「蓬莱寺君も一緒に行くんですよ。龍麻と一緒に精密検査を受けてもらいま
す」
「やっぱ旧校舎、おかしかったんだ…」
ここにいる時点で紅葉の容体が良くならないなんて、一度もなかったことだ。
「龍麻の呪詛が治ったのは当たり前ですが、紅葉の熱が下がらないのは変
です。龍麻から、紅葉が毒に犯されてて高熱をだしたのだと聞いています
からね」
「…もし旧校舎のシステムが壊れているんだとしたら、封じないと…永遠にあ
んな暗がりに閉じ込められるなんて冗談じゃない……」
「おいおい、難しい話は後にして早く車に乗ってくれ」
運転席の窓から顔を出した村雨が佇む俺達を促す。
御門が助手席のドアを開けたので、後部座席に乗り込む。
窓によりかかっている紅葉がまだ寒そうだったので、先刻までしていたよう
に抱き抱えると俺の肩に額を乗せさせた。
「……仲直り、したんですか」
バックミラー越しに御門が目を細めている
「もともと喧嘩してたわけじゃねーよ」
「まーわがたまりとけて良かったさ」
うんうんと頷く村雨が車をスタートさせた。
「俺が蛙になってる間に、許してもらったんだ?」
「ああ…俺が俺らしくあるんならって、言ってくれた」
紅葉の髪の毛の上にそっと手をのせてみれば、じんわりと掌が暖かい。
「それはなによりだが……京一?勘違いはするなよ」
病人の目に悪いからと車内の照明を極力落とした中で、ひーちゃんの目が
鈍い金色を放つ。
「許してもらったのが嬉しいのはわかるけど、たがえたりされちゃ、困るぜ」
紅葉が龍麻の半身だというのはわかってはいるけれど。
気付いてしまった思いが、どう転ぶかは俺にもわからない。
「…こればっかは、しょーがねーよ?」
ただ俺は、こうして紅葉の体を抱き締めているだけでも十分、満たされそう
では、あったけれど……。
END
*京一×壬生
京一×壬生を書くのが楽しくなってしまった作品第一弾……。書きやすかっ
たんですよねー。このあと3冊ぐらいの本にわたって書きツアネタもんなー。
京一&龍麻×壬生の三角関係悲恋モノ?で終わっていたような気がする。
あれ?ラストどんなんだっけか?(苦笑)ちょっと在庫をひっくり返して読み直
した方が良さそうだ……。