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 電話越しの距離

 
 『き、さま……私は、まだ仕事中なんだぞ!』
 「じゃ、のならきゃいいじゃんさ」
 時刻は深夜零時。
 エリシアは勿論、グレイシアも休んでいるのをいい事に、俺は電話のコードを引っ張れるだ
け引っ張って、ソファの上に転がっている。
 「別にいいぜ。ロイがそんなに嫌だって言うんなら、電話切ってもよ。俺はお前さんと違って
自宅だから、すぐベッドに横になれるしな」
 『……お前は、我慢、できるのか……』
 途切れ途切れの声は、ロイが感じてる証に他ならず。
 声を聞いているだけでも、上り詰められそうな気がして、てめーのナニを握り締める。
 そう、俺達はテレフォンセックスなるものに勤しんでるわけ。
 「我慢なんか、しねーよ?お前のことほっぱって、一人でいけばいいだけの話だ」
 『だったら、最初から私を……巻き込むな!』
 「そーゆーけどさあ?甘ったるい声で誘ったのはロイだろうが」
 残業もここまで続くとさすがに、疲れるな、マース。
 最中に漏らすそれとそっくりな、声で。
 掠れ切った吐息に紛れて、俺の名前を呼ぶ、お前のせいだろう。
 俺が興奮するのは。
 『誘うような、セリフを吐いた覚えは、ない』
 「そこが、ロイたる所以さ。俺にとっちゃあ、存在そのものが誘惑だよ」
 自慢できる料理上手の妻がいて、目の中に入れても痛くないだろう可愛い娘がいても。
 それとは全く別の次元でロイに溺れている。
 ぶっちゃけ、やりてーって奴。
 「執務室で、一人でいくのなんて、空しいだけだろう?大人しくせめて俺の手管でいっとけよ。
  続きは明日ってことでさ」
 『明日、来るのか?』
 「ん、ああ。何時になるかわわかんないけど、たぶんな」

 用なんかなくたって、幾らでも作れる。
 中央での仕事はやり甲斐もあるし、ロイのための情報も楽に拾えたから、奴がこっちへ戻っ
てくるまで、俺はせっせとネタを溜め込んで、ロイを上に上げるための地盤固めをしておかな
きゃならんのはわかってるんだけど。
 側にいて、いつでも抱けないこの状況は切ない。
 東部行きは、良い部下も只今調教中って感じで、何人か見つけられたこともあって、ロイに
とってはラッキーな左遷だった。
 行く度にいつも、部下達に甘やかされまくりの状況を見ていると、このまま東部で生きていく
のも悪かねぇなあと思うほどに。
 ロイの秘めた野望さえなければ、そう告げたかもしれない。
 「ちょっとほっとくと、ロイたん浮気しそうだし?」
 『……あ、ほう……男はお前だけで十分だ』
 女性は浮気相手にカウントされていないのがロイらしい。
 フェミニストとして知られるロイが、実は女なんざ、ただの性欲処理の相手としか考えてない
鬼畜だとしたら、皆、どんな顔をするだろう。
 俺だけでいいのだと、睦言の最中に縋ってくる様が、どれほど俺の心を満たすか。
 ロイだって知らないだろう。
 「だから、ちょっと絞っておかないとな。さて、今ロイたんのナニの状態はどんなんか、その語
彙豊富なお口でゆってごらん?」
 『きさっつ!』
 「ちなみに、俺のナニはなー。もうロイの上のお口でも持て余すくらい大きくなったぞ?硬さだ
  って、ロイがにゃあにゃあいいそうなくらいにカチンコチンだ」
 電話の向こうで、唾を飲み込む音がする。
 幾度も見ている、限界ぎりぎりの俺のナニを頭に思い描いているのだろう。
 「でも、ロイの中入れる前にちょっと濡らしとかないとヤバイだろ。上手に、嘗めてみな?」

 電話越しに躊躇う気配。
 届く荒い呼気だけが、その興奮度合いをダイレクトに伝えてきた。 
 ぴしゃん、と何かを嘗める音が聞こえ出したのは数秒後。
 待つまでもなかったな。
 音は肉に触れている風に聞こえた。
 無機質めいていないので、恐らく指でも嘗めているんだろう。
 俺は目を閉じて、ナニの根元を締め付けながら、ロイに指示を飛ばす。
 「ゆっくりだぞ?ロイ。まずは、先端をぺろぺろっとな。もう、出始めてるおつゆは全部綺麗に
 嘗め取るんだ」
 『ん……ふ……』
 ちょうど舌の中央を押し当てて、ぺろぺろと上目遣いに俺の様子を伺うロイが瞼の裏に浮か
ぶ。
 普段物凄く不遜な奴なので、こんな時の媚態は特に可愛らしい。
 目の端を涙が伝うのは、羞恥と単純な呼吸困難故。
 気持ちいいのだと、労わるように頭を撫ぜてやれば、その舌の動きは一段と熱心になる。
 「相変わらず、上手だねー。ロイたん」
 『……貴様が、教えた……だろ?』
 指先を嘗める音と共に、肉塊を擦る音も届く。
 そっか。
 俺ばっかし気持ち良くってもあれだな。
 「その通り!俺が教えたんです。一から十まで俺好みでもう、でちまうから。ロイのも嘗めて
  やるよ。ほい。けつをこっちに向けてください」
 実際でもよくするシックスナインで。
 『……けつ……お前なぁ……』
 ロイのやる気ゲージが一気に下がるのがわかった。
 俺が直接耳朶噛みながら言ってやれば、ナニからおつゆ滴らせて、身体をまたぐ癖に。
 想像力が足りないぞ。
 想像力が!
 「いいじゃんさ。見たいのロイが完全に勃起したナニを曝け出して、俺の身体を、えっくりしょっ
  て、跨ぐトコ」
 『わかったよ!』
 「ゆっくり、とだぞ」
 しかし、ロイはナニを跨ぐ気なのだろう。
 ソファに置かれた薄汚れたクッションじゃあ、ちょっと切ないな。
 「ロイ?」
 『何だ?』
 「何を跨いだんだ」
 『お前の身体だ』
 そうじゃなくて!
 わかっていての返事をはぐらかしてくる辺りに、まだまだ余裕がある。
 どこまでも、楽しませてくれるよなぁ。
 『……マクラ』
 「あ!なるほど」
 あれなら汚しても、カバー代えりゃあいいもんな。
 いっぱい出しすぎなければ。
 頭の中での想像に、今ロイがしているだろう格好が加わる。
 マクラにナニを押し付けて、自分の指を嘗め上げながら、一生懸命ナニを握り締めてるってト
コか。




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