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 近年、住宅に関しても「健康」「環境」が大事なテーマになってきています。「パッシブソーラーハウス」「エアスルー住宅」「エアーサイクル住宅」等々と住宅メーカー等の工法も数多くあります。しかし、少し自然素材を使えば「健康住宅」、イニシャルコストのかかる機械化高スペックな「環境共生住宅」と、どうもしっくりこないものがほとんどでした。もう少し、自然体で機械にあまり頼らずにハイスペックな性能の住宅がつくれないものかと考えていた折り、建築家仲間から「エアムーブ工法」を紹介されました。
 エアムーブ工法は、屋外と屋内の間の壁内の暖められた空気の上昇気流を利用し、循環させることにより屋内環境を一定に保つ工法です。ちょうど人間で言えば血液の循環による体温保持みたいなものです。このシステムとしての設えは、床下の手動開閉式の換気口、空気の逆流を防止する弁としてのエアーフィン、エアーウイング、屋根裏に取り付けられる手動開閉式の屋根換気口(ルーフゲート)だけです。また、このシステムを支える住宅性能として高気密、高断熱、断熱基礎・土間コンクリートによる床下の断熱が前提となります。
 冬場は、床下換気口、ルーフゲートは閉められた状態となっており、南側で暖められた空気が家全体を循環します。夏場は、床下換気口、ルーフゲートを開け、暖かい空気をルーフゲートから排出し、圧力差により床下の涼しい空気を壁内に循環させます。夏場、冬場共に躯体内の空気循環により屋内環境は安定します。
 この工法は、躯体内空気の循環に限られているため建築的工夫によりもう少し積極的に屋内と関連した空気の流れを創れないかと応用したのが「環境スリット」いわゆるかつての民家の土間空間です。建物半分をゾーン分けし西側のゾーンは、純粋なエアムーブ工法とし、東側ゾーンで土間空間とサンルームの基礎部分に基礎パッキンを入れ床下の空気と関連づけ、土間空間天井部に可動式のがらりを設け小屋裏と関連づけています。土間部は冬場は、床下の暖かい空気を屋内に引き込み、夏場は床下の涼しい空気を取り入れます。さらに、土間を通して各室の環境調整を図ります。
 サンルーム部は壁上部にエアフィンを付けることにより暖かい空気を躯体内に送り上昇気流をうみます。小さなモーターの役割をします。

特色・性能・効果

●高気密、高断熱住宅
 ・断熱材として外壁に50mm、屋根に70mmの硬質ウレタンフォー使用
 ・外側通気層の屋外側に気密調湿シートを使用
 ・基礎内側に50mmのウレタンフォーム使用
 ・土間コンクリート打設
 ・サッシに複層ガラスを使用
 *冬季は次世代省エネ基準程度の高気密、高断熱住宅
 *夏期は気密を解除し風通しの良い快適住宅

●省エネ住宅
 *高断熱、高気密、機械に頼らない室内環境の保持、による省エネ化

●静かな住宅
 *壁が二重構造のため、外部からの雑音が入らない静かな住宅

●健康住宅
 ・ホルマリン排出量の少ない合板の使用(F1以上)
 ・天然木材保護塗料の使用
 ・一部けい藻土の使用
 ・床下に調湿材としてけい藻土を敷設
 *できる範囲で健康に配慮した住宅

●高耐久住宅
 ・4寸(120mm)柱の使用
 ・余裕のある軸組強度
 ・ホールダウンアンカーによる地震時の柱の引き抜けの防止
 ・壁パネル工法により、木造筋交いの3.5倍の強度を確保(実験結果)

●ローコスト住宅
 ・外壁パネル工法による手間の省力化、工期短縮。
 ・機械に頼らないエアムーブ工法
 ・室内環境の保持による冷暖房機の使用軽減

 *通常の在来工法、メーカー住宅と同程度の価格での高性能住宅を実現

●高齢者に優しい住宅
 ・段差の少ない屋内空間
 ・トイレ、浴室に手摺の設置
 ・玄関土間部にスロープ設置可能なスペースの確保
 ・目の行き届く空間構成

●環境に優しい住宅
 ・できるだけリサイクルの可能な素材の使用
 ・自然素材や木質系天然塗料の使用
 ・雨水の貯留、浸透
 ・できるだけ機械に頼らないシステム、省エネ化

等です。

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