タイ料理、と聞くと辛いだけと誤解している人が多い。断言しよう!
本場のタイ料理は、決して辛くなどない!タイ料理は「辛い」のでは
なくて、「痛い」のだ!現地でも最強の、緑色をした小粒の唐辛子、
プリッキー・ヌーを一かけら、口に入れてみよう。ものの数秒も
しないうちに、口の中がビリビリした、電気のような感触に満たされる
はずだ。その感覚に、逃げ場はない。やがて全身の体温が上昇し、
頭の中までカッと暑くなってくる。そこに、ビールを流し込むと、
少しは口の中や体が冷やされ、口中の痛みが引くと同時に、料理の
うまみがわかってくる・・・と、いいのだが、そこまで都合は良く
ない。そこまで行くのに、ビール2本は必要だろう。この唐辛子は
カレーやある種の炒め物に使われる。また、どこの店のテーブルにも、
これを酢につけたものがおいてあるので、自由に振りかけて食べても
いい。
まあ、しかし実際は辛い料理は全体の3分の1くらいのもので、実は
中華風の味付けや甘辛い煮物も多い。僕がよく食べていたのは、
ご飯と、生姜と鶏肉の炒め物(パッ・ガイ・キン)や、豚足とタマゴを
甘辛く煮たもの(カオ・カー・ムー)、カレーだがココナツミルクが
きいていて、甘みもあるグリーンカレー等で、どっちかというと辛い
ものは少なかった。しかし、もちろん、レッドカレーや唐辛子をたく
さん使ったいためもの、そして前述の振りかけもよく麺類や炒飯に
かけていた。そして、しばらくしたらその辛さにも慣れてしまい、口の
中が痛い、という事は少なくなった。ちょっと辛いな、というくらいに
まで思えるようになったのだ。そして、食べた後のどっと汗をかいた
あと、すっと涼しさを感じる瞬間を楽しめるようになった。それが
夕暮れで、路上のテーブル席で、ビールがあって友人がいれば、言うことは
何もない。