そして屋久島。1日目は酒井どころか1両の動いた車両も、人に会うことも出来なかった。天気も悪く雨男健在!酒井は死んだように車庫に眠っている。廃車になってしまったのだろうか。2日目、だめかもしれないという不安を胸に早朝の荒川を目指す。途中かなり大きいトレーラに追いつく、「もしかして・・・今日集材があるのだろうか・・・。」期待と不安の中荒川に着く、「きょう動きますか?」愛林の作業員の方におそるおそるたづねる。「動くよ。」間もなく酒井のキーがひねられ、あっと言う間に酒井が息を吹き返した。元気に車庫から出てくる。狂喜する私。その一日は久々に体験する感動の連続であった。よくぞ、よくぞ生きていてくれた。私は何度も心で叫んだ。

 

・酒井に会うために

 安房森林軌道の朝は早い。7時前後に荒川にスタッフが集まると、すぐさま出発の準備が始まり、あっと言う間に出て行ってしまいます。このため列車を撮影するためには、遅くとも6時には安房を出ないと「行きの撮影」がしんどくなるのであります。特に朝の列車を沿線で撮影する人はそれに合わせて早くでなくてはならないから、必然的にもっと早起きしなくてはならなくなります。まるで夏休みを迎えて虫取りに行きたくて朝からごそごそしている少年のごとく、夜も明けぬ屋久島をレンタカーを走らせる私でありました。このため宿泊先は出きる限り安房にする方が無難であります。しかし、現在屋久島については観光ブームらしく、ホテル等も予約で連泊出来ないことも多く注意が必要です。加えて、屋久島に入る飛行機・船についても同様に、早いうちから予約が必要となると考えておいた方が無難なのです。

 荒川までの道のりは少々めんどうで、荒川分れと呼ばれる分岐点までは比較的舗装された走りやすい道でありますが、一部対向車とのすれちがいが厳しいこともあり注意が必要であるし、さらに荒川分れから荒川に至る林道は未舗装路も多く、道幅も狭い。にもかかわらず登山者送迎のためのタクシーやら大型バスが侵入してくるため、時にはそのすれちがいのために思わぬ時間を要することもあります。乗用車など3人も乗れば車体下をすりだしてしまう悪路であるから(まっ、特にあたしゃデブですからね。)、まだ夜も明けきらぬうちから運転の自信のない人は、宿の送迎バスやタクシーを利用するのが無難であるかもしれません。荒川には登山者のための駐車場やトイレの設備があり、この辺はとても便利なのですが、当然のことながら食事の設備はないので、予め用意しておく必要があります。ホテルであれば登山者用に朝食と昼食の御弁当の手配をしてくれるはずでありますし、安房の橋のたもとに「ひまわり」という御弁当屋が朝5:00からやっているので、ここを利用するのもいいかもしれません。(ただし、5:00〜7:00までは予約の人のみの販売になるので、予め予約が必要です。)

荒川には各車両の車庫があり、我らが酒井の車庫は上屋だけの粗末なものです。7:00過ぎにここに来て、酒井がいなければ出動中。いれば本日はお休みということになり、とても分りやすいです。その脇には営林署の立派な車庫があり、中にはきれいなモーターカーが休んでいます。線路を伝って歩いていくと、苗畑に向かう屋久電の専用線との分岐点があり、列車はここでスイッチバックして行くことになります。

屋久電への道はフェンスが貼られ現在一般の進入は固く禁じられており、誠に残念ながら屋久電の軌道は昔の書籍でしか見ることは出来ません。(山間に響く北陸重機のエンジン音のみを聞く、虚しさといったら・・・)ここから反対側の鉄橋を渡り、素堀りのトンネルをくぐるともうひとつの車庫が現れます、ここには愛林が使用しているモーターカーと私が知らなかった存在の北陸重機のDLのねぐらです。北陸重機のDLについては現在屋久電が使用しているDLと同じ時期に使用していたものと思われるますが、エンジンボンネット部分など改造を受けているのか、ずいぶん形が違っています。初めはいよいよ酒井に代わる新型機なのかと思いましたが、愛林の方の話によるとそうでもないらしいです。(というより軌道が悪いため、入線出来ないとのこと。)

庫外にはもう1両酒井の廃車体が骨組みだけになって残っています。(この姿が何とも切なくていい!)

 

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