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ニューヨーク・シティ
1984年 5月


注釈

St. Bartholomew's Greek Orthodox
 
COLUMBIA(第4連):コロムビア・レコードのこと。後の、CBSレコード・現在、ソニー・ミュージック。(サイモン&ガーファンクルはコロムビア・レコードと契約していた。アートはソニー・ミュージックと1993年まで契約していたが、以後、それぞれの企画にあわせて、レーベルを替え、独立している。)

COLUMBIA(第2連):ニューヨーク・シティのコロンビア大学。

MIES':ミース:ラドウィッグ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwing Mies van der Rohe)(1886―1969) ドイツ生まれの米国の建築家―1958年にパーク・アべニュー375番地のシーグラム・ビルを設計。

TRAVERTINE:トラバーチン:イタリアで採掘される、薄い色の石灰石。

ST. BARTHOLOMEW'S GREEK ORTHODOX:聖バルトロメオ・ギリシア正教会。右の写真参照。(Photo by Mary K. Rhinehart. Used by Permission. All rights reserved.)

【訳者注釈】
YOU:この場合、"God"、神を意味する。
 

解説
こでは、私たちは、いかに、ニューヨーク・シティがアートの人生において大きな役割を果たしてきたかを見ることが出来る。彼の過去と、パーク・アベニューとの関係を私たちに案内してくれている。コロンビア大学時代(サイモン&ガーファンクルの3年前)の、(1958年にラドウィッグ・ミース・ファン・デル・ローエが設計した)シーグラム・ビルの地下室でのクリスマスのアルバイトから、「愛の狩人」("Carnal Knowledge")撮影現場の建物を通り過ぎて、アートが"Bridge Over Troubled Water"のヴォーカルのレコーディングから一休みする、51丁目とパーク・アべニューの角の聖バルトロメオ・ギリシア正教会(現在は監督教会派の教会になっていると思われる)まで。彼はちょっとマイクから離れて、フラストレーションを冥想の間に解消して、自分の才能をフルに発揮しようとしている。
次の一文は、この詩とこの時点でのアートの人生を要約する:"I love this town. But nothing did I ever love as much as Her..."(この街が好きだ。でも 彼女 [ローリー・バード] ほど愛したものはなかった…)

そしてアートは、ローリーの死と映画「ジェラシー」("Bad Timing")のエンディングの、皮肉な矛盾でこの詩を締めくくる。「ジェラシー」の最後の場面は、アレックス・リンデン役のアートが、50丁目とパーク・アべニューの角のウォルドルフ・アストリア・ホテルから出てきて、ミレーナ・フレハティ役のテレサ・ラッセルを追い越すシーンである。ミレーナののどには、彼女の命を救うために行われた気管切開手術の傷跡がある。映画では、彼女は薬物とアルコールを過剰服用して自殺を図ったが、病院の緊急救命室で一命を取りとめた。

現実の人生では、物事はそんなにいつも幸運な結果で終わるわけではない。


備考
 

アートが、場所と時間を一緒に提示することによってこの詩に4次元的感覚を与えている方法に注目したい。この方法だと、出来事は空間も時間も伴う。

以下の類似に注目:

"We didn't care what we seemed like, to us we
  were working in Mies' space, contained by the travertine…"
(僕たちがどう見えるかなんて構わなかった。僕らはただ
 石灰石で囲まれたミースの空間で働いているんだった…)
と、
 "I didn't care what I looked like, I was
   listening to You, containing the music."
(僕がどう見えるかなんて構わなかった。僕は
 音楽に包まれたあなたの声 を聴いていた。)
【訳者備考】
この詩の舞台となっている、パーク・アベニューに関しては、A Heart in New York Tour 4 を合わせてご覧下さい。

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