僕の方から積極的に腰を振れば、紅葉の指に派手な歯の跡がつくのは必須
だ。
せっかくの綺麗な指に歯形は無粋だと思う。
これもまた無言で紅葉の組まれた指を拾って、自分の両肩にかけさせる。
紅葉が僕に覆い被さっているような格好だ。
ぱたと、紅葉の顎から汗が滴り落ちる。
余程興奮したのだろうが、僕の方もそろそろ限界だ。
薄眼開く紅葉の視界の端、まなざしだけで呼べば。
「限、界……も、動いて……」
僕の耳朶を唇だけで、挟んで。
「翡翠」
全く、僕がその気になる媚態をよく知っていらっしゃる。
過ぎた快楽でぼんやりとしてしまった紅葉が、僕のやに下がった顔を認識して
いないことを祈りつつ。
「一緒に?紅葉」
今にも滴りそうだった汗を舌先で嘗めとって、枕代わりにしていた腕で紅葉の
腰を支えて奥深くまでを抉りだす。
「はあああ……んううっ……あ…ふ、ふ、う……ん」
僕の先走った液体と、紅葉の中でゆるやかに分泌されたものが、くぷくぷと交
じり合う。
これ以上僕のナニでは突付けない限界の位置が、ちょうど快楽を生み出すポ
イントらしく、掠れた吐息が尚一層の艶を持って耳に届く。
まるで真昼のように明るい寝室で、腰を振る紅葉の姿はこの上もなく淫らで僕
の劣情を掻き立てる。
ずっと繋がって喘ぐ紅葉を見ていたいのだけれど、そこまでのこらえ性が僕に
はないのだ。
早い方ではないが、絶倫という域には遠い。
"十分過ぎます"といつもくたくたになった紅葉は、切なそうな瞳をするけれど、
もっとずっと感じていたいと思いつめるほど、紅葉の身体は僕を狂わせた。
「す、い?……ひ、すい……」
「ん?」
「も、もた、な……あっ……」
淫らな蠢動を繰り返していた紅葉の中の動きが、いきそうになると微妙に変
わる。
絡み付き方がより濃厚になり、全部を吸い尽くそうと絞り上げるように締め付
けてきた。
「ひ、すい……翡翠!」
「僕も、もうすぐ。だから。少しだけ、我慢」
「やあっ」
必至に首根っこにすがり付いて、その癖腰は僕のリズムに合わせてくる。
汗が、今度は紅葉をよく見ようと見開いている瞳に落ちてきた。
「つ」
僅かにしみて身体を硬直させた瞬間。
「も、出る……」
急に止まった僕の動きを、いきついたそれと勘違いしたのか、一足早く紅葉
がいってしまった。
びゅっと勢いもよく腹の上に吐き出した精液を、零さないように腰を振るのは
至難の技だ。
「え?翡翠、まだ……いって、なかった……んんうっつ」
案の定僕の腹の上、すすーっと滑った精液がわき腹からシーツの上に落ちて
しまうのを視界の端にとどめながら、いってしまった紅葉には酷な激しすぎる動
きを強いる。
「つ、ああ……ひ……す……いっ……」
きつすぎる快楽を懸命に逃がそうとする、無意識のリズムに僕の限界は簡単
に越えた。
「中に、注ぐよ」
後始末が大変なのは、とりあえず頭の片隅に追いやって。
欲望の赴くままに、気が済むまで突き上げて注ぎ込む。
「あ、ああ、あ……」
孕んだ精液を零さないように、紅葉の中がより一層締まるので抜き出すのも
一苦労。
「ん……」
どうにか抜き出した肉塊を側にあった手ぬぐいで拭う。
「紅葉」
紅葉のそれも拭いてあげようと、違う手ぬぐいを手にした所で思わず固まっ
てしまう。
「………」
蛍光灯の明かりの真下。
全身を朱に染めた紅葉が、今だ上がったままの呼吸を整えている。
まだ衰えない肉塊と濡れ光る秘所と。
法悦の極みを迎えたような、紅潮した顔色と、穏やかな瞳。
「どうしよう、紅葉」
てぬぐいでやわやわと肉塊を擦り上げるのは、当然終わらせるためではなく
て。
もう一度高みへと駆け上ってもらうための愛撫。
「ん、あ。足りない、ですか」
「足りないっていうよりは、もっと欲しい」
頬に瞼に、唇に触れるだけの唇で様子を伺えば。
「夜は、長いですからね」
と、肩口を唇で噛んでくる。
「わかってもらえて嬉しいよ」
紅葉が『もう電気を消してください』と、言う間を与えない程度に。
両の頬に掌をあてて、深い口付けを繰り返し始めた。
END
*如月×壬生
長い道のりでした。ようやっと翡翠さんとのエロが完了。完了って感じです。
なんつーかめろめろな二人を書いて見たかったんですが。書いてみると忍者
スキル満載のいつものノリの方が好みらしい。
次の如月×壬生は幻のコピー本『ヤイバ』の続編でも書くかなー。