血を吐くような、慟哭を。
何度。
「未来は変えられても、過去は変えられませんからね」
「……晶……」
真っ白い月読の華奢な指先が、私の頬を、首筋をやわらかく擦ってくれる。
微かな温もりは、ささくれだった私の心にひたすら優しく染み入るようだ。
「今こうして、貴方の手の中で癒されるのが、私の幸福というものです」
それこそ、眩暈がしそうなほどの。
例えば、螺旋階段の一番上に立って、遥か下を見下ろす時の、あの眩暈。
くらくらと頭が振れて、足元が覚束なくなる恐怖。
その癖、絶妙な浮遊感は不思議と心地良く、頭の中をまっさらにしてくれる。
吹上げる風が、解れ毛を靡かせて、擽る、その感触ではっと、我に返る時。
返らなければ、いつまでも、いつまでも佇んでいるのだろうと思う。
吸い込まれれば死に直結する、落下の誘惑。
生きるか、死ぬか。
その時の気分次第で選べるのならば。
私はいつでも、潔く死を選ぶ。
それが私に許された、最後の幸福だろうと思っているから。
END
*高城学園 月読&晶
昔大好きだった同人作家さんが書いていた、螺旋階段の描写を際限してみたかったけど、
挫折。
ちなみに、自分はあのくらくら感はかなり好きです。