「はい。お粗末さまでした。と、言っても用意したのが僕なだけであって、お菓子代は皆から
徴収しているんですけどね」
「へーそうなんだ」
「そうそう。菓子類は交代制で買うんだわ。先日准尉が買ってきてくれた、げっぺい、だっけ
か?あれも大将に食わせたかったよな」
「月の餅と書いて、げっぺい。極東のお菓子でとても日持ちするものなので、エドワード君
が来るまで十分残っていると思ったんですが……」
そこで、つすすすーっと皆の目線が大佐に集中する。
「大佐が全部食べてしまったのよ」
呆れた風に、その癖口元の端には微笑を浮かべて中尉が告げた。
「ええ!俺の月餅?大佐ってホント甘物に関しては食い意地がはってるよなー」
「食い意地って、言いすぎだとは思わないかね、鋼の」
仮にも上官に向かって、とぽしょぽしょ囁くのは、悪いと思っているのだろう。
すまなかったな、とこんな場面で大人しく謝れる人ではないのを承知で、エドワード君は更
に追い討ちをかけた。
「言い過ぎなんて。お子様な俺のお菓子を全部食っちまうような人には、どんな責め言葉
でも受け入れて貰わないとねぇ」
ハボック少尉なんかは、エドワード君の言葉にしきりと頷いている。
目線だけで少尉を呼びつけて、側にきた少尉の頭をぼかっと殴ったのは全く困った八つ
当たりだ。
「わかった!今度准尉にまた買ってきて貰うから、それで勘弁しろ!」
頼んでもいいか?とこれまた目線を投げた大佐に向かって、准尉が目を細めて頷く。
「たっくさんだぞ!大佐の分はなしだからな!」
「何だと?お金を出すのは私だぞ!」
「それは当たり前です。わざわざ買ってきてくれるのは准尉なんですー。准尉ー大佐の分な
んか買ってこなくてもいいですからねー」
それはもう嬉しそうに笑ったエドワード君に、大佐はぐうの音のも出ない。
やる気になれば、ホント。
すっごい人で、尊敬しているんだけども。
こういう大佐を見ると何て言うのかな?
大佐も、一人の人間なんだなーとか、しみじみしちゃうよね。
人間兵器とか、陰口叩く奴らにもぜひ見て欲しいよ。
きっと、認識を改めると思うんだけどなあ。
まだまだ続くエドワード君と大佐の漫才を楽しむべく、時計を見ながら僕は、他の人達にコー
ヒーのお代わりを聞いた。
END
*フュリー視点大佐中心軍部メンツ。
こんな漫才みたいな日常どうよ!
OL勤めしてた頃を思い起こせばありかなーとか思うのですが。
そういえば、自分が書く大佐は甘い物好き好き設定だなー。
そして酒は強くない、と。
公式設定で出てないと必ず決めてしまう、綾瀬的受様設定です(苦笑)