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 オリジナル 高城学園 

 高城学園=霊能者専門養成学園。
 サイキックファンタジー要素てんこもり学園モノ。
 綾瀬の欲望のままに書き綴られるシリーズ。

 草薙 聖(くさなぎ せい)
 ……長髪眼鏡で垂れ目。
    いつでも白衣を着て白手袋を嵌めている、学園唯一の毒操師(けみし)
    色々な意味で綺麗な存在に大変弱いお人。
    恋愛損得勘定なしに晶を溺愛。生徒会副会長。16歳。

 桐ノ院 和臣(きりのいん かずおみ)
 ……オールバック眼鏡のクールビューティー。人を魅了する瞳を保持する。
    晶にめろめろで彼女を追いかけて高城学園に転入。生徒会会長。16歳。

 南条 晶(なんじょう あきら)
 ……天然ほややん系のお嬢様。
    皆にほどなく愛されているのに気づいているのか、いないのか。
    この時点では、協力者である直江だけが特別な存在。生徒会会計。13歳。

 二部構成になっておりまして一部、二部と設定がだいぶ変わります。
 『刹那的』は、一部の設定で。
 切に晶を想う桐ノ院に、草薙が嵌る瞬間を(笑)




 
刹那的
  
                                     
 「職業選択の自由〜あははん♪」
 鼻歌交じりに生徒会室のドアを開ければ、そこにいるのは見知った美男美少女。
 「こんにちは、なぎ」
 美少女の方が、とてとてっと小走りに近寄ってきて、広げた俺の腕の中に、ぽふんと収まる。
 「はいよ。こんちは。何?和臣に構って貰ってたのか」
 「はい。髪の毛を編んで頂いてました」
 この笑顔見たさに、何でもやってのけるという輩は多いだろう。
 俺も、晶に逃げられて、むっとした顔で俺を睨み付ける和臣も。
 「どれどれ。おお!綺麗に編み込んであるなー」
 頭一つ分ほどの身長差で、晶の髪の毛を天辺から覗き込めば、毎日梳られている艶やかな
黒髪が、ほつれ毛も残さずに丁寧に編みこまれていた。
 細やかな作業がとんと苦手な和臣が、ここまで上手に晶の髪型を作ってやれるようになった
のは、一重に俺が実験台になってやったおかげだ。
 晶の髪の毛は腰まであるが、俺もほぼ同じ長さ。
 もっともキューティクル全開な晶の髪の毛と違って、手入れもしない俺の髪はばっさばさの枝
毛だらけだけれども、練習台にはもってこいって奴だ。
 「和臣ちゃんも、上達したもんだ」
 うんうんと頷く俺に対して、和臣無言。
 余程、晶が自分の手の中でなく、俺の腕に抱かれているのが気に入らないのだろう。
 「晶。リボンがまだですよ」
 「あ!そうでした。続きをお願いしてもよろしいですか?」
 「ええ、勿論」
 怜悧な、と呼ばれる面立ちも晶に向けられている時だけ、やわらかな色を帯びる。
 再び晶を自分の腕の中に取り戻して、満足げに微笑んだ和臣は、晶の髪の毛に、リボンをつけ
てやっている。
 淡いラベンダー色をした絹のリボンは、俺の末の妹・泉とお揃いで誂えたものだ。


 「はい、完成しましたよ」
 後ろから手鏡をあてて、自分で手鏡を持つ晶に綺麗に結べたリボンが見えるようにしてやっ
ている。
 なんてーか、こう。
 甘々のラブラブだ。
 「やっぱり優しい色のリボンですよね。ありがとうございます、和臣さん」
 「いいえ。喜んでいただけて嬉しいですよ」
 背中から、晶のやわらかな頬に軽く唇を寄せる。
 実兄に過激なスキンシップを日常と教え込まれた晶にとって、ほっぺちゅうなんか、おはよう
の挨拶と変わらない。
 お返しに、と腰を屈めた桐ノ院の額に唇をあてている。
 晶の恋人である直江が見たら卒倒しそうな光景だ。
 「そういえば、直江はどうした?」
 「……神操師の技を請われて出張中ですよ。貴方もご存知でしょうに」
 せっかく晶と水いらずにすごしている時に、直江の話を出すな!ってことらしい。
 不機嫌な声で嘲笑された。
 「そーいやーそうだったなあ」
 桐ノ院の言う通り、俺は先日行なわれた生徒会の赤紙(せきし)白紙(はくし)任命の儀に参
加していた。
 
 高城学園という学園は、生徒が稼ぐお金で運営されているとんでもない場所だ。
 霊関係の全国各地から届くあらゆる相談事を引き受けて、ランクに応じて代金を徴収するっ
てシステムになっている。
 でもって、学園理事長他一般生徒あてに直接送られてくるあらゆる依頼を、予見斎を中心
に生徒会が統括し吟味した挙句、一般生徒及び生徒会メンバーに書類で以って通達された。
 書類には二種類あり、白紙と赤紙に分かれている。
 白紙は、一般生徒及び生徒会メンバーに任命されるもので、比較的簡単な物が多い。
 出向くまでにも満たない、思い込みめいた手紙などの返事もこの白紙によって指示され
た。
 定期的な封印地への訪問、極々簡単な除霊&浄霊、札や薬などを依頼主の元へ届け、
説明をしながら、その不安要素を取り除くといったものが多い。
 赤紙は、生徒会メンバーにのみ任命されるもので、時に命を落とすほどの危険な物が含
まれる。
 未知なる存在の封印、複雑怪奇な除霊&浄霊及び滅殺。人外・異形に関する情報の独
占が主なものだろうか。
 白紙が一日平均数十枚、多い時には百枚を数える割に、赤紙は多くても週に一枚ほど
の率で発布されている。
 しかし、白紙での死亡率は一パーセントにも満たないが、赤紙の死亡率は三割を超えた。
 精神異常などを含めれば五割には上るだろう。

 俺も生徒会メンツの中では、攻撃系統に分類されるので、何枚もの赤紙の仕事をやり終え
てきた。
 単独での覇業を成し遂げたこともある。
 が、それでも直江の戦歴には遠く及ばない。
 女でもあり、男でもある直江は、使う技の凄まじさも去ることながら、臨機応変に、自分の身
体を使い分けるの派手な鮮やかさがあった。
 それも皆。
 最高峰の予見斎として名を馳せる晶に、相応しいようにという一念の成せる偉業。
 「無事に帰って来れるはずなのですが、十六夜が不安の残る予見をするので……」
 十六夜とは俺の協力者でもあり、晶の親友でもある穂積閖子の事。
 けぶるような儚い美貌の女だが、中は腹黒い。
 晶を盲愛する直江が、憎らしくて仕方ないのだ。
 やはり彼女も晶に捕らわれた一人だから。
 晶を独占する者、晶に懐かれる者には容赦が無い。
 「直江と晶が仲良しさんなのを妬んでいるだけだ。予見の能力はお前の方が遥かに高い。安
  心しとけ」
 「ですが……」
 「何よ、晶ちゃん。俺の言う事が信用できない?」
 「そんな事はありませんよ!なぎは、何時だって嘘を言わない」
 過去現在未来の全てを見通す少女に、嘘をつかないと断言されるのが、どれほど破格な対
応かは。
 無防備に寄せる晶の、俺への信頼が物語っている。
 見透かされるとわかっていても、人間、てめぇに都合の良い嘘をついてしまうものなのだ。
 俺は誰かを護る為の嘘も、絶対につかない。
 己の意思で、そうと決めたから。
 「んじゃ、いい子にして待っとけ。な?」
 「はい」
 よしよしと頭を撫ぜてやれば、少しだけ肩を竦めて受けている。
 口元は緩やかに笑んでいるところを見れば、どうやら安心したらしい。
 ふと目線を感じて、桐ノ院を見やれば奴は、複雑な顔をしていた。
 恐らくは、自分の手の中にいても、自分が安堵させてやれなかったのが悲しくて、悔しいの
だろう。
 元々恐ろしく誇り高い男だから、屈辱は深い。
 俺の目線に気が付いて、ゆっくりと帯びる挑戦的な色。
 誰も、お前と晶を取り合う気は欠片もないというのに……。
 可愛い、奴。
 ……可愛い、奴、だとう?
 ちょっと、待て俺?
 大丈夫か、自分?





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