですが,残念ながら,盛り上りませんでした。
魅力的なキトリではなかったとは思いますが・・・うーん,お客様もちょっと冷たいと思うなあ。

 

『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ 振付:コラリ/ペロー

エルビラ・ハビブリナ, ドミトリー・リシンスキー

前日と同じ演目・出演者。

ハビブリナは,やはりいいジゼルです。全幕も見たい,と思いました。
リシンスキーは,この日は,既にここからしてお疲れのご様子。夏バテでしょうかねえ。

 

『ゴパック』 振付:ザハロフ

マイレン・トレウバエフ

3日間同じ演目・出演者。感想も同じ。

疲れが出たのでしょうか,着地でミスが出て,転んでしまって気の毒でした。

 

『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ/イワノフ

オクサーナ・シェスタコワ, ドミトリー・シャドルーヒン

3日間同じ演目・出演者でしたが,シェスタコワが,この日は東京2日間にもましてよかったです。
表現は同じ感じなのですが,技術的に安定していて,アダージオだけではなく,ヴァリアシオンやコーダでも,鮮やかな誘惑ぶりで,見事なプリマ・バレリーナでした。

 

『パキータ』より 振付:プティパ

ディアナ・ヴィシニョーワ, ファルフ・ルジマトフ, レニングラード国立バレエ

3日間同じ演目・出演者。

すばらしかったです。
ルジマトフも3日連続の疲れがあったようで,跳躍のキレや高さは東京ほどではなかったですし,着地音が聞こえたりしたのですが,実にスタイリッシュで美しいですし,ヴィシニョーワのほうは疲れを知らないはつらつとした踊り。ゴージャス〜なプリマでした。

こういうスペイン風の作品には,このカップルは,ほんとうにはまります♪♪♪

下手奥から登場して,彼がゆっくりと彼女のほうに進んでいくときの,二人のそれぞれの全身の表情,上手の前のほうで並んで身体を反らすところの見事にシンクロだったこと,アラベスク(?)の彼女をサポートしながら,二人同じタイミングで,顔をついっと左に向ける動き,片手で彼女のウエストをサポートしながら,二人で左右に,ぎりぎりまで反らした上体・・・
ああ,美しかった〜。いつまでも,見ていたかった〜〜。

 

 

『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥ 振付:プティパ

イリーナ・ペレン, ドミトリー・リシンスキー

3日間同じ演目・出演者。

実は,この日のリシンスキーのヴァリアシオンは,(踊りのほうには期待は持たないで)うーん,ハンサムだなーと,ぼーっと顔ばかり眺めていたのですが(笑),その結果,恐ろしいコトに気付いてしまいました。
彼は,ジャンプをするときに,歯をくいしばって,なんともつらそうな表情をするのですねえ。
これは治さないといかんですよ。

しかし,リシンスキーくんは,私にとって,見る度に新しく注文したいコトが出てくる方でしたわ。
うん,これはたぶん,相当彼を気に入っているというコトなのよね。

 

『騎兵隊の休息』よりパ・ド・ドゥ 振付:プティパ

オクサーナ・クチュルク, ロマン・ミハリョフ

前日と同じ演目・出演者

感想も同じ。クチュルクがはつらつとしていました♪

 

『カルメン』 振付:べリスキー

ディアナ・ヴィシニョーワ

前日と同じ演目・出演者

短すぎるし,いい振付とも思えない作品ですが,それを補ったのは,ヴィシニョーワの,有無を言わせぬダンサーとしての力量!
疾風のように登場し,観客の心を鷲づかみにして,あっという間に去っていく・・・すばらしい迫力でした。
でも,やっぱり,カルメンには見えないんですけどー。

 

『スポーツのワルツ』 振付:シードロフ

ドミトリー・ルダチェンコ, ミハイル・シヴァコフ

会場発表では,前日までと同じキャスティングだったのですが,トレウバエフに代わって,シヴァコフが踊りました。『ゴパック』のアクシデントで脚を傷めたのかもしれません。
まあ,出演者が変ったからといって,印象に特に変わりはなかったです。

 

『アダージェット〜ソネット』 振付:ドルグーシン

ファルフ・ルジマトフ

前日と同じ演目,出演者。

前日より,感動しました。
この日のほうが,彼が確信を持って踊っているように見えた,ということがありますし,今日で最後だ,というこちらの気持ちのせいもあったかと思います。

私には,この作品は,「何かを求めている人」の物語に見えます。

というより,ルジマトフのバレエの基調には,常にそれがあるような気がする・・・「パキータ」の伊達男でも,「くるみ割り人形」の王子でも,そういう精神の隈取が感じられて,それが,彼を,私にとって特別なダンサーにしているのだろうと思います。
だから,ストーリーがあるわけではない,音楽を表現するだけの作品になると,それが前面に出てくる(あるいは私には,それが強く感じられる)のでしょう。

で,それは,けっこう,見ている側にはつらいときがあります。
昨年見たときは,彼自身が身を削っているようにさえ見えて,「もういいから,そんなにしなくてもいいから」と言いたいようでした。

この日も,そんなつらさがなかったわけではないのですが,でも,ちょっと違っていました。
この日の「ソネット」を見ていて,一番印象に残ったのは,何かを求めて苦しんでいる彼の全身の表現の中に,ふっと見える無垢な少年の表情・・・それは,(書いていて自分でも笑ってしまうのだけれど)まるで天使のよう。
その表情を見ながら,もしかしたら,この人は,既に何かを見出したのではないか,その「何か」は,私には理解できないものなのだろうけれど,でも,たぶん,この人は幸福なのだろう,そうでなければ,こんな表情はできないはずだ,そう思っていました・・・。
ですから,そうですね・・・ほっとしたような,救われたような気持ちになれました・・・。

 

それにしても,たいしていい振付とは思えないこの作品を,これだけ「語れる」ものにするとは,いくら私が信者だとはいえ,ルジマトフは稀有なダンサーだなあ,と思わずにはいられません。

この日も総登場のフィナーレがあったのですが,ルジマトフは,とても穏やかな表情をしていました。彼にとっても,この3日間は,満足がいくものだったのでしょうか。それとも,無事踊り遂げたという達成感(解放感?)の現れだったのでしょうか。
その穏やかな表情を見ながら,3日間だけとはいえ,全公演を見られたことを,とても幸せに思いました。

(01.11.11)

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04.01.01から