大平洋炭鉱釧路鉱業所

正直なところ、このときの旅の記憶が本当に定かでない。まったくこれでは話にならない。駅からバスに乗ったのは覚えているのであるが、どこをどのように走ったのか、気がつくと私はノッポ電機の前にいた。しかしすでにそこには、旧型の黒い電機の姿はなく、真新しい新型が頻繁に走る、少々イメージの異なるナローとなってしまっていた。

今となってはぜいたくな話なのだが、この線路はナローとはいっても、一般的なヒョロヒョロの線路のイメージはなく、とてもしっかりした軌道で、おまけに10分ごとに列車が来るものだから、何か拍子ぬけしてしまうくらいいまどきのナローであった。ちょっとイメージが違うなどと感じていたし、やはり旧型の黒い電機のイメージが強烈であったため、あれと比べると見劣りした。いくらノッポ電機とは言え、その姿に旧型をダブらせ、遅すぎた渡道を悔やみ続けていた。

それでも、集炭所のあるループ線まで行くと、新興住宅地に囲まれたとても独特の風景に感動し、夢中でシャッターをきっていたのを覚えている。

人に教えてもらったのか(はっきり覚えていない・・・数年前なのに)近くの公園に、あの黒い電機が保存してあることを知り、歩いていった。遠くぼた山を望む高台の公園に、2台の電機が沈黙していた。実車を目の当たりにすると、またまた後悔の念が口をついて出た。その後、釧路駅外れのDD51の廃車群を撮影して、釧路を後にした。それ以後、釧路へは行っていない。

時は移り、あの新型電機も今はなく。構内に放置されたり、居酒屋のマスコットになったりのニュースを見るにつけ、やはり撮っておいて良かったと思う。鉄道は車と違って、そのものを復元してもやはり虚しい気がする。やはりそれに見合った鉄道風景がないことには・・・。だからなおさら、取り戻せない時間の流れを痛感し、独りむなしくなってしまう。

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