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 夜毎の憂さ晴らし


 「無理っだっ!そんなの入るわけがないっ」
 「何を可愛らしいことを言ってるんだあ?いっつもしっぽりと銜え込んでいる
  だろうがよ」
 涙すら浮かべて、平常よりも些か幼い風情で振る首筋に、小さな紅い所有
印を幾つもつけてやる。
 「やめろって言ってるのにっ、跡つけるのは!あ!……ああう、んん」
 「ふん。いっつも長袖襟立ての学ラン着てりゃあ、誰も……気がつきゃしねー
  よ。だいたいお前さんの首筋にキスマークなんて誰も、考えもしないだろう
  さ」
 これだけあからさまな証拠を残したって、こいつはしらばっくれるだろう。
そしてまた『虫に刺された』なんて、冗談みてーな言葉を周りの皆様も信じるっ
て、わけだ。
 こいつの、深淵を知りもしないで。
 訳知り顔で『紅葉の皮膚は弱いんだね』と、心の底からの同情心を湛えて。
 ったく、どいつもこいつも!
 お気楽なもんだ。
 「痛ううっつ。祇孔!頼む。いた、い」
 さしてほぐれてもいない秘所に、猛りきったモノを勢いだけで押し込む。
 「これっくらいで?情けねー声だしてんじゃねーぞ?」
 額に脂汗が浮かぶ締め付けだ。
 壬生の苦痛は俺の想像など、呆気なく越えるほど悲惨なものだろう。
 「あ、あ……ああ、い、た。ああ、つ…っつう……」
 例えば旧校舎で誰かを庇って傷ついても、仕事でへまをして深手を負っても
泣き言一つ言わない壬生の、掠れた悲鳴を聞いたのは俺だけだろうと思う。
 「ほら、力抜け。んなに締め付けなくても。満足するまでくれてやるからよぉ」
 ぎち、と根元まで押し込めば、裂けた秘所からは鮮血が伝う。
 ぱたぱたと生暖かい血を滴らせ、女の体ならば感じなくていいはずの痛みを、
壬生は毎度毎度俺の手によって感じさせられる。
 壬生が望めば、かなりいい女が抱けるだろう。
 女が駄目だというのなら、もっと優しい腕を選べばいいのにと、いつも思う。
 仲間内で、同性同士ってー嫌悪を通り越してでも、壬生を抱き締められる奴
はたぶん、結構いる。
 近づけば近づくほど『壊れそうな』匂いをまとう壬生は、そーいうのが好きな
人間にとっては、たまらない庇護欲を掻き立てられるらしい。
 大人しく甘やかされてしまえば、いいんじゃねぇの?
 ってーのが、俺の正直なトコ。
 「ゆっく、り、後すこし、だけ……ゆっつ、くり、し、て」
 「いつ、俺がてめーのペースに付き合うって、言った?いつでも俺の好きに
  していいから、抱いてやってるんだ。ゆっくりだあ?寝ぼけるのもたいがい
  にしておけや」
 俺は、駄目だ。
 優しくはできない。
 きっと誰よりも残酷に壬生を抱ける自信がある。
 『壊れそうな』モノを壊してしまいたくなる、性分だ。
 昔からそうやって、色々な人やモノを壊してきた。
 壊すまで、飽きないから。
 俺に目をつけられたら、逃げるしかない。
 人様よりはでかいだろうナニと、付き合ってくれる相手にめぐり合えなかった
ほどの持続力と。
 この天性の運さえあれば実際、さしたる問題もなく。
 どんな良い女でも、男でも数多、陥落させたもんだ。
 「ああ、うっつ。し、こ?」
 「んな、面してもまだイケねーよ。締め付けるだけが能じゃねーって言ってる
  だろう。もっと淫らがましく貪ってみるんだな」
 「でき、なあああ……」
 言い様締め付けが極まる。
 ただきついわけでもない。
 根元はいきつかせないように、ぎゅうぎゅう締め付ける割に。
 中はやんわりと包みこんでくる。
 数の子天井なんて、よく使う名器を指す言葉だったりするが、んなもん目じゃ
ねぇ。
 一体どんな構造になっているのかはわからないが、どんな人の中よりも壬生
の中は心地良く、貫かれて狂う本人はもとより俺をも貪欲にさせる。
 SEXに関する禁忌なんてもんはほとんどない俺だが、壬生との交わりは怖
いくらいに思う時があった。
 このまま抱き殺してしまうのではないかと、そんな危惧を抱くほどに快楽と
残虐性が煽られる。
 一番楽な正常位を取っていたが、これじゃあこっちが先にやられる。
 ひょっと腰を抱えて体を反転させて、騎乗位の態勢をとった。
 「つ、あああ、ふ。か……深いっつ!」
 「ほらよ?やられっぱなしじゃつまんねーだろ!もっと淫らがましく、踊ってみ
  せな」
 ぱんと腰を叩くと、奥の奥までくわえ込まされた衝撃に、俺の胸にとしなだれ
かかっていた体が、ゆらりと起き上がる。
 「……壬生」
 名を呼んで促せば、はっ、はっと荒い息をつきながら、背中を仰け反らせて
呼吸と同じ短なリズムを刻み出した。
 「ん!あっあっあん……は、あ、ううっつ」
 己のペースにあわせて早々にイきたがる腰をわざと不規則に突き上げる度、
イイところに当たるのか甲高い声が上がる。
 元々無口で傷みにも強い性質故に、大きな声をあげることがない日常の中
で、こんな風に甘えた媚態を見られるだけでも気分は良い。
 「はい、って……奥ま、で入って、る…うう」
 もっと、やわらかで優しいもので。
 満たしてやれればいいけれど。
 それだけはできないから。
 変わりに、気を失うまでの快楽と。
 痛みを、くれてやる。
 これが、愛だとか、恋だとか錯覚しないように。
 ただの、憂さ晴らしと、しか思えないくらいに。
 「てめーのモノはてめーで擦れ。イく時の締め付けは悪くないからな。イってや
  れるかもしれないぜ?」
 腰を振るだけで精一杯なのを承知で、壬生の手を荒々しく引き寄せて、濡れ
っぱなしの肉塊を掴ませる。
 びくうっと、太ももを強張らせたがイきはしなかったようだ。
 こんな所でイった日はいつまでたっても終われないのを経験上、よく知ってい
る。
 「俺がやってやれねー日は、自分で扱いてるんだろうが?見せてみろよ。
  せいぜい可愛らしくなあ」
 根元を握りこんだ壬生は、固く目を瞑り、自分の醜態を見ないように、性急に
肉塊を扱き始めた。




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