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 「奴等の精液なんかなくても、貴方の中は何時でもぐしょ濡れですよ?さぁ。尻をこちらに
  向けて、股を開きなさい」
 「……」
 何かを言いかけた唇は、言葉を紡がずに閉じてしまった。
 言うだけ無駄だと熟知しているが故の沈黙だ。
 私としては、ロイさんのどんな声でも言葉でも聞いていたいから、少しだけ、寂しい。
 「緩めて下さい」
 「ん……」
 中から溢れ出る感覚が苦手だと言って、私の前でもなかなか出そうとはしない。
 まぁ、恥ずかしさもあるのだろうけれど。
 ここで、何時もなら押し問答があるのだが、今日はなかった。
 先程の飲み物で、気分が幾らか和んでいるのだろうか?
 「また……こんなに溜め込んで」
 「誰が、好き好んで溜め込むものか……」
 陵辱の激しさを物語るように、ロイさんの奥からはどろどろと際限もなく精液が溢れ出た。
 中にホースでも突っ込んで、洗浄したいところだが、今の現状ではそれも難しい。
 四つん這うロイさんの下腹を、横から手を回して幾度か押す。
 最後に残っていた粘液が、どろっと溢れ出る。
 「……こんなもんでしょうか」
 「……さぁな」
 「今日は、抱っこの気分ですね。キスしながら、入れてみて下さい」
 「慣れたつもりだが、相変わらず無茶を言うな」
 「貴方にできない事はないでしょう?」
 目の端にキスを贈れば、嫌そうに眉根を顰められた。
 しかし、ロイさんがどんなに嫌がっても、拒否する権利はない。
 あっても、ロイさんがそれを施行することはないだろう。
 部下の身が危うくなると、身に染みて承知しているから。
 まず、ロイさんは私の膝の上に座った。
 それから、腰を浮かせて己の蕾に私の性器の先端を当てる。
 ゆるく腰を回して、僅かに銜え込んだところで、キス。
 舌を絡めあうディープキスをしながら、ロイさんの腰がゆっくりと落とされる。
 苦しいのだろう、絡む舌が時折、耐え切れぬように痙攣した。
 にゅちゅん、と粘液が交じり合うような音をさせて、ロイさんは私の性器を根元まで銜えて
くれた。
 抱き合う体勢は、単純に嬉しい。

 例え対するロイさんが、どれ程不服な顔をしていたのだとしても。
 「……ああ……やっぱり輪姦された後の貴方の中、最高ですね」
 「悪趣味野郎」
 「自覚はありますよ。どうぞ。好きに動いて?」
 「好きにしていいのなら、このままがいい。さすがに疲れた」
 ふぅと深く吐き出された溜息が、耳元を擽る。
 ロイさんの顎が、私の肩に乗せられたのだ。
 「どうしても、と言うのなら。お前が動け」
 そう言って、だらりと身体の力を抜かれた。
 肩に乗せられる顎は日増しに鋭くなっている。
 顎が痩せたのだとわかるほどの疲労が、どんどんロイさんの中に蓄積されていっているのだ。
 本当は、寝かせてやればいいのだとわかっているし、そう、しなければならないのも承知して
いる。
 ロイさんに言ったら鼻で笑われそうではあるが、私はこの人の身体を抱えて眠るだけでも、
十分に満たされる性質だ。
 ただ。
 疲労困憊になって、心よりも身体を疲れさせないと魘されて深くは眠れないロイさんが心配な
だけで。
 広範囲を錬成で焼く作業を要求されるロイさんは、最前線で肉体よりも精神ばかりを削られる。
 部下達を背中に、無表情を貫いて眼前を焼け野原にするロイさんの姿は、それはもう崇高な
ばかりだ。
 惚れるのは、私だけでもない。
 だからせめて。
 魘される事の無い、泥に埋もれるような深い眠りをと思うのだ。
 世話になっていて恩返しも出来ない、愚かな部下どもにも手伝わせて。
 ……なんて。
 本当。
 信じて貰えないでしょうね。
 「……どうした。動かないのか」
 「いいえ。動きますよ。貴方の好きなゆらゆらをしたげますから。寝ちゃって下さい」
 「お前のナニは、そんなに小さかったか」
 「ご存知の通り。ロイさん好みの立派な自慢の息子です……私のナニを銜えていても貴方。
  眠れるでしょう?」
 「……それも、そうだな。無駄に……慣らされているからなぁ」
 怒りよりも羞恥よりも、疲れによる諦めの言葉を。
 嬉しいと思えばいいのか、虚しいと感じればいいのかは微妙な所。
 「後始末はきちんとしますから、どうぞ、ご安心を」
 「普通は、お前ほど安心できない奴など居ないと思うんだがなぁ……我ながら自分がわか
  らんよ」
 「わからないままでも、問題ないでしょう?」
 「そうだな。どうせ……長くは続かない」
 だからこそ、ロイさんは私に身体を投げ出すのだろう。
 戦局は見えている。
 終わりはもう、遠くない。
 私は、ロイさんの言葉には答えずに、ゆっくり腰を使い始めた。
 上下運動ではない。
 前後左右、時々回転という、ロイさんが好むまったりした交接だ。
 突き上げがないが、中が広がっていく感覚が怖いと最初は怯えていたロイさんだったが、
一通りの拡張が終わり、私の大きさに慣れてからは、この揺れの中で、眠れるようにまで
なった。
 「んっつ。んっつ」
 鼻に掛かった甘い声は、先程の乱暴なばかりの陵辱の中では聞かせなかった声。
 私にだけ許されているのだと思えば、それだけで達せそうだ。
 リズムを変えずに、ゆるゆると腰を使う。
 中の締め付けが、緩やかになり、やがて肉のひくつきだけになってゆく。
 「ロイさん?」
 どれぐらいそうしていただろう。
 腰が全然疲れていない所を思えば、短い時間だったらしい。
 そっと耳元に囁けば、返ってきたのは、すーすーという静かな寝息。
 こうなってしまえば、安心だ。
 私がロイさんの身体のどこかに触れていれば、大人しく寝入ってくれている。
 「よっこいしょ!」
 軽いが成人男性の身体だ。
 抱えて動かすには掛け声もいる。
 抱き上げて己を抜き取り、二枚重ねの毛布の上へ寝かせた。
 眉間に皺が寄っていないのは、ロイさんが束の間の安眠を貪れている証。
 「良い、夢を」
 笑みながらロイさんの手の甲に、手早く擦り上げて出した己の精液を振りかける。
 中に出せなかったのだから、これぐらいは許して欲しい。
 手の甲への陵辱後だけを残して、丁寧に後始末をした私は、ロイさんが起きないように背中
から、その身体を抱き締める。
 僅かに身じろぎをされたが、すぐ大人しく腕の中に納まってくれた。
 「この、至福を続ける為には。戦闘を長引かせるしかないんですけどねぇ」
 それ自体は難しい事でもない。
 火種を巻くのは得意中の得意だ。
 「でもそうすると、貴方。壊れてしまうかもしれませんし」
 私的には壊れても良い。
 むしろ、壊してしまえば、自分の腕の中。
 永遠に閉じ込めておける。
 「……壊れた貴方も愛せますけど。やっぱり、壊れていない貴方が好きだとも、思うんですよ」
 私の愛した、唯一つの焔。
 それが消え失せた貴方の魅力は、間違いなく半減する。
 「そこは、ね。本当に、迷う所ですよ」
 結局、ロイさんに溺れた自分が選ぶ道は一つしかないのだとわかっているのだけれど。
 
 淡い苦笑を一つ浮かべて後。
 目覚めたロイさんが、ぷりぷりと愛らしく起こる様を想像しながら、私もようやっと目を閉じた。



      
                                                       END




 *ああ、今回もロイに甘すぎるキン様だよ!
  やってることは鬼畜(ですよね?)だけど、それはもぉ、ロイさんにベタ惚れって奴
  です。
  このロイも、自分にだけ甘いキン様にちょっとだけ絆され気味です。
  ひっそりと、リザとハボに羨ましがられるキン様だといいなぁとか思ったりもします。

                               2009/02/27





                                         前のページへメニューに戻る
                                             
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