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 「でも寝ないと。壊れるわ、私。それだけ重いのよ。紅葉の存在が……もう自
  分ではどうにもできない」
 愛しい半身。
 誰よりも、何よりも愛してる。
 この度を越した執着が、他の人間に向けられる可能性は1%もない。
 「せめて、男だったら紅葉を犯せたのに」
 「おいおい」
 「だってそうでしょう?男だったらどんな事をしてでも、身体だけでも繋がれた
  わ」
 例え、理想の関係とはどんなに遠くても、ぬくもりを肌で感じられた。
 「紅葉は私じゃ、勃起しないんだから」
 銜えても、擦っても、扱いても。
 項垂れたままだった、それ。
 何よりも、悲しそうに私を見つめる紅葉の瞳が辛かった。
 私は紅葉にとっていらない存在なのだと、思い知らされたSEXにも満たない
自慰。
 「だから私は貴方と寝るのよ。せめて嫉妬でもしてくれると嬉しいのだけれど」
 飽きれたように笑った村雨が、私の涙を指先で拭う。
 拭われて初めて泣いているのに気が付いた。
 だって、私は壊れるわけにはいかない。
 私が壊れば、紅葉も責任感故に、正気を失ってゆく。

 誰よりも、心の底から。
 こんなにも。
 
 貴方の幸せだけを、祈るのに。

 涙で霞む陽炎の向こう。
 私が見る、幻の世界では。
 紅葉は私に笑いかけていた。
 
 私が望む、穏やかな笑顔で。

 「どこまでも、夢なのね?」

 目を閉じて、再び開けば。
 歪んだ世界が、静かに佇んでいた。




                                             END





*村雨×女主人公(紫・ゆかり)
 初の女主人公でした。
 この調子でいけば、憂さ晴らしに京一と寝るバージョンも書けそうですが、
 そうなってくると、益々紅葉の出番がないので却下。
 思っていたよりも簡単に書けるものだなーというのが、感想でした。





                           
    
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