真っ青な顔して、失禁していらしたから、恥ずかしくて黙っていらっしゃると思ったのだけれど。
やはり駄目な上官の部下は、駄目な部下にしかならないのかしら?
「絶対しゃべらないで下さいよーって口止めされてたんスけど」
さすがは、部下に信頼の厚いハボック少尉。
情報収集能力は、下手したらヒューズ中佐を上回るわ。
「大丈夫よ。二度はないでしょうから」
「でしょうね。すっげえ怯えてたらしいっスよ」
「……もしかして、ジェヅランド少将の事かな?」
「あら、大佐までご存知なんですか?」
「『綺麗だけど、恐ろしい部下を持ってるな。君は、どうやって飼いならしたのか教えて欲しいも
のだ』なんて、言われたんだが……もしかして、まだ狙ってるつもりだったんだろうか」
大佐の額に皺が寄る。
私のせいで、困った風な表情なぞさせたくはない。
「大丈夫ですよ。大佐。セクハラには、きっちりと軍法会議にかける前にお仕置きしますから」
腰のポケットから、銃を取り出して、じゃこっと、弾丸を装填する。
「……ルガー・スーパーブラックホーク……名銃ですが、軍では使いませんよね」
歩く雑学帝王と呼ばれるファルマン准尉の知識は、軍事関係に関しては特に多い。
少なくとも、今、私が手にしている銃は、幻の名銃と呼ばれている類のもので、軍ルートで
はなく、裏ルートで手を入れたものだ。
自動小銃ではなくリボルバー(回転式拳銃)は、装弾数が少なく最終的な威力に欠けるの
で、軍では配給される事はない。
最も、この銃に関しているのならば、44マグナム弾が装填できるので、とんでもない破壊
力を持っている。
使いこなせるようになれば、良い武器になるだろう。
「プライベート用ですから」
「……らしい、ですが」
そう、私の給料の使い道はこれ。
大佐を護るのを第一の前提に置いて、己をも生き長らえさせる為に。
なるべく効率よく、敵を葬るには、銃器は幾らあってもいい。
「普通、女の人は、目の色輝かせて銃の話しないっスよ?」
「僕、聞いたこと有ります。一度も受け取って貰えなかった差し入れの中に、ガンカタログ
入れてたら、それだけなくなってたって」
「先日のオークションで落札されてた、出物も、やっぱり入手されたんですよね」
「あー。銃よりは安いかな、俺が買ったプレゼント……」
「……ホークアイ中尉……」
大佐が、相変わらず困った風な顔をしたままで、苦笑する。
「プライベートで……ルガー・スーパーブラックホークは、私もどうかと思うよ」
「持っていると、知れていればそれでいいのですよ」
「わかった、噂は振り撒いておくよ『中尉に手を出そうとするとルガー・スーパーブラック
ホークが、火を噴くぞ』とね」
やんわりと銃をしまう仕種をして、酒を勧めてくる。
私はゆるく微笑んで銃をしまうと、大佐が注いでくれるワインで、グラスが赤々と満たされ
るのを、見詰めた。
「ありがとうございます」
「ん」
大佐が差し出したグラスの縁に軽くあててくれば、大佐以外のグラスもが、かちかちと寄っ
て来る。
まだまだ、給料日の酒宴は続きそうだった。
END
*リザ視点 軍部
話がずれ込んだ時はどうしようかと思いましたが、何とか軌道修正できて良か
ったです。
実は、リザは片想いだと思っているけど、本当は両想いだったりするといい。
皆から祝福される、アイロイも書きたいんだけどなあ。
そういえば、性別転換ネタもやりたいなあ。
男前なリザたんに、乙女なロイ……?
今と変わらない?自爆!