確かにそれは、失いたくはない存在。
…だった。
「捨てる、と言ったら。どうする?」
「駄目です。私は奥様もお子様もいる先生が、狂った環境でだけ、私を慈しんでくれているのに、
満足しています。それ以上は逆に。自分を許せなくなりますから」
「人の渾身の告白を」
「…貴方を巻き込むのは今だけです。誰よりも愛しい共犯者」
ここまで来て、俺を突き放すこの男を。
残酷だとは思わない。
優しいとは、もっと思えはないけれども。
溜息をついて後、言いたい事はまだあったのだが、寝起きの温かい体温を十分に孕んだ身
体でしな垂れかかられて。
唇を封じられてしまえば、俺も男だ。
口を噤む。
「しましょ、センセ。ほら、もうこんなに大きくなったし?」
「……そりゃお前さんが、ぐにぐも触り続けてからだろう。インポでもなきゃ、そうなるさ」
「そうです?先生は、おっきくするまでの時間、短い方だと思いますよ」
「閣下と比べられりゃあ、そりゃ若いだろうさ」
「私の手で、身体で、それだけ感じてくださってるってことでしょう?嬉しいですよ、私は」
「ふん……モノは言い様って奴だな」
角度を変えるキスが重ねられるにつれ、乱れていく衣服代わりのシーツも、既に完全にベッ
ドの下に落ちてしまった。
全裸のマスタングの身体を見れば、これがまた。
戦場にあるとは思わないほど、キレイな体。
幾つか肌に散っている赤い花は、俺がつけたキスマークと、焔の制御に失敗してついた軽
度の火傷。
つまりは、俺とマスタング自身でしか、傷の付かない存在だったりもする。
悪いけど、閣下の思うようにはいかないようですよ?
俺がいる限り、こいつはきっと壊れないでしょう。
閣下がどれ程過酷な任務を、絶え間なく下し続けたとしても。
「センセ?どうかしました?」
「いや……なんでもねーさ。お前はもう、大人しく喘いでな」
「では、そうさせて頂きますよ」
一度目を伏せ、完全に視界を遮断したマスタングは、次に目を開いた時には、目を潤ませ
て『これで勃起できなきゃ男じゃねーよ』という、イヤラシイけれども、何かを吹っ切ったよう
な清楚さすら浮かべて、大胆に股座を開く。
「早く、入ってきて…下さい……ね…」
わかってるさ、という言葉の代わりに俺はマスタングの中、蕩けていても飲み込むのは簡
単ではなくなってしまった、それの根元を握って入り口に押し当てると、一息にぶち込んだ。
「きっち!締めるな、馬鹿がっつ」
「締めて、なんかいません、よ?センセっつのが、おおきいだけ……です」
根元だけを脂汗滲む強さで締め付けてこられるのにも参るが、こいつの中は女の膣顔負
けで淫らに蠢く。
包み込む襞なんてないはずなのに、ミミズ千匹なんて形容が浮かぶくらいだ。
しかもちょうど裏筋にあたる辺りに、でこぼこした感触がある。
数の子天井ならぬ、数の子床ってなもんか?
閣下に改造でもされたんじゃないかと思ったが、まさかそんな事まで聞く訳にもいくまい?
「……センセっつ!なに、考えてるん、です?」
「お前の事以外ナニ考えろってーんだ?」
「私のこと、考えて……こんなに……おっきく、かたく…して、くれるんですか」
「そりゃもうお前、名器だもんなー。正直男の体がこんなにイイなんて、想像もしなかったぜ」
ナニ全体をやわやわ包み込まれながら、裏筋はこりこりした突起で擦られる。
腰を振れば振るだけ、奥々を探れば探るほど、やわやわもこりこりも激しくなってゆく。
「あ!先生っつ……私も、イイっつ」
「そっか?」
「はいっつ」
きつく目を閉じて、額には皺を寄せて、どこが気持いいんだ、おい!ってな風情何だが、経
験上。
マスタングが一番無防備な姿が、コレだと知っている。
目を閉じているのは羞恥故じゃなくて、俺を信頼してるから。
額には皺を寄せるのは、俺が嫌いなんじゃなくて、快楽をより先伸ばそうと必死に堪えてい
るから。
「もっと!センセ。もっと、擦って。オク、まで突いて」
「やってるだろう。そう急くなって。何時もお前がイイようにしかできねーんだ」
無論、俺にとっても肉体的には限りなくイイがな?
精神的にはきついんだぜ、共犯者。
お前さんが、焼いた元肉体を永遠と鑑定し続ける。
周りは、そんな俺らを一蓮托生の共犯者と呼ぶ。
だが、本当はそこに共犯の意識がある訳ではないのだ。
別に。
所詮は、定められた期間だけの仕事だから。
何時かは切り捨てられる、モノだから。
ただ、こうして身体までをもつなげてしまった以上。
お前さんを、イトシイと一線越えて思ってしまっては、忘れることも出来ない。
犯し続けてきた罪を忘れるという事は、この関係をも否定する事だからだ。
「ったく。よく、言ったものだぜなぁ?共犯者」
喘ぐ喉元に歯を立てる強さで、吸い付けば、喉が震えて笑う気配があった。
マスタングも知っているのだ。
口ではあれこれ言いながらも。
こうなったら最後。
お互いがお互いの、永久の囚われ人となるのだと言う事を。
百も承知で。
爛れるのだ。
この、狂った環境で。
お互いの身体に。
永遠を誓う、喜びと。
極々僅かな罪悪感と共に。
END
*はれ?まだ続くつもりだったのですが、以外にも呆気なく終わってしまった。
ロイ視点では、
女体か普通ロイたんで先生に縋っちゃうロイたんの葛藤を書きたいなー。