嫌がる反応すらない。
「なんだね?」
返事はあるものの、目が開く事はない。
「目を開けて、僕を見て」
す、と目が開かれた。
少し濡れたような真っ黒い瞳に、感情の色は見えない。
「怖い、ですか」
「別に」
「嫌、ですか」
「別に」
「したく、ありませんか」
「君の、好きに」
どこまでも一本調子の口調には、溜息しかでない。
しかし、盛り上がったやる気が下がる気配もなかった。
「……では、好きにしますね」
外見は完璧な女性の身体だが、中身がついてこないのかもしれない。
心のどこかで、淫乱なくらいに感じてくれればいいと、過敏すぎるくらいの身体を望んだ気
もするが。
望んだだけで、全てが完璧に揃うのならば、苦労はしない。
兄さんは知らないが、媚薬系の薬の錬成は得意だ。
最初だから、せめて身体くらいは感じさせたいけれど、どうだろう?。
調合をした方が良いか、ロイさんの無抵抗な身体の上で、しばし思案する。
「やっぱり、薬はやめよう」
ぴくんと、ロイさんの身体が小さく跳ねた。
そうだよね、ロイさんだって薬は嫌だよね。
頷いて、使いませんからね? の意味を込めて額にキスを送った。
早熟だったから、鎧の身体になる前からも、多少の事はしてきた。
挿入こそしなかったが、相手の身体を舐めしゃぶるのは得意だった気がする。
元々、射精そのものよりも、そこへ至るまでのプロセスが好きなようだ。
蕩けきって、惚ける女の子は可愛い。
きっと、ロイさんも可愛いだろう。
今はどちらかといえば、綺麗な印象を受けるけれど。
「薬を使わないとなると……直接的な愛撫がいいかな」
定番でいけば、キスから上半身、下半身を丁寧に蕩けさせてから、挿入に至るんだけど。
処女だと、クリトリスでの絶頂を覚えさせて、身体が蕩けた所で、上半身の良い所を探す旅に
出て、クリ舐めながら、Gスポットを指で可愛がって、も一度絶頂。
身体の蕩け具合を見て、挿入でいいか。
「うんと、感じて下さいね?」
「……君次第なんだろう?」
「そうですね。貴方はただ、声を殺さないで素直に快楽を受け入れてくれればいいです」
「前向きに検討するよ」
「どうぞ、実行下さい。そうでないと辛いのはロイさんですから」
貴方を、こんな状況にまで貶めても独占したかった僕の。
歪んだ執着を理解して貰わねばならない。
絶対に、逃げ出したりしないように。
僕は顔を上げて、キスを一旦終えると、ロイさんの腰の下にクッションを一つ差し入れた。
こうすると少しだけ下肢が上がって、愛撫を施しやすいのだ。
ロイさんの太股を立てて大きく広げてから、出来た場所に自分の肩辺りまでを収めた。
彼女の膝の下に、ちょうど僕の腕が来る感じ。
肘をついた僕は、ロイさんの大切な場所を凝視する。
まだ、皮を被ったままの小さいクリトリス。
閉じたままの花びら。
その下の、蕾までは、今日開拓しない。
それはまた。
ロイさんの身体が、SEXを楽しめるようになってから。
本当は、ね。
キスと抱擁だけで、僕という存在に慣れてからの方がいいんだけど。
そこまでの余裕が僕にはない。
「ちょっつ! いきなり?」
焦ったロイさんの声を頭の上で聞きながら、僕はクリトリスを口の中に収めた。
外気に触れないように、舌先で頑なな皮を剥き上げて、吸いながら舐めた。
「あ、るく、ん! ものごとには、じゅんばん、が。あるよ!」
随分驚いているらしい。
初めて聞く拙い喋り方がだった。
「処女を抱く時の順番に、従ってますけど」
話しかけられるのが嬉しくて、唇を離して対応する。
ロイさんを見上げる目の端で、せっかく剥き上げた皮が、呆気なく戻ってしまうのを確認した。
「いつも?」
「いいえ。色々と試しましたから」
身体が戻って後、以前から兄さんと話していた通り。
二人で、ウィンリの作る焼きたてアップルパイを食べた。
それは、純粋に一番してみたいことだったのだ。
ロイさんを、自分の物にしてしまいたいと思う前まで。
等しく大切だった二人と一緒に、食事をする。
人間としての、当たり前の日常を長く実感してみたかった。
しかし。
僕の身体も心も、想像していたよりずっと歪んでいて。
食欲と睡眠を楽しんだ僕は、すぐに残りの人間三大欲望の一つ。
性欲に憑かれてしまった。
勿論、誰より何よりロイさんを抱きたかったけれど。
物事には、順序というものがある。
ロイさんの身体を変えてしまう前に。
己のスキルを磨いておく必要があった。
だから、色々な女と思いつく限りのパターンを組んでSEXをした。
プロのお姉さん、人妻、法律ぎりぎり引っ掛からない程度の若いというよりは幼い相手、歳が
近い、うんと年上。
練れてる、拙い、初めて。
若くても練れてたり、歳食っていても初心だったり。
愛情の伴わないSEXも、やりたい盛りの身体を取り戻した僕には楽しかった。
大半の女の人は満足して、行きずりの関係だと言い含めていたにも関わらず縋ってきた
けれど。
勿論。
容赦なく捨てた。
相手を思いやらない観察が目的のSEXだったから、興味の赴くままにした事を考えれば、
よくもまぁ、訴えられなかったよ! という風合い。