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 ゲーム セラフィム・スパイラル

 絵と設定が大変好みで、画像&エンディングのフルコンプリートをやってのけた数少ないB
Lゲーム。
 自分、エロゲーの主人公は総攻と相場が決まってるんですが、このゲームに関しては、主
人公総受だと納得しています。BLゲームしては珍しく女の子相手のエンディングが二つもあ
るんですが、それですら受(笑)
 個人的にはエヴァの碇シンジと並ぶキング・オブ受様です。ははは。

 ゲーム内容としては、学園伝奇モノかな?
 とにかく浮気はせずに、一人の相手だけに集中していれば、比較的たやすくエンディングが
見れます。
 かなり詳しい攻略サイトさんがあるので、それを眺めながらやれば、初心者でもばっちりで
す!
 時折突拍子もないですが、ストーリー&キャラ&設定がバランスよく作られているので、
オススメのソフトだと思いますです。

書けるようなら、他のキャラとのお話も書いてみたいのですが、今回は『これで眼鏡してれば
完璧なのになー』と、眼鏡キャラが二人いるにも関わらず、どっぷりはまり込んだ加納先輩と
のお話。

エンディングの続きとなっておりますので、完全なネタばれです。
ご注意あれ。


 登場人物

 久神 暁人(クガミ アキト)
 ……警戒心が強く人慣れない、17歳。でも素直な所もありんすよ?
  お兄ちゃんに溺愛されています。ゲームの主人公です。

 加納 眞之(カノウ マサユキ)
 ……神社の跡取息子。18歳。主人公の先輩に当ります。誠実清廉で物静かなタイプです。
 が、主人公には甘いですよ?


 バッドエンドをどうしてもハッピーにしようという試みてみました(苦笑)




 
無我夢中


 ゆらりと、頭の中で漣が立った。
 こうした些細な変化ですら、滅多に起きないものだ。
 僕はゆっくりと、目を開く。
 一瞬で眼球が水分に覆い尽くされる衝撃に怯えたが、それは瞬きを数度すれば解消された。
 水によく似た液体に全身を包まれているので、指一本を動かすのも億劫なのだが、頭に響い
た、微かな。
 漣にも似た声が、僕を完全に覚醒させる。
 僕を抱き締めて放さない両腕は、どうしてだが今日に限ってその拘束がなかった。
 驚きながらも腕から離れると、僕は彼の腕の中。
 そして彼が作り出した水に限りなく近い結界から、まろびでる。
 微かな青みを帯びた裸体。
 その背には大きな一対の真っ白い羽を擁き。
 下肢は伝説の龍に酷似した鱗で被われた長い、長い尾。
 今は閉じられている瞳は、人を見下してやまない真紅に輝く。
 その姿は、とても美しいが、本性は恐ろしい。
 荒ぶる神だ。
 
 僕は、もうこれ以上傷つきたくなくて。
 ただ、大好きな加納さんの無事だけを願って、その荒ぶる神に身を捧げた。
 神は僕の身体を触媒としてその力を増大する性質を持つらしく、僕を抱き抱えながらも、かつ
て僕が住んでいた世界を己の望む暗黒の世界に変えようとしている。
 現実とも非現実とも区別がつかない、世界の変わりようが時折、神の意識を通して僕の中に
も流れ込んできた。
 身体を繋げなくとも、心が繋がっているのかもしれない。
 僕は、己の意思を放棄する代わりに、神の意思を自分のものにできた。
 だからといって、僕にはかつての世界の終焉を愁うことすらできなかったのだけれども。
 永遠に夢を見続けながら、神にその力を与えるはずだった僕が、どうして正気に返れたのか
は、わからない。
 ただ、こうして。
 一人結界の中で眠っている神を見上げる今が、たぶん。
 奇跡に近い。
 
 『……君……聞こえ、る……か……?…く……が……』
 懐かしい、声がしたのだ。
 僕を、弟のようにと、可愛がってくれた。
 あの人の。
 一緒にいた時間はとても短かったけれども、僕の信頼を全てを預けてもいいと思った唯一の
人。
 人や物の『気』を、普通の視界に映すその能力は。
 僕を何度も窮地から救ってくれた。
 神に、己を明渡す寸前。
 ただ、あの人が生き長らえるのを、祈った。
 元気でいてされくれれば、僕は、神の生贄として永遠を生きられるだろうと思えるほど。
 イトオシイ、人。
 『……くが、み……く、ん?……きこ、える……か』
 「加納、さん?」
 優しい声音。
 これはきっと、僕が望んだ幻聴。
 僕よりたった一歳年上なだけだったけど、何時でも落ち着いていて、物静かで。
 その癖、僕の心を何時だって誰より見透かして、甘やかしてくれた。
 僕が、傷つかないようにと。
 勤めて冷静に僕の欠点を指し示しながらも、否定せずに、君が悪い訳ではないと言ってくれ
て……。
 涙が、頬を伝った。
 返事が戻ってくるはずはない。
 僕と貴方が住む世界はかけ離れすぎている。
 それにもう、僕が神の物となってから。
 何年、何十年、何百年が過ぎたのか。
 加納さんが、生きているかどうかすら、わからないというのに。
 「……加納さん……会いたい……」
 会いたい。
 一目でもいいから。
 生きているのなら、どうか。
 神に犯された僕が、何に祈ればいいのかはわからないけれど。
 ただ、貴方に。
 会いたい。
 『俺も会いたいよ。久神』
 「!」
 それは絶対に、返ってくるはずのない言葉だった。
 言葉だった、はずなのに!
 「加納、さん?」
 『ああ、俺だ。聞こえるんだな?君は久神暁人なんだな?』
 「ええ、僕です。久神暁人です!何で?どうして?声が届くんですか!」
 『成功したのは、初めてだよ。こうして君に語りかけるのは五年。続けてきたコトだから』
 「五年……」
 と、いうことは、あれから最低でもそれだけの年月が流れているということだ。
 「僕が消えてから、何年経ちましたか?
 『今年で、ちょうど十年になる』
 十、年。
 『信じていた。君は……君のままで生きていると、信じていたよ』
 人には見えないものが見える目が、まさか異世界にいる僕までもを探しあてたというのか。

 「どうして、こんな事が可能なんですか?」
 僕という触媒を得て、神の力は増大の一途を辿っているはず。
 とても近い場所にありながら、限りなく遠いこの異世界に。
 声が届くというだけでも、きっと奇跡。
 『研究と検証を重ねた結果。神の力にも波があるのがわかってね。月の満ち欠けによって、
  その力が左右されるんだ。今は新月。神の力が一番弱くなる時期だ』
 そういう、カラクリか。
 よく、見つけ出したものだ。
 『須王君や不破君達も協力してくれている。皆、君に会いたがっているよ』
 仲の良かった級友。
 本当に、少しだけしか一緒にいれた時間はなかったけれど。
 とても楽しい日々だった。
 もう、二度と戻らないと思っていた。
イトオシイ時間。
 『今から十四日後。月食がある。月が完全に隠れてしまうその時が、君を救い出せる日だと
  考えているんだ』
 「十日か。わかった。僕はそれまでに神の弱点を探しておくよ。あると、思うんだ……」
 神と同化して、意識の境目もわからないほどに交じり合っていた、最中。
 



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