DESIGN

 当地は20数年前に宅地造成された良好な分譲地内に位置します。周囲の街並みは大手の在来木造の住宅が建ち並び、
近年メーカー住宅での建替えが進んできています。街並みを考えると、いささか物足りなさ、嘆かわしさを感じます。
 かつての古い街並みの持つ秩序と多様性の同時的実現、全体の一体性と各々の建物の個性とのバランスの取れた調和、
もう無理なのかとも感じます。街並み形成における各々の建築の役割は、微々たるものではありますが、建築がアイデ
ンティテイー
を持ち、街並みを語ればもう少し良くなるのではないかと思います。
 本建築では、相隣環境としての通風採光を保証するべく前庭配置を踏襲しながらも、素材感や表出により街並みに変
化と建築らしさを与えることにより街並みに参加できればと考えました。
 建物は、内部機能、法的条件により比較的マッシブな形態となっています。ボリューム観を軽減するために1階外壁
を漆喰土壁、2階から上をメタリックなガルバリウム鋼板のツートンな仕上げとしました。ノスタルジックな素材とモ
ダンな素材を対峙させることにより、素材相互が意識しコミュニケートしながらハーモニーを奏でればと考えました。
FRPのスクリーンや木造のバルコニー、デッキ、フレーム、物干し、庇等は内部機能の表出ではありますが、平面的
なファサードに変化を与え、街並みに和ませる役割をしています。
 想いのない建物、素材感のない建物はいくら集積しても、結果的に群をなして没個性です。建物が街並みを語り、街
並みが個性を持つことにより本建築が街並みの一部なることを願ってやみません。

こだわり

素材は素材らしく:2階から上の外壁のガルバリウム鋼板はいわゆるブリキです。安価な材料を存在感を持たせるため、土
          壁に負けないよう角波としました。土壁は島田式漆喰仕上げ、自然な土色に近く、職人の手を感
          じるよう凹凸面をつけ陰影を持たせました。木部は素材の色を活かした天然塗料を塗布しました。
          アプローチ部分は全体に存在主張をしないコンクリート色としました。

紅の玄関ドア  :髪を結い、白無垢の着物を着、白粉を塗り、最後に小指で紅を。全体に無垢の素材感を活かし、
          最後に一点の色をほどこすのをものづくりの作法のひとつにしています。施主の奥さんの好みも
          あり、住まいの顔としての玄関ドアを「紅色」としました。限りなく純粋な炎の赤色です。

開かれた家   :アプローチ部は特にフェンス等を設けず、生け垣も粗植なオープンなものにしました。門柱脇にはベンチを
          設けました。住み手の街に対するさりげない想いを表現しています。
         

NEXT