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 ヒューズも、時々。
 暴力的なSEX、したっけなぁ。

 どれもこれも八つ当たり。
 誰にも負の部分を見せられないけれど、お前になら見られても良いと言われて。
 歪んだ欲望のはけ口にされる事すら嬉しかった。
 最後には何時だって必ず。
 ごめんな、ロイ。
 許してくれるよな。
 愛してるから、愛してくれるよな?
 と謝って私を、私が望む形でちゃんと求めてくれたから。
 どんなに暴力的であっても、私の幸せにしか繋がらなかった。

 しかし、このSEXはどうなのだろう。
 まだまだ十分に子供と言われる相手に、強姦陵辱させてしまうほど、追い詰めたのは私。
 正確には鋼のが、自分で自分を追い込んだのだとしても。
 元々の原因は、私とアル君。
 アル君が滅んだというのならば、私も滅ぶべきなのだろう。
 それは、わかっている。
 長く、アル君一人を闇に置いておくつもりもない。
 心配性の彼の事。
 まるで鋼のを守護するように、魂になってすら彼の側に居るだろう。
 今は、私が恥ずかしいだろうと遠慮してくれてるかもしれないが。
 一年は、待たせない。
 それまでに、私は鋼のを上手に操ってヒューズを返す。
 失敗はしない。
 させない。
 全ての咎は、私が背負う。
 もしかしたら、鋼のも、一緒に彼岸を渡る羽目になるかもしれないけれど。
 死なずとも正気を失わせてしまうかもしれないけれど。
 その責任もちゃんと取るつもりだ。
 金なら、生涯苦労しないほどに溜め込んである。
 私の信用できる人間に、鋼のの面倒を見させる事も可能だと思う。
 出来うる限りしてやろうと、現時点でできる手配は既に済ましてあった。
 
 ベッドの上に、とさっと寝かしつけられた。
 シーツからはふんわりと花の香りか何かがする。
 しみじみこの子は、ロマンチストだ。
 だからこそ、思い出ごと受け止めてやる、なんて。
 言ったんだろうけれど。
 「……肩、治してもらえないのかな……エドワード」
 「逃げねー?」
 「ここまで来て逃げるように、見えるかね」
 「遣りかねないとは思う」
 「信用ないんだなぁ、私は」
 まぁ、無理もない。
 それに、間違ってもいない。
 私は最後の最後で君を選ぶ事はできないから。
 「発火布だって、していないんだよ」
 「発火布なしで、練成ぐらいできんだろう?」
 どうだろう?
 できなくはないが、荒い練成になる。
 完全に術が発動するまで、君が黙っているとも思えないし。
 「できなくはないけど、今は無理だよ」
 「そっか」
 こめかみをぽりぽりっと指先で掻いた鋼のは、私の両肩を掴んで一息で関節を入れ直して
しまった。
 多少なりとも、人体の構造を把握していないとできない技だ。
 私も関節ぐらい嵌め直せるが、ここまで手早く完璧に出来るかどうかは、微妙。
 「ど?」
 「……大丈夫そうだ」
 ぐるぐると利き方を回す。
 痛みもなかった。
 「では、しようか。最初はキスがいいな…鋼の」
 「エド」
 「はいはい。エド?」
 待っていた唇に、キスは届かず、私に額に届いた。

 この子は本当に私に心底惚れているんだな、と感じずにはいられない、敬虔ですらある、
口付けだった。

 「……色々と後悔するかもしれんけど。最後にはアンタと二人で幸せになるからさ」
 「そうだね。そう、なれば良いね」
 私の布陣が完璧に敷かれるまでは、君だけを見ていてあげよう。

 せめて、束の間の蜜月を。
 心行くまで堪能したまえよ。

 嫣然と、微笑んでみせれば、ようやっと唇に貪るようなキスが仕掛けられた。
 私は彼の背中に手を回して、舌先で熱情を宥めながら、静かに目を伏せた。

                    

                                    
                                                       END




 *最後の最後までヒューズだけが好きなロイ。
   たまにはこんなんもいいかなと思いました。
   続編を書いたら、どちらに軍杯が上がるのか。
   迷う所です。





                                         前のページへメニューに戻る
                                             
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