メニューに戻る次のページへ




 オリジナル 高城学園 

 もともとは綾瀬がエヴァを書くために立ち上げた設定です。
 オリキャラが暴走して、今まで書いた中でたぶん一番分量が多いシリーズだと思います。
 で、それが独立したっつーか、メインになったつーか。
 一応オリジナルです。

  高城学園=霊能者専門養成学園。
 
 登場人物

 直江 炯(なおえ けい)
 ……ボーイッシュなふたなり設定女性。晶激ラブ。
 学園内で唯一の神操師(かみくくり)という特殊能力を駆使する。
 16歳。

 南条 晶(なんじょう あきら)
 ……黒目黒髪愛らしさ炸裂の天然系。
 人を惹きつける声、魅惑音(みね)を持つ。
 学園内でもトップクラスの予見能力を駆使する。
 13歳。


 二部構成になっておりまして一部、二部と設定がだいぶ変わります。
 『林檎』は、一部の設定で。
 直江が晶にSEXの楽しさを教え込んでいる真っ最中のお話。



 
林檎


 「晶。土産。渚から」
 「カヲル君からですか?何でしょう」
 「ん?晶の好きな物だよ。ほら」
 椅子に座って本を読んでいる私の背後から、そうっと直江が覆い被さってきます。
 重くもなく、けれど存在感溢れる仕草に、私は小さな溜息を付きました。
 本当に小さかったので、直江には気づかれていないと思いますが。
 「あ!林檎ですね」
 首の近くから伸びてきた手が、目の前に突き出した物。
 真っ赤に熟れた林檎。
 私が大好きな果物の一つです。
 「美味しそう……」
 「剥こうか?」
 「このまま、食べてみてもいいですか?」
 「珍しく、行儀が悪いな」
 「駄目ですか?初めてだから挑戦してみたかったんですけれど……」
 私は、高城学園に来るまで、林檎はウサギさん型に切り揃えられた形しか見た事がありま
せんでした。
 果樹だから、ぷらーんと木からそのままの形でぶら下がっているのだと、そんな風に考え
ていたのです。
 よくよく考えても見れば、おかしな所ばかりなので有り得ない話なのですが、何故か頑な
に思い込んでおりました。
 「良いに決ってる。珍しいのが可愛かっただけだよ」
 すっと伸びてきた手は、私の手の甲を軽く拾って口付けてきます。
 直江は、他の人に比べてもスキンシップが過多な性質なのです。
 「好きなように食べなさい」
 くるりと返された掌の上、林檎が置かれました。
 ……結構、一個辺りの重みがある果物ですよね。
 「……と、その前に。手拭きとひざに掛けるナプキンだな……」
 「……すみません」
 気をつけて食べていても果汁が飛び散ってしまいます。
 洋服を汚すのは避けたい所です。
 百合の刺繍が施された真っ白い大振りのナプキンとウエットティッシュが、すぐさま準備
されました。
 直江は、何をするにも手際が良いのです。
 どうにも行動がとろい私とは大違い。
 尊敬しています。
 「はい。どうぞ。お嬢様?」
 すぐ横のテーブルの上に、ウエットティッシュ。
 膝の上にナプキンがかけられて、直江がぺたりと私の真正面に座ります。
 「あの、直江?」
 「ん?ああ、気にするな。晶が食べる所、見たいだけだから」
 「……恥ずかしいです」
 「慣れなさい」
 と言われても、自分だけが食事をしている所をじっと見詰められるのには慣れそうも
ありません。
 訴える目で見詰めてみても、こうと決めた直江の意志は固いのです。
 私は、今度は大きな溜息をついて、かぷりと林檎に歯を立てました。
 「……甘い」
 「だろう?お前は甘味が勝る林檎が大好きだからって、渚がわざわざ取り寄せてくれた
  らしいぞ?」
 何時も何かと私を気にかけてくれる渚君。
 綺麗で賢いだけでなく、とても、とても優しい人なのです。
 「ネット通販に関しては渚が最強だろうな。何でこんな物まで知っているんだ?ってくらいに
  詳しいから」
 「そう、ですね。先日は確か髪留めを頂きました」
 明るい紫色の輝くクリスタルで百合に良く似た花をモチーフにした、バレッタ。
 重宝しています。


 「ったくアレも、お前ばかりを構って困るよ」
 「普通だと、思いますけれど?」
 渚君にしろ、レイにしろ。
 ナギだって、世間知らずの私に色々と教えてくださるというのに。
 どうして、直江はこんなに怒ってばかりなのでしょう。
 「……お前に取っては、普通なのかもな。側にいれば誰でも甘やかしたくなる」
 あ!このままだと……。
 さすがの私も、いい加減学習します。
 この状況は、とてもイケナイのです。
 案の定、直江の唇が近付いてきます。
 また、キスされてしまう!
 と首を縮めて、目を閉じれば、耳元に届いた微苦笑の気配。
 直江の唇は、少しだけずれて、私の唇の端と頬に届きました。
 「林檎の汁が飛んでいたんでな?」
 ちゅ、と大きな音を立てて離れていったキス。
 「ハンカチが、ありますよ」
 顔が、紅潮しているのがわかります。
 言葉が、随分と拙くなってしまっているのも。
 「こっちの方が、いいだろう?」
 いいえ、とは唇が強張って動きません。
 私は何とか否定の首を振りました。
 「嘘をつくな。晶は林檎よりも私とのキスの方が好きだよな?」
 疑問口調とは思えない、威圧感に私はぶるりと震えます。
 直江は基本的に、とても私を甘やかしますが。
 その……性的なコトが絡むと、私が嫌がることばかりをするのです。
 「随分としてる、から。そろそろ慣れてくれてもいいと思うんだが……」
 ふぅ、と深い溜息。
 あんなに、恥ずかしいコト。
 慣れる日が来るとは、到底思えません。
 「まぁ、慣れないままっていうのも、初々しくていいけどな」
 せっかく食べていた林檎が、途中で取り上げられてしまいました。
 「直江!まだ途中ですっつ!」
 「後で、ゆっくり食べれば良いよ。今は私が晶を食べるのが先」
 「昨晩……今朝まで、たくさん、食べたではありませんか!」
 お陰で私は今日の授業に出られませんでした。
 授業といっても、世間様が言う所の授業とはだいぶ違います。
 支障がないといえば、ないのですが、やはり決められた時間には出たいのです。
 特殊能力を持つ私達に取って、受験は無用の物。
 しかし、私のような世間知らずを、数多培養する訳にもいかず。
 この、特殊能力がもしかしたら消えてしまう可能性もあるのだと。
 主に一般社会に迎合できるような、一般常識を教わるのです。
 他にも、己の能力を伸ばす為の鍛錬に近い授業も多くありますが、能力が既に完結して
いる私には、あまり関係のない話でした。

                         
 
      

                                             メニューに戻る次のページへ
                                             
                                             ホームに戻る