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 真新しい制服


 「たいさー。はやく、おっきしてくださいよぅ」
 うるさい!私は、まだ眠いんだっつ!
 「はやくおきないとーせっかくつくった、わんはぼ・フレンチトーストとマスにゃんぐ・めだまや
  きが、さめちゃいますよ!」
 ……そういえば、腹が減ったな?やはり寝る前の無茶苦茶な運動が効いているんだろうか
…そうだな。
 そうとしか考えられないもんな、うん。
 じゃあ、アレだ。
 責任もってお前が、私にわんはぼフレンチトーストとマスにゃんぐ目玉焼きを食べさせると
いいさ!
 「たべさせてって?ベッドがよごれますよ?まったく、だれがそうじをするとおもっているん
  ですか」
 お前に決まっているだろう?
 喜んで私の世話をするじゃないか。
 「え?あーまーね。すきっすよ。あんたのせわは。したごころありますからね」
 唇に、濡れた感触。
 ふよ、ふよ、と掠めるようなそれが、気持ち良くて私はまた眠りの淵へ転がり落ちようとする。
 「ほら……おきないと、しちゃいますよ。あーん?」
 あーん?
 と、大きく口を開けたそこに入ってきた物は。
 モノ、は。
 「……ぶはっつ!きっさまっつ!何を考えているんだっつ」
 ハボックの朝立ちした、アレ。
 完全に覚醒した視界に一番最初に映ったモノが、勃起しきって揺れるハボックのナニなん
てあんまりだ。
 「だってこうでもしないと、起きないでしょ?」
 「ナニ出したまんまで、やれやれとかするな!間抜けだ!阿呆だ!変態だ!」
 「……変態は言い過ぎだと思いますけどね。で、続きします?」
 「自分で抜いてこいっつ」
 「はいはい」
 ハボックはナニを窮屈そうにズボンの中に仕舞い込むと、キッチンへ消えていった。
 「……というか、あの状態でトイレに行かなくても大丈夫なのか?」
 余計な心配をしつつ、私はベッドヘッドにかけてあったバスローブを身に付けて、キッチン
へ向かう。
途中、無駄にハボックを刺激しないように、バスローブの前を合わせてベルトで絞り込む。
 「すぐ、食べられますよ?」
 先程見せた欲情に濡れたまなざしが、夢の話だったかのように屈託なく笑いかけてくるハ
ボックを胡乱気に見やる。
 「ん?何です?」
 「……お前、大丈夫なのか」
 「へ?何が?」
 「…ナニだ」
 人肌程度に温められたホットミルク、温野菜数種類のマスタード添え、に猫の形をした
ターンオーバーな目玉焼き、メープルシロップが程よく染み込んだフレンチトーストは犬
の形をしている。
 恥ずかしいので、ハボックしか知らないが私はこんな風な可愛いものが大好きだ!
 自分では作れないのだが、ハボックはどこかで猫と犬の型抜きを探してきて以来、何時
でも上手に仕上げてくれる。
 そして、コンソメのカップスープに浮かぶのはハート型のクルトン……これはハボックの
趣味。
 「ああ、朝勃起ですもん。どってことないですよ。まぁ大佐がお好みなら今すぐにでも……」
 「好みじゃない!好みじゃないぞう!」
 私が朝食に食べたいのは、目の前に並べられたお前の手作り朝ごはんであってお前自
信では、絶対に、ない。

 「まぁ、大佐。余程じゃないと朝から欲しがったりはしませんもんね」
 「余程の事があっても朝からなんて!」
 「欲しがらない?」
 「……時と場合による」
 滅多に無いが連休だったりとか、休みの日の朝だったりした時には、モーニングちゅうなどと
いう、こっ恥ずかしいものからベッドの中に逆戻りしたりもする。
 たまにはいいか?
 とか、思って私から仕掛けたりもするのだ。
 本人無駄に舞い上がって、とんでもない事になるのは経験上よく知っているから口には出さ
ないけれど。
 熱心でマメで。
 どこまでも優しい癖に、時折強引な忠犬が私は大好きなのだ。
 男に抱かれる、愉悦の深さはこいつでなければ感じられなかっただろう。
 「おや。素直。珍しいですね。神妙な気分にでもなってるんスか」
 今日の気分で行くと、マスにゃんぐ目玉焼きにかけるのは、ソイソースかなーと思案すれ
ば、何告げるでもなくとも目の前。
 ことんと、ソイソースが入った陶器の調味料入れが置かれる。
 ちなみに、ソイソース、ソース、ソルト、ブラック&ホワイトペッパーが入っている調味料入れ
は、可愛らしい猫の形をしている。
 ぴん!と立った猫の尻尾を持って引き寄せては、よくハボックに怒られた。
 「神妙ねぇ。どうなんだろうな」
 目玉焼きにナイフを入れて、いい感じにほこほこと暖かい黄身と白身部分にちょいちょいと
ソイソースをつけて、口の中に放り込む。
 本日の目玉焼きの出来も、文句なしに私の好みだ。
 「普通はそんな気分になるもんじゃないんです?やっとこさ中央に戻れるんだし」
 ハボックが目玉焼きにつけるのは、何時だってケチャップ。
 子供の頃から抜けないらしいのだが、今日もせっかくの、にゃんこ顔が半分も隠れてしまいそ
うな勢いで、ぷちゅぷちゅと容器を絞っている。
 はむっと一気に半分も食べてしまう口が、満足そうに動いた。
 「やっとこさ、ではないぞ。満を期してと言って欲しいね」
 東部のトップは中尉の祖父だ。
 私の実力以上の便宜を図って頂いたし、何より決定権を丸投げで、自由行動をさせて貰った。
 将軍の手をわずらわせるようなミスは、着任中に一度たりともなかったが、例えば何かミスっ
たとしても将軍は、ほっほっほと目を細めて笑って呆気なくも簡単にフォローを入れて下さっ
ただろう。
 イシュヴァール時には、すぐ上にエッガー大佐がいた。
 東方司令部時代には、将軍。
 基本的に上には煙たがられる私だけれど、要所要所の上官には恵まれた。
 「きな臭い話も中佐から、聞いてるんでしょうに」
 「ふふん。きな臭ければ臭いほど、私の価値は上がるさ」
 「…暴走、せんで下さいよ」
 「まぁ。東方と違ってヒューズが居るからな。情報戦線で引けを取らないですむ分、暴走はし
 ないだろう」
 フュリーの無線傍受のお陰で、遅れを取るまでには至らなかったとしても、後僅か情報の伝
達が早ければスムーズに事が運べたであろうと思うケースは、少なくなかった。




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