終わらないのだと、それだけが知れて。
私は、際限もなくしゃくり上げました。
右の目と、左目の端にキスがされて、それぞれ涙の後をなぞられる感覚には、正直、
怖気が立ちました。
こんなに、好きな相手なのに。
どうして、私は。
こんなにも、彼女を嫌悪しなければならないのでしょうか。
「愛してる……晶」
拒否しない、私にも咎はあるのでしょう。
例えどんな形であれ、求めるられるのは嬉しいのですから。
「直江」
「ん?」
「薬、使って下さい」
ですから、これは私の最後の譲歩。
「晶!」
「なぎ、のお薬を。使って下さい」
私を妹のように構ってくださる、高城学園最高の薬師。
草薙聖。
得意は毒薬だけどな!と、あっけらかんと笑う彼ですが、毒もまた薬の一種。
必要な場合も多くあるのでしょう。
素晴らしいです!と告げれば、苦笑して頭を撫ぜられました。
その、なぎが作ってくださった薬があるのです。
直江の行為が辛いのです、とストレートに訴えれば、じゃあ、これだ!とその日の内に処方
して下さいました。
私が、辛くなく。
直江も、喜んでくれる薬です。
しかし何故か、直江はこの薬を使うのを嫌がるのが常でした。
今も、また。
「必要ないだろう」
「あるから、お願いしているのです」
「私には、必要ない」
「……そう、ですか」
私には、必要です!と、これほど訴えでも通じないのならば、仕方ありません。
最近覚えた、心と身体を乖離する方法を使います。
身体に何をされても、心がそこにないのならば、さして。
辛くはないのです。
私は静かに目を伏せました。
直江は、それを合図と受け取ったのでしょう。
彼女が言う所の、愛撫、を展開してゆきます。
声は適当に上がります。
恥ずかしいと思う心も、嫌悪も、そこにはないのですから、後は身体が勝手にするだけです。
乳房を揉みしだかれながら、キス。
痛い、と漏れた言葉も、興奮する彼女の耳には睦言としてでしか届いていないのかもしれま
せん。
直江は、私の心が、今。
身体の中にないことに、気がついているのでしょうか?
いるのでしたら、本当に彼女が足手いるのは私の身体だけなんだということですし、いない
のでしたら、私の感情などきにかけるものでもないということです。
どの道。
寂しい話です。
何時の間にか、椅子の上。
全裸にさせられた私と、襟元すら乱さない彼女。
椅子の手すりに、太股を乗せられた羞恥極まりない格好に、私は大きな溜息をつきます。
「……触れて欲しい?」
ゆっくりと首を振りました。
けれど。
「素直じゃないな」
彼女は、楽しそうに首を振って、私の剥き出しになった股間に顔を埋めます。
ぬるぬると動き回る舌は、爬虫類が動き回ったら、こんな心持になるだろうという、おぞましい
ものです。
私は、直江が決して気が付かないのだろう事を承知で、彼女の背中に侮蔑の眼差しを降り
注ぎ続けました。
彼女が、私の中をその凶暴な凶器で引き裂き、その衝撃で目を伏せるまで、ずうっと。
END
*後にめろらぶになる二人ですが、現時点では寂しい感じに。
直江の待ち時間が長かったので、もう少しいい目を見せてあげたかったのですが。
晶に拒否られました(汗)
機会があれば、ラブ編も書きたい模様。 2009/02/19