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 「せんせっ!…ぬ、がみ…先、生!」
 普段ならば、絶対に先生などとは呼ばない。
 この人は、拳武館においては敵対勢力にあたる人だ。
 「何だ」
 「もっと、奥まで……入れてっ」
 鳴滝館長が唯一と言っていいほどに、心を許している人だから、故に。
 この人が望めば、鳴滝館長はきっと拳武館すら、潰す。
 そういった意味でも、驚異的な存在。
 「見事なもんだな。別に、そんな風に腰を振って見せなくとも。拳武館と関わ
  りなんざ。持つ気はないんだが」
 そう、言いながらも腰は貪欲に僕の体を突き上げる。
 実際、言葉通り。
 拳武館と言う暗殺組織などと関わる気は微塵も無いのだろう。
 鳴滝館長との関係だって、鳴滝館長が『どうしても』と望んでのことだなんて、
聞かなくてもわかる。
 「んんっ!いいっ!せん、せ。せんせぃ……」
 だからこそ、僕はこの人を選んだ。
 鳴滝館長がリスクを背負ってでも欲しがった人だ。
 弱い、人であるはずがない。
 「いいんだぞ、先にいっても?」
 息すら乱さずに、僕の体を思う様穿つ体力が、不精なこの人のどこにあるの
かと、日々疑問符を抱き、人ではないのだと、身体に刻み込まれるようにして
思い知らされる。
 「や!一緒にっ。一、緒に……い、き……たあ…いっ」
 「じゃあ、まだまだだ」
 ぱんと音も高く腰が叩かれる。
 獣の交わる態勢で、突き上げられて、もうどれぐらい時間が過ぎているのか。
 人に抱かれた経験は少なくない僕だけれど、絶倫という言葉がこれほど似
合う人はいない。
 「ぇ?…お、願い……もう……」
 根元を紐で絞られているからいきたくてもいけない。
 僕はこの人を相手にして、中でイくということを覚えた。
 本当はもう、何度も到達している。
 ただ射精をする開放感を得たいだけだ。
 「本当に、お前にはそそられる。これほど身体の相性があう人間はまずいな
  いだろうよ?」
 ぱんっぱんっと腰が入るたびに、激しい交接音が響く。
 銜え込んでいる個所は泡でも立っているに違いない。
 先生が出さなくとも、僕が分泌する液体がぬちゃぬちゃと太ももを伝ってゆ
くのだ。
 「だから、我慢してみるんだな。俺が満足いくまで」
 「そんなの、無理」
 「できるだろう?拳武館きっての淫乱だ」
 「淫、乱でも。できなああっ……い」
 人を相手にしているのならば、何とかなる。
 でも先生は獣だ。
 「せんせ、せんせっ。出したいっ」
 「もう、何度もいかせてやってるだろう?」
 「でも、出、したああいぃ……」
 狼の血を持つ先生のSEXには、どれだけ寝ても追いつけない。
 「ったく、無茶を言う」
 苦笑と共に、背中越し耳朶が甘く噛まれる。
 行為そのものは激しいけれど、所作が時折酷く優しくて、僕は更に煽られて
しまう。
 「生贄のつもりなら、もう少し楽しませて欲しいもんだ」
 肩口にずぶりと牙がつき立てられた。
 「ああああああああっ!」
 血が吸い取られてゆく感覚さえも愉悦しか、覚えないこの身体は確かに淫
乱そのものだろう。
 「ほら。だしてやるぞ?」
 器用にも血を吸いながら囁かれた途端。
 僕を戒めていた紐が解かれ、先生の大きな掌が繊細な手つきで僕の肉塊
を扱きたてる。
 「あっ!あん!あん!せん、せ!!」
 「……ん……」
 「でちゃ……うっ!」
 身体の最奥までを貫ら抜いた、先生の肉塊が一回りも大きくなったような気
がした。
 「やあっ」
 びくっと体中を震わせて僕がいきついてようやっと、先生が出してくれる。
 「駄目!抜かないでっ」
 萎えもしない硬直が身体から抜け落ちそうなのを、ぎゅうっと力を入れて締
め付けで留めた。
 「何だ。まだ足りないのか?」
 「ちが、いますっ!ただ……中に入っていて欲しいだけ」
 どんどん広く大きくなってゆく、胸の虚空を。
 少しでも埋めていたい。
 先生の人とは違うあたたかな体温は、たやすくそれを可能にする。
 貫かれたまま、身体の奥で感じる熱には、ただ安堵できた。
 「贄の、自覚が微塵もない奴だよ、お前は」
 自覚がないのが嬉しいとでもいうのか、僕の望み通り中に入れたまま背中
越しに抱きかかえてくれた。
 「だって、生贄だなんて、思えませんよ。僕が満たされているんですから」
 自分で志願したのだ。
 先生に血と肉を与える奴隷になると。
 狼の血を濃く受け継いでいる先生が、どうしても己の獣としての衝動を抑え
られない時の為にと、館長が提案したのが、そもそもの始まりらしい。
 頑なに拒否していた先生を、龍麻を通じて知り合った僕が口説いた。
 『罪悪感から逃れる為に、僕を生かさずに殺さない人が欲しいです』
 と飾らず、先生の身体の事情など、どうでもいい勢いで言った僕を。
 『ならば、仕方ないな』と苦笑しながら受け入れてくれた。

 経験した覚えのない類の痛みと、想像を絶する快楽が、僕をこの世に引き
留める。

 「ああ、でも駄目だな。中に入れておくと俺の方が堪えがきかなくなっ
  てくる」
 獣の衝動を僕なんかには真似できない精神力で抑制する先生でも、この状
況は手に余るらしい。
 衰えを知らない剛直でもって、僕が鳴く個所をゆったりと擦る。
 「僕は、イイですよ。喜んで?何度でも」




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